36.ちょっと一休み:「父の願い・私の願い」


36.ちょっと一休み:「父の願い・私の願い」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 私が発達障害や知的障害をもつ子どもたちに願うことは、「自分の好きなものや楽しめるものを持ってもらいたい」ということです。

 造形リトミック研究所が月ごとにテーマを定め、描くことや作ることを通していろいろな世界に触れられるようなプログラムを設けているのはそのためです。楽しめるものがあれば、自ら学びます。

 目で、耳で、手で、また五感を働かせて、自ら探求していきます。学習は、教科という限られたものばかりではありません。

 無理なく学習を積み上げてきた教室の生徒さんは、大概に勉強家であり研究熱心です。動物が好きだったり、鉄道が好きだったり、鉱物が好きだったり、旅行が好きだったり、ダンスが好きだったり、アニメが好きだったり、温泉が好きだったり、パソコンが好きだったり、携帯電話が好きだったり、恐竜が好きだったり、絵画が好きだったり、牛が好きだったり、教科の学習が好きだったり、昆虫が好きだったり、人が好きだったり・・・・・。

 楽しめることがあれば、生活が充実します。調べたり、練習したり、追求したり、専門雑誌や専門書を買ったり、机に向かったり。1日、1週間、1ヶ月、1年を計画的に生きています。好きなものがあれば、そこから世界が広がったり、人とのコミュニケーションも生まれます。

 時には、「楽しむこと」のためには辛抱することもできるようになるでしょう。小さな辛抱ができれば、もう少し大きな辛抱もできるようになります。また「楽しみ」とは直接関係のないことであっても、辛抱することができるようになります。そういう耐性が身に付くからです。

 チャレンジには混乱や困難がつきものですが、自分の好きなものであればチャレンジしていくこともできるようになります。楽しみながらチャレンジできれば素晴らしいですね。

 ただしあまり無理なハードルは、私は望みません。それこそ、一人ひとりの力というものは違うからです。 
「ちょっとから」を私は大切に考えています。

 ある障害をもつ生徒さんのお姉さんがこんなことを言いました、「弟の人生は、無理してがんばる人生ではないんだから・・・。」これは、甘やかして好きなようにさせておけば良いということではありません。

 ともすると周囲の固定観念や基準に当てはめて、本人の志向とは異なる方向に無理にがんばらせてしまう、という過ちをおかしがちです。

 どうせやるならば「強くなくてはならない」「勝たなくてはならない」「上手くならなくてはならない」「詳しくなくてはならない。」

 目標が先立ちそれを彼らに押し付けてしまうと、彼らの楽しみは台無しになってしまいます。

 教室の生徒さんを見ていると、自分のペースで本当に楽しんでいます。自ずと意思や行動が湧き出してくる、といった感じです。本当の意味での、「楽しむ」という境地でしょうか。

*写真は、多摩テックの大観覧車を下から見上げたところです。すごい構造です。
 これも、テクノロジーの代表です。「感動を与えるテクノロジー」!!
 「楽しむテクノロジー」!!

造形リトミック教育研究所

nan

35.テーマの魅力:「エアコン」


35.テーマの魅力:「エアコン」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 もうひとつの教材、「エアコン」。エアコンは最初、クーラーだけでした。つまり冷房だけ。暖房は、ガスや石油のストーブやヒーターを使っていました。

 私が小学生のころ、家はもちろん、学校や役所や店などにもクーラーさえありませんでした。電車も、昔は扇風機が天井についていました。車にも、クーラーはついていませんでした。今では考えられませんが、真夏の炎天下は窓全開で走っていました。ですから、渋滞でしかも風がないときは、「蒸し風呂」などと呼んでいたことが思い出されます。

 中学生のころ、クーラーのあるところは人気がありました。そのひとつが図書館です。図書館には、よく通いました。夏休みなどは、早くから行って開館を待っていました。

 現在のエアコンは、クーラーとヒーターの両機能を備えている進化した機械です。どんどん薄型、コンパクトになって、価格も下がってきました。テクノロジーの進化は確実に生活を豊かにしています。

 知的障害や発達障害の方には、暑さが寒さより苦手という方も少なくありません。快適な環境での学習は、グンと効果が上がります。

 今月は、この「エアコン」を教材として学んでいます。色、形、メーカー名、デザイン、大きさ、機能、価格・・・いろいろと広がりのある生きた教材です。

 家庭でのエアコンの利用の仕方も、学習テーマのひとつです。

 ・適切な設定温度を知る
 ・風量や風向を調節する
 ・数字や記号での表示で、温度の高低や量の多少、向きを知る
 ・体感としてそれらを感じる
 ・節電の意識を育てる(省エネ)
 ・地球の温暖化という現代の問題に触れる
 ・社会参加の意識と自覚を育てる

