335.ソーシャルスキル:ぼくが1番!

335.ソーシャルスキル:ぼくが1番!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 「何でも自分が1番でなくては気がすまない!」ということで親御さんが困っているケースが時々あります。

 まず、「順番に並んで待つ」ということを教えてあげなくてはいけない段階があります。初めて経験する順番は、どんな場面ででしょう。公園でブランコの順番を待つ、滑り台の順番を待つ、といったあたりでしょうか。誰でも最初は順番があるということを知らずに、目の前のブランコや滑り台に一目散で駆け寄っていきます。そこで親に引き止められ、「順番よ」「順番ね」と促されて、みんなが順番に待っていることに気がつきます。そうやって、「順番を待つ」という社会的行動を身につけていきます。

 それがだんだん、お店でレジの順番を待つ、電車を順番に並んで待つ、遊園地で長蛇の列に並んで待つ、というふうにいろいろな場面に広がっていきます。

 しかし、このように教えればすむことであればことは簡単でしょう。問題行動とはなりません。では、教えてもすまない場合とは?。

 ひとつは、器質的に「イライラする」「じっとしていられない」という場合です。また「待つ」という時間的行為が理解できない場合もあります。器質的に、あるいは発達段階的に難しいのであれば、いくら教えても「順番を待つ」ことはすぐには実行できないでしょう。

 よく親御さんも言われます、「絵カードで教えているときは、理解できていても、実際の場になるとダメなんです」。そうなんです、「分かっているけど、できない」ということです。

 この場合は、スモールステップで段階的にトレーニングしていきましょう。
・1~2人、または2~3人待てばよい段階から始めましょう。いきなり、5人も6人も並んでいるような場面は避けることです。そこでイライラさせてしまうと「順番・待つ=イライラ」という関連を強化してしまうだけで逆効果です。

・お店もなるべく込まない時間帯を選んで連れて行きましょう。

・「待てば、自分の順番がくるんだ」という時間的行為を意識的に体験させましょう。「順番」「順番に待とうね」「次だね」「さあ、○○ちゃんの番だね」というように。

・順番を待てたら、ほめてあげましょう。

 もうひとつは、気持ちが満たされていない場合です(つづく)。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

334.ソーシャルスキル:見きわめを

334.ソーシャルスキル:見きわめを
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 「ソーシャルスキル」という言葉やそのような分野が既にオーソドックスになってきています。不適切な言動を単に問題行動として否定的に捉えるだけでなく、「分からないこと」「知らないこと」は教えてあげようという取り組みに変わってきたことは評価すべきことだと言えるでしょう。

 しかしここで見きわめなくてはいけないのは、「分からなかった」からまたは「知らなかった」から不適切な行動をとってしまったのか、それとも「分かっていた」「知っていた」けど不適切な行動をとってしまったか、ということです。

 一月ほど前でしょうか、「万引き」について、警察と学校とが協力して生徒の指導に当たるという、記事を新聞で見かけました。異例のことだそうです。万引きの指導とソーシャルスキルの指導とがイコールかどうかは別として、本質的には同じ問題を擁しています。

 「万引き」が悪いことだということを知らない生徒は、まずいないでしょう。しかし、それほど悪いとは思っていない生徒はいる可能性があります。悪ふざけ、ゲーム感覚で、○○もやってるよ、くらいの軽い気持ちでいる生徒。そういうケースでは、「万引き」は犯罪であり、被害者である店は倒産に追い込まれるほどの深刻な問題であることをしっかりと教えるべきでしょう。

 問題なのは、「万引き」が悪いことだと重々知りながらも、犯してしまうケースです。そういうケースでは、「万引きは犯罪です!」とテキストとしていくら指導しても意味がありません。なぜならば、「万引き」は悪いことだからこそ「万引き」をするのですから。

 後者においては、「万引き」いう行動を引き起こす背景にある心理状況や、生活状況を教育の立場から見直し、そこに目をやり、気持ちをかけ、具体的な対応をしなくてはなりません。