 何れも指示されて生活するのではなく、積極的に意識的に生活する糧となります。そこに喜びが生じます。

 教室の生徒さんは、「エアコンがあって当たり前」という世代です。が、エアコンの快適さとは別に、秋のこの時季の自然のさわやかさも味わい感じてもらえればとも思います。

* 写真は、観覧車の動力部分です。「一体どうなっているのかな?」素朴な疑問
 から興味はひろがります。ひとりひとりが自分の世界をみつけ広がっていくこと
 は大きな力になります。

造形リトミック教育研究所

nan

34.テーマの魅力:「携帯電話」


34.テーマの魅力:「携帯電話」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
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*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

今日は「携帯電話」です。

 私が子どものとき、腕時計型の無線機を使っている「スーパージェッター」というアニメがありました。「流星号応答せよ!流星号応答せよ!」と呼ぶと、空飛ぶ乗り物が来ました。

 30年後に、少し形や大きさ機能は違いますが、似たようなものを自分が日常で使えるようになるとは思っていませんでした。サプライズです。

 「携帯電話」は、今では一番身近でなくてはならない道具です。多くの人が、一日中肌身離さず使っています。電車の中でもバスの中でも、座席に並んだほとんどの人が黙々と操作しています。

 私が最初にこの「移動体通信」の機械について知ったのは、学生の時です。近所の知り合いの人から「自動車電話」というものが世の中にあるということを教えてもらいました。まるで大きな重箱のようで、そこに受話器が付いています。とにかく大きくて、重いというイメージでした。そしてとても高額でした。

 その後次第に小型化して携帯電話の形になり、一般に広くしかも短期間に一気に普及しました。その途中に、「ポケットベル」という小型で呼び出し専用のどちらかといえば安値の機械も登場しました。が、今では見かけることはありません。

 人の生活を助ける、社会生活を便利にする、効果的で高速。正確に、情報のやり取りができる、通話だけでなくメールも・・・(適切に使えば)すばらしいテクノロジーツールです。たった約20年の間にここまできた、ということは本当にサプライズです。

 これは、知的障害や発達障害の方にとっても大変重要なツールです。

 前にもお話しましたが、いわゆる知能指数からの常識ではちょっと活用はできないだろうと思われような方も、興味を持って楽しく毎日たくさんの時間携帯電話を操作しています。さまざまな機能を使いこなしてどんどん上達していくのは、ただただ驚くばかりです。

 この点は知的障害や発達障害の方々の指導に携わる者として、とても注目すべき点です。つまり固定観念や既存の評価というのは、昨日までの経験値を中心にした考え方ですので、オリンピックではありませんが、その記録は常に破られます。知能の評価も変わっていかなくてはなりません。

 今日の経済状況も専門家に伺うと100年に一度あるかどうかの状況だそうですが、ある意味でこれも同じかもしれません。いかにこの事態を越えていくか。大切なことはプラス思考で前向きに、先輩たちが歩んだ道の更にその先を目指していくことだと思います。

*写真は、近くで見かけた蝶です。10月でも、まだいます!
 ツマグロヒョウモンチョウだと思います。見事ですね!

造形リトミック教育研究所
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33.テーマの魅力:「洗濯機」


33.テーマの魅力:「洗濯機」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 3つ目のテーマは「洗濯機」です。「洗濯機」と聞いただけで、私の一番古い記憶がよみがえります。

 最初の洗濯機は、おふろ場のそばにおいてありました。ハンドルを回して洗濯物を絞る一層式、手動でした。上から見ている、中で洗濯物が回転してるのがよく見えました。洗濯せっけんを入れさせてもらうのが、とてもうれしかったことを覚えています。

 また、洗濯物の汚れでだんだん洗濯水が黒っぽくなるのを覚えています。私の泥んこ汚れのせいだったのでしょうか?

 その後に2層式で脱水機が付いたり、1層式で脱水までできる全自動が家に来たり。洗濯機プラス乾燥機という2台の時もありました。

 ・・・下宿生活をしてる時に、お風呂屋さんでコインランドリーを利用したこと、大きな洗濯機のおなかの中が見える面白さもつながって思い出されます。
 
 ついでに、洗濯洗剤のCM。指輪が当たるもの、「金・銀・パールプレゼント!」、液体になったもの。最近では主婦が重量挙げのように洗濯物を洗濯竿ごともちあげるシーン。「洗濯機」と関連して、CMの音楽や映像が頭の中を回ります。記憶というのは、面白いものですね。ひとつのことから、いろいろなものが
引き起こされてきます。

 さて、そして今、乾燥までできるドラム式・・・ほんとの全自動式です。干さずにそのまま洗濯機から出して着られる、手間のかからないタイプです。

 洗濯機はその音に特徴があります。洗濯、排水、脱水、乾燥、完了、それぞれにいろんな音があってとても面白いです。

 また、洗濯機のそばには蛇口がありそこからホースがつながっていて、下の方には排水のコースがある。大きな機械が水道と一体化していて、そのさまも何だか面白いです。

 そんなイメージで出来上がったのが今月の洗濯機です。皆さんは洗濯機からどんなことがよみがえってきますか?

*写真は、国立の駅前で見かけたトラッククレーンです。トラック+小型クレー  ン。人間はどんどんいろいろな機械を発明してきました。おもしろ!便利!

造形リトミック教育研究所

32.テーマの魅力:「冷蔵庫」


32.テーマの魅力:「冷蔵庫」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 テーマの魅力、二つ目は「冷蔵庫」です。

 私の「冷蔵庫」の記憶は、小学生の頃からです。まず帰宅すると冷蔵庫を開けるのが、私の習慣でした。夏の暑い日は麦茶を飲んだりサイダーを飲んだり、食べものを探しては空腹を満たしました。今ほどの大きさはなかったと思いますが、子どもにとってはかなり大きなサイズだったと思います。

 家電というのは、とても身近です。生活の利便性と直接結び付き、付き合いの長い機械です。共通の点は、どれもコンセントにつながって私たちの生活と密着して元気で動いてます。 

 小学生の時はどんな冷蔵庫だったかなあ? 中学校の時は?高校の時は?
家のあの辺に置いてあったな・・。 掃除をしたこともあったかな? 故障したこともあったな。その時どうしたかな? どこの店で買ったかな? 電器屋さんで注文したかな?デパートに見にいったかな・・・いろいろ思い出します。こんなふうに記憶をたどるのも結構楽しいものです。 

 冷蔵庫も時代とともに変化してどんどん便利になり、どんどん大型化し、新しい機能がどんどん増えました。

 「冷蔵庫」に対する私のイメージは、大きい、白い、冷蔵・冷凍・野菜の3つの部屋に分かれている、開けると涼しい、ずっしり重たい。家の中の小さなコンビニ、24時間いつでもおいしい食べ物が中に入っている(*ただし事前にお買い物しておかないと何もありません)。私は「テレビ」も好きですが、「冷蔵庫」も大好きです。

 そんなイメージで出来上がったのが、今月の「冷蔵庫」です。皆さんも冷蔵庫への思いをこめて、冷蔵庫を描いてくださいね。

*写真は、先日小田原駅前でみかけた小型パワーショベル+超小型ブルドーザー?
 前に小さなブレード(腕)のついた小型パワーショベルです。工夫!改良!

 造形リトミック教育研究所

31.テーマの魅力:「テレビ」


31.テーマの魅力:「テレビ」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 きょうは今月の「テーマ」のひとつ、私にとっての「テレビ」の魅力についてお話しします。
 
 私が生まれたのは、世の中にテレビが出始めたころです。そのころは限られた家にしかなかったテレビも、数年後には東京オリンピックがあり、一般家庭にテレビが入りました。初めは、もちろん白黒テレビでした。

 リモコンなど考えられず、チャンネルは回転式でガチャッガチャッと回して選びました。またボリュームも同じように回転式で、たしか右に回すと大きくなったような記憶があります。

 「大きすぎる!」「もっと離れて見なさい」とよく言われたものです。

 私もアニメが大好きでした。「オオカミ少年ケン」、「鉄腕アトム」、「ジャングル大帝レオ」・・・たくさんの番組が次々と出てきました。

 ある日父親の職場(テレビ局)に付いて行くと、録音スタジオの外の大きなテレビの前は人だかり。それが、「アポロの月着陸のシーン」でした。驚きの声が周りから上がっていました。「本当にこれは月なのかなー?」なんて声も聞えたような気がします。