 屈折した心理、満たされない心理、自己受容できない状況、自信の喪失、不安定な生活、ゆとりのない生活、受容されていない状況、ストレス、孤独・・・。そこに気づき、そこに援助の手を差し伸べない限り、問は解決しないでしょう。

 ソーシャルスキルについても同様です。単に教えれば解決する問題と、そうではない問題とがあります。その見わめが大切なのです(つづく)。

 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

333.厚い参考書

333.厚い参考書
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 「物知り」のつづき、学究肌の生徒さんのひとりです。
 ちょうど先週の授業のときのこと。担当講師の都合で、いつものパソコンの授業はなしで勉強だけとなりました。当日になりましたが、その旨を予め生徒さんにFAXでお知らせしておきました、
 「今日はパソコンの授業ありません。ですから、パソコンは置いてきてください。勉強だけ行います。急なお知らせですみませんが、よろしくお願いします」。いつもノートパソコンを、時にはプリンターまで持ってくるのです。

 その日教室で待つていると、急なお知らせにも躊躇なく対応し、パソコンは持たずに来ました。しかし、重そうな鞄です。中から自信たっぷりに取り出したのは、参考書や問題集です。FAXに「勉強だけ」とあったので、今日こそとばかりに持ってきたのでしょう。

・小2用の計算ドリル:全部やり終えてあります。筆算は繰り上がりや繰り下がりを行った鉛筆の形跡があります。横式の計算は電卓を使ったとのこと。

・漢字検定10級の問題集:途中まで書き込んであります。

・中学社会実力アップ:これは分厚い参考書です。地理・歴史・公民の分野別にかなり詳しくまとめられています。一番の興味はこの中の歴史だそうです。どこを勉強したいのかと尋ねると、「昭和」とのこと。「おばあちゃんが大正生まれで、ぼくが昭和生まれなんです」、昭和を選んだ理由はそこにあるようです。独特の切り口ですが、自分の生まれた「昭和」について知りたいというのは肯けることです。学ぶ動機付けの原点が自分にあるというのは、大したものです。

 これらの問題集や参考書は親御さんが用意されたものではなく、自分で本屋さんで見つけて購入したものです。こちらが指定したものでもありません。自分の今の学力もよく心得ています。学年へのこだわりもありません。

 そして、興味のあるところを満たしてくれる参考書がどれであるかもよくわかっています。きっと真剣な顔つきで、書店にずらっと並んでいる本の中から選んできたのでしょう。これほどの意欲はどこから生み出されるのかと、感心します。

 こちらも、この努力と向学心に十分に応えていかなくてはなりません。まずは、日本の歴史の縦軸として、縄文・弥生時代から大正・昭和・平成と時代の並びを示し、昭和がどこに位置するのかを理解出来た上で、横軸として昭和を取り上げようかと考えています。学習の進め方も、最初はこのくらい大雑把です。舵取りをしながらも生徒さんの反応で行方は定まっていきます。さあ、楽しみです。
 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

332.物知りになりたい

332.物知りになりたい
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 少し前のことですが、生徒さんの中の一人の女の子が七夕の短冊にこう書きました、「物知りになりたい」。「ふーん、そうなの・・・!」と、少し異なる一面を見たような思いがしました。

 勉強熱心で、勉強好きの生徒さんですが、短冊に一番に書くほどとは思っていませんでした。でも改めて、「うーん、そうなのね!」と思い直し、これからの学習にこちらも気持ちを新たにしたのを覚えています。しかも、「物知り」という表現がいいですね!