 その後カラーテレビが出てきました。きれいです!ビックリでした。もう完全にとりこです。

 ただし、わが家のカラーテレビの後ろにはカギがついていました。私があまりテレビを見過ぎるということで、工学部の教授をしていた叔父に父がカギをつけるように頼み込んだのです。「おじさんはすごい」けど「困ったな」などというなつかし思い出があります。

 ひと言で言えば、「テレビ」に対する私のイメージは、「宇宙から人の体内」まで、また「巨大なものから目に見えないほど小さなもの」まで、「昔のものから未来のもの」まで・・・といったようにあらゆる世界を目の前にリアルに映し出してくれるもの、といった感じです。

 こんなイメージや思い出を、歌唱造形(絵かき歌)「テレビ」の曲にこめました。たくさんの人に楽しんでいただけるとうれしいです。また、一人ひとりのイメージや思いがこの「テーマ」に重なって、楽しく長く記憶に残るような「テーマ」になってくれることを願っています。

*写真は、今年2月に「テーマ」とした「遊園地の乗り物」、「観覧車」の基礎です。
 大きな基礎とボルトでしっかり固定してありました。基礎は大切ですね!

造形リトミック教育研究所
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30.今月のねらい


30.今月のねらい

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 教室の親御さんへの年度末のアンケートから、各ご家庭で親御さんが現在抱えていらっしゃる問題や課題を知ることができました(ご協力ありがとうございました)。その親御さんからのご希望になるべくお応えできるように、毎月新たなチャレンジとしてテーマを設定しています。

 10月のテーマは「身近なテクノロジー」、その中でも「家庭の中のテクノロジー=家電」です。今月は「家電と家具の区別がつかない」というご報告に応えて、テーマに「家電」を選びました。

 アプローチとしての着目は、両者の違い。(例外はありますが)電気で動いているものか、否か。即ち、コンセントにつながっているか、否かです。従って、今回はコンセントの付いている家電を中心に素材を用意しました。

 造形リトミックでは、楽しみながら描くことで、まず興味を持たせるところから始めます。造形リトミック・メソードの中の歌唱造形(無限に変わる絵かき歌)、これは1960年代に父の代に発表し、それ以降、親子で40数年にわたって作り続けてきましたので、すでに500曲を超え1,000曲に向かっています。

 今月はその中から、「テレビ、冷蔵庫、洗濯機、クーラー、携帯電話・・・・」を。携帯電話はちょっと家電とは異なるかもしれませんが、やはりコンセントに差し込むものということで、「携帯電話」も加えました。

 また、「家電」とは別ですが、秋ということで「お月見」「秋の七草」などを新しく発表しました。「家電」のように、形態を学び、用途や技術を学ぶテーマもあれば、このように季節やその行事、慣習に触れ季節を楽しむといったテーマもあります。いずれにしてもテーマによる学習は、一人ひとりの生活を生き生きと楽しくさせたいという気持ちから始めました。

 なお、「カタカナの書字の歌」が前月の書字シリーズの一環として加わっています。

 私たちは、歌という身近なものを活用して、楽しく、やさしく、ちょっとから、だれもができるということを願っております。父の願いは、「10000人に一人の天才のためでなく、残りの9999人を落とさないメソード」でした。なかなか高いハードルですが、この目標に限りなくアプローチしてきたいと思っています。

* 写真はたまたま見つけた雲です。何に見えるでしょうか? 感じ方は様々だと
  思います。私は、「ブダイ」「ドラゴンの頭」「新幹線の先頭」・・です。
 「ちょっとから楽しむ!」ことで、個性と可能性を広げることが願いです。

造形リトミック教育研究所
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29.「メソッドって? 流派?」(つづき)


29.「メソッドって? 流派?」(つづき)

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

(つづき)
 父が創作した造形リトミックの「歌唱造形」は、無限に変化する絵描き歌です。従来の絵かき歌の逆を行くアプローチです。はじめはだれが描いても同じ形態のものが出来上がる基礎描画からスタートしても、そこから一人ひとりが好きな形態や様式で描けるようにしたいという願いが込められています。

 またそれまでの絵かき歌はリズムにのって描いていったり、俳句や短歌のような語調に合わせて描いていくものが多かったようですが、「歌唱造形」ではいわゆる「歌」を、しかも世界の旋律を「歌」にしています。

 父は敗戦で、満州から両親と三人で引き揚げてきました。16歳のときでした。
祖父が築いた財産、土地、家、その他の資産のすべてを失い、空襲で焼け野原となった東京に渡ってきました。そんな父の願いは世界平和でしたので、世界の音楽を
取り入れたのです。一つ一つの曲は魂と祈りの込められたメッセージです。

 またさらに父の息子として感心するところは、作詞作曲には著作権がありますが、一般的な絵には権利がなかったので、絵を描かれた方に作詞の権利を差し上げる形をとっていたことです。多くの絵描きの方が関わっていましたが、厳しい世界ですので名前は存じ上げていない方がほとんどでした。

 さて私たちは、その後を引き継ぎ、
・知的なハンディキャップを持つ方
・発達にハンディキャップを持つ方
・さまざまな病気で運動や記憶などにハンディキャップを持つかた
・不器用だったり緊張が高かったりして、失敗経験が多く苦手意識のある方

・・・このような方たちの教育や、脳の活性化や機能訓練として役立てるように改良を加えてきています。ある意味遊びから療育法へと、総合的で、楽しく、簡単で、誰にでもすぐできる内容を目指しています。

 また、その時その時のトレンドや発見なども考慮して新しいテーマをどんどん増やしています。ご期待下さい。ないものは作りますので、リクエストください。

 「メソード」として一番大切なことは、その担い手が自らそのメソードを体験し、本当に社会に役立つものだと確信してほれ込んで打ち込むことです。気の進まない「メソード」をやってみても効果は半減です。

 造形リトミック研究所では、日本の「伝統絵かき歌」の先輩方から学び、父の「歌唱造形」の新しい理論を引き継ぎ、「メソード」をさらに磨いている最中です。生徒さん方からのリクエストや「楽しい!」「○○だ、うれしい!」といった声が、この営みにいっそう拍車をかけ充実させてくれます。

*写真は、神奈川県南足柄市大雄町にある、曹洞宗 大雄山最乗寺の350段を超え る階段です。人里はなれた山中にあります。広大な修行の場で静寂な空間です。
 約600年前に最上段が完成しました。この景観です!!

*伊豆箱根鉄道大雄山線は、ローカル線で無人駅が多い線です。すいています。
 のびのび周りをあまり気にしないで乗れます。お勧めです!

造形リトミック教育研究所

28.「メソッドって? 流派?」


28.「メソッドって? 流派?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 メソッド【method】 広辞苑には、「方法。方式。メトーデ」とあります。

「○○メソッド」に対する私のイメージは、ある創始者いてさまざまな試行錯誤の末に勝ち取った方法、または偶然に出会った方法、というような感じがします。メソッドとは、簡単に言えばある意味ひとつの流派であるといつも考えています。

 造形リトミックは、創始者の玉野良雄が偶然出会った「伝承遊びの絵かきうた」に端を発しております。たった1分たらずの歌で、だれにでもひとつの絵が描けてしまうという遊びです。玉野良雄は、この遊びの中にある科学と可能性に着目しました。そしてさらにこの遊びの先を開拓していこうと、夫妻で数多くの創作絵描き歌を世に出していきました。今私たちが、さらにその先を目指しています。

 いろいろな研究や発明のほとんどは、さきがけを担った先輩たちの思いや成果が基礎になっています。そのあとを引き継ぎ、進めるのが後輩の役割だと私は考えています。

 絵かき歌は非常に面白いのですが、最初にだれが作ったのかわかりません。また、なぜ作ったのか、どうやって作ったのかは、想像するしかありません。子ども達を前に「鼻かいて、目ーかいて、口かいて・・・お顔ができた!」と口ずさみながら描いていたのが、いつの間にか歌になったのでしょうか?そしてそこにだんだん滑稽な歌詞が面白おかしく歌われるようになったのでしょうか?

 しかし何れにしても結果的に長く伝承されていることは、やはりそれに足る価値が絵かき歌にはあるからです。

 最初に絵かき歌が作られた時を想像してみましょう。作られた先輩は、きっと誰かに教えたくなったのではないかと思います。そしてその時、感動やサプライズ(驚き)、楽しみを満喫したのではないかと思います。

 また私の想像では、最初の先輩はおそらく続けていくつか作ったのではないかと思います。一般に人は、自分がほれ込んで作ったものが何かの形で役に立つのであれば、伝えたいと思うものだからです。そして、さらにもっともっと作りたくなるものです。

 明日は、造形リトミックの歌唱造形(絵描き歌)の発祥を振り返ってみたいと思います。

*写真は、神奈川県南足柄市大雄町にある、曹洞宗 大雄山最乗寺の350段を超え る階段です。人里はなれた山中にあります。広大な修行の場で静寂な空間です。
 約600年前に一段から上を目指して工事は始まっつたと感じました。