 今朝の教室ブログの「鳥かこまれる?!」もとっても面白かったですね。講師が3つの観点にまとめていました、

・知りたいという気持ちを持つこと
・質問しようという気持ちになること
・理解の喜びを感じること

 「知りたい」とか「興味を持つ」ということは、気持ちが外に向いている証拠です。新しいものを求めている証拠でもあります。気持ちが安定していてこそ可能です。

 質問しようとすること、相手への安心感や信頼があってこそ可能なことです。講師とも学習のいい関係が作られているのでしょう。教室に限らず、ご家庭でも学校でも安心して聞ける環境があるのでしょう。これは、人との信頼関係にもつながります。学習的な質問だけでなく、何かあったときに聞ける環境、聞こう、話そうという気持ちになれることは、将来的にもとても有用なことです。

 理解の喜びを感じること、つまり「分かる」喜びや「知る」喜びを心得た生徒さんには、「学習力」がますます育ちます。さらに「知りたい」・「質問する」「調べる」・「分かった」「満足」「うれしい!」「面白い!」→「知りたい」・・・
といういい循環が生まれ、ますます「学習力」が高まります。そしてそれが、豊かさへとつながっていきます。対象(もの)への豊かさ、人との豊かさ、生き方の豊かさ・・・。

 時々この場でもお話しする「新しい生活のための勉強」がしたい生徒さん、先ほどの「物知りになりたい」生徒さん、新しい課題(「天気」「気温」「月」「お金」・・・)にどんどん取り組む生徒さん、どうにか答えようと知恵と言葉の限りを尽くす生徒さん・・・こう眺めてみると、学究肌の生徒さんが少なくありません。

 学習に追われるのではなく、楽しみながら味わいながら学習をしていくと、意図しなくとも「学習好き」に成長していくようです。それが、それぞれの豊かな生活に結びつけば、何よりですね。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

331.生活の学習

331.生活の学習
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 きのうの「安心して学習を」のつづきです。それは日常の数の学習でありながら、生活の学習としての意味もあります。

 衣類の整理整頓、洗濯、クリーニング、清潔、というような課題に積極的に関心を持ち、すすんで行動できるようになれば・・・という思いももって学習の課題としています。

 と言っても、「脱いだもの、ちゃんと片付けてる?」「いつもきれいなもの着てる?」「自分のものは、自分で洗濯しようね」と規範的なことを言うのではありません。「クリーニングやさんか、・・・お母さんが出してるよ」「お父さんの、ワイシャツ。ズボンもね」、とまずは関心を持ってくれればいいのです。

 そして、少しお家での様子を聞きます。そして、必要あれば少し関心を持って関わることができるように、生徒さん自身、または親御さんに提案します。

・自分専用のハンガーを用意する
・ことに女の子だったら、マスコットを下げるなどハンガーに工夫をする
・クリーニングを出す、受け取る、のお手伝いをする
・クリーニングの預かり票をテープで貼っておいて、受け取りに行く日をチェックする係りを担当する
・家庭内での洗濯に関心を向けてもいいですね。
 ※たたむことより、洗濯機の操作のほうが関心を持たせやすいでしょう。

 このように、あらゆる機会を利用して、生き生きと積極的に生活に取り組むきっかけ作りを心がけていきます。そのきっかけ作りは生徒さん一人ひとり異なります。しかし、誰に何をと取り立てて考えるのではありません。生徒さんとお話をしたり、親御さんから家庭や学校でのようすを伺うことによって自ずと浮かんでくるのです。

 多くの生徒さんにとって、算数も国語も学習のほとんど全ては生活のためのものです。ですから、生徒さんが生きる上でその学習がどのような意味を持っているかを意識して学習を進めることはとても大切です。必ずしも「役に立つ」「必要だから」ということが目的でなくてもいいのです。「楽しいから」「好きだから」だけでもいいのです。ただ、教科書を追うだけの学習にはならないようにしていきましょう。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

nan

330.安心して学習を

330.安心して学習を
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 算数の学習、お金の学習、半額の学習、生活の学習を兼ねて、クリーニング店の半額セールチラシを使いました。チラシに、定価と特価が分かりやすく表示されていますから、まさに一目瞭然です。「半額だといくら?」と問われても、最初から答が出ているようなものです。生徒さんも安心して学習に取り組めます。