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27.ちょっと一休み:「アプローチ」という言葉


27.ちょっと一休み:「アプローチ」という言葉

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
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*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 よくアプローチという言葉を聞きます。広辞苑には、以下のようにありました。
 
アプローチ【approach】
 接近すること。働きかけること。「希望する会社に―する」
 学問・研究で、対象への接近のしかた。研究法。「自然科学的―」
 門から玄関までの間。また、その通路。
 陸上競技・スキーのジャンプの助走。スタートから踏切までの間。助走路。
 ゴルフで、グリーンに近い地点から打つ打ち方。アプローチ‐ショット。

 私はその言葉に、「いろいろな方法である目標に近づく」といったような感じを持ちます。

 時に目標に向かって立ち止まって方法を思案するときに、私はいつも○×の二進法的な考え方だけでなく「△」を心して考えるようにしています。ずば抜けた方法とか、ダントツな方法いうのはなかなか難しいので、少しずつ近づくという意味でこの「△」を大切にしています。

 いろいろな課題や問題を解決していく方法はひとつではなく、複数あります。
療育においても、その中で今その子どもに最も適した方法はどれかと考えてひとつを選択していくわけです。

 ある方法を選ぶということは、別な見方をすればそのほかの方法を(とりあえず)選ばないということです。そこには、あるひとつ方法を選んだプラスと他の方法を選ばなかったマイナスというものが常にあります。

 いつも「100点や100%をねらう」というような固い考え方でなく、まず気持ちをゆったりともちましょう。そして多少遠回りになっても、とりあえず今一番良いと思われる方法を選ぶというゆとりが大切です。

 また補助線志向もそのような考え方のひとつです。本当はまっすぐ進みたいが、道がないので一度右に折れてそれから左に折れて目指すべき道に進む、という考え方です。直線距離と道のりのような関係です。鳥なら、まっすぐ飛んでいけますが、人やワンちゃんは道に沿って目的地をめざします。

 たとえば富士登山を考えてみましょう。体力に自信があれば、一合目から徒歩で登っていくのもいいでしょう。多少不安であれば、五合目まで車で行ってそこから徒歩で登っていく方法もあるでしょう。もしかすると、頂上に立つことが目的であればヘリコプターという選択肢もあるのかもしれません。

 約二十年ぐらい前に、大学院の仲間数人で富士登山をしました。その中に台湾からの留学生で非常に行動的で何でも良くできる女性がいました。ただ足が悪かったので、松葉杖をいつも使っていました。ふだんは侍のように背中に松葉杖をかついで三輪のバイクに乗り、歩いている私たちを横目にあっという間に風のように通り過ぎて行ったものです。

 さてこのようなメンバーで、どのようにして富士登山という課題を乗り越えるか。この時は頼りになるダントツ頭も体格もよく、その上行動力もある兄貴分のような友達がいましたので、彼がいつもその場その場で一番合ったアプローチを考えてくれました。

 私たちはとりあえず行けるところまで行こう、という考えで登り始めたのです。途中から彼が彼女を負ぶったり、馬を使ったりしてどうにか七合目まで登ったことを昨日のようによく覚えています。
 
 たとえ頂上につけなくても非常に大きな満足となりました。頂上にたどり着けなかったということでは、結果としては「△」だったのかもしれません。しかし、そのことが大きなプラスになるというケースはたくさんあります。私達としてはそのプロセスはとても楽しく、今でも鮮明な思い出となっているのです。

・・・実はこの彼は常に私のお手本でもありました。ドーマン法というアウトサイドのメソードにほれ込んで一時アメリカの本部のスタッフとして勉強していました。帰国後は落馬した競馬の騎手の意識の回復に彼の仲間と二人で立ち向かい、
かなり奇跡的なところまで回復させたのです。どの医療機関からも回復不能と言われていたケースでした。

 回復に至るまでには計り知れない苦労と努力があったことでしょう。でも同じアプローチでも心底ほれこんで信じて実行するアプローチは、たとえ遠回りでも大きなすばらしい力を持っていますね・・・。

*絵は「大地・山・空・太陽・雲」という絵描き歌です。造形リトミック教育研究所のオリジナルです。「絵描き歌」は最初に誰が考えついたか、どんな思いでつくったか は想像するしかありませんが、未知の可能性を秘めている世界です。たった1分 たらずで、ほとんどだれでも楽しく描けるというのはすばらしいアプローチですね!!

造形リトミック教育研究所
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