 一応、割り算の式を立てて計算機で半額の値段を求める。計算した答とチラシの特価を見比べて、同額になっていることを確認する。当たり前でも、「おんなじだ!合ってた!」というときはうれしいものです。

 安心して学習できることは何より大事です。安心していれば、
・落ち着いて取り組めます
・イライラしないで取り組めます
・楽しんで取り組めます
・何より頭がよく働きます
・次の意欲へとつながります

 しかもちらしは、少しでも多くのお客さんを集めようと、その内容やデザインに力を結集していますから、
・パッと見て、気持ちが引かれる
・雰囲気が伝わる(クリーニングなら清潔感!)
・目的・主張がすぐ分かる(たとえば、半額!)
・内容が分かりやすい(金額の比較)
・言葉が明確(単語または単文表現)

 この問題、文章題だと「洋服をクリーニングに出します。クリーニング店は今ちょうど半額セールです。上着のクリーニング料金の定価は380円です。半額だといくらになるでしょう?」となりますが、文章題を見ただけで頭のスイッチを切りそうになる生徒さんも時にはいます。

「洋服をクリーニング屋さんに出すよ」・・・上着、ズボン、スカート、セーター、コートなどの文字が立て一列に並んでいるのが目に入って、洋服のイメージがわきます。
「今、半額よ」・・・「半額」の大きな文字が赤字に白抜きであるのを示します。
「上着、定価は380円」・・・明確に表示されているので、見れば納得です。
「半額だと?」と言いながら特価の表示を指で示します・・・定価、特価、半額、の仕組みが何となく分かってきます。

 そして、割り算の式の中に数字を当てはめさせます。割り算をしながら割り算の意味を把握させていくのです。

 文章題を読ませて「じゃあ、何算?」と尋ねても、なかなか分かるものではありません。安心した状況で、効果的な教材(時にチラシ)を使って学習に向かう気持ちを引き出し、自ずと考える(頭を使う)ように働きかけます。

 楽しみながら、分かるように働きかけます。逆に言えば、分かるから楽しいのです。先生が面白いことを言うから、楽しいのではありません。

 小学校の5年生で教室に入られた生徒さんがいらっしゃいます。絵画や工作のときは生き生きとしていても、いざ算数となると・・・、わざとではなく本当に眠ってしまうのだそうです。これは、「わがまま」で片付けられる問題ではありません。分からないことを「がんばりなさい。がんばりばさい」で押されてきてしまうと、体が防御し、拒否してしまうのです。

 でもあきらめないで、楽しみながら、少しずつ、もう一度学習していきましょう。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

329.言葉を紡ぐ

329.言葉を紡ぐ
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 日常の面白い言葉にまた出会いました。今度は生徒さんから出てきた言葉です。
「ポワン、ポワン、フワ、フワ」

「クラゲがたくさんいた!」
「そう、クラゲはなに色?」
「クラゲは、とうめい!」

「クラゲは、どんな感じだった?」
「ポワン、ポワン、フワ、フワ」
「そう、ポワン、ポワン、フワ、フワ、・・・なるほど、ね」

「ポワン、ポワン、フワ、フワ」は、水族館で見たクラゲの形容です。自分から紡ぎだした言葉、楽しいですね。こんな言葉を紡ぎだす土壌は、どのように育てられたのでしょうか。

 ひとつは、小さいときから絵本を通してたくさんの言葉に触れたきたことにあるのかもしれません。教室の月ごとのテーマに即して、親御さんはよくご自宅にある絵本を持ってきてくださいました。絵を描くことに加え、絵本を通して言葉の世界を広げてきました。ご本人も兄弟も大きくなって要らなくなった本は教室に下さるほど、ご家庭にはたくさんの本の環境があるのでしょう。
 

 もう一つは、何につけても無理なく楽しく取り組んできたことにあるかもしれません。学校の授業や行事にも、地域の生活にも、もちろんご家庭での生活にも。教室でも、絵を描くことも工作をすることも、国語の勉強も算数の勉強も、どれも区別なく楽しんでしまうようなところがあります。これも、才能ですね!

 仕事に就きながらも、毎日(月~金)の日記と決めた6枚のワークは必ずやってきます。でも時に、宿題の計算問題にまるをつけてあげようとすると、「計算機でやっちゃった・・・ふふふ」と笑っています。こちらも「えーっ、あらーっ」と言いながらも、「でも、宿題できたね」と大きなまるをあげます。お陰で、3桁でも4桁でも数の読みは得意です。計算機の操作もとても早いのです。思えば私たちだって、暗算で出来るもの意外は、計算機を使っています。携帯電話にも、計算機はついているのですから。

 無理なく、楽しく、でもやるべきことはきちんと行い、本や、さまざまな場での人との交わりをもって豊かに生活していく、そんなところから言葉は紡ぎだされてくるのかもしれませんね。

 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

328.Aちゃんのスケッチブック

328.Aちゃんのスケッチブック
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 教室の大切な生徒さんのひとり、Aちゃん(小学4年生)が急性脳症で天に召されました。突然の訃報に、私たちも言葉を失いました。なんとも、悲しいことです。講師が、お母さまと電話で少しお話しさせていただきましたが、、涙声の中からいくつかの言葉が聞き取れるだけでした、とのことです。ご両親のお悲しみはいかばかりかと、悲しみをあらたにします。

 そんな中でも、「(教室に置いてある)Aのスケッチブックをいただきに伺います」とお母さまはおっしゃっておられたそうです。教室で毎月、その月におけいこした絵を描きとめていっているスケッチブックです。7月6日の教室ブログは、ちょうどAちゃんのこんなお話でした・・・、

「教室では、月末にその月のテーマの絵をスケッチブックに描いて残しています。ひと月取り組んだテーマの仕上げです。Aちゃんはこのスケッチブックを出すと、1枚1枚めくりながら熱心に見ます。私が”おしまいね”と言って閉じると、
やっと手を離してくれるくらいです。その描きためたスケッチブックもいっぱいになって、家に持って帰りました。

 家ではお母さんと一緒に見て、普段はAちゃんの手の届かないところに隠しておくそうです。が、ある時、置き場所に気がついたAちゃんは、その前から動かなかったそうです。自分の描いたスケッチブックを見るのが大好きなAちゃん、きっといろんなことを思ったり感じたりしながらページをめくっているんでしょうね」(F講師)

 Aちゃんがそんなに楽しんでいてくれたスケッチブック、親御さんもそれを隠しておくほど大切にしてくださっていたスケッチブック。一緒にスケッチブックをながめるひと時は、どんなにか幸せな時だったことでしょう。

 親御さんがかつてこうもおっしゃっていました、「先生にお会いするととてもうれしそうな顔をするので、授業が楽しいのだと思っています。・・・授業で造ったのがわかるのか、毎月のカレンダーを部屋に貼ってあげるとよく見ています」。お子さんの小さな表情や行動を感じとられて、本当によくお子さんの気持ちをくみ取っていらっしゃいます。まなざしのやさしさを感じます。

 ご両親のこれほどの深い愛情に包まれて育たれたAちゃん。愛されること、何より幸福なことですね・・・。今はただ、ご家族へのお慰めとAちゃんの安らかなることを心よりお祈りしています。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

327.国語の教科書(つづき)

327.国語の教科書(つづき)
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 国語の教科書を毎日読むことのおすすめ。その目的は、
1)学校で勉強している箇所の内容を知ること
2)書き言葉の流れに慣れること

 今日はその3つめ、
3)新しい語彙に触れていくこと、新しい世界に出会うこと、新しいことを知ること

 教科書では詩や物語や説明文、表現や発表などを通して、いろいろなジャンルの言葉に触れていくことができます。

 特に物語では、舞台が都会であったり、農村、漁村、山村であったり、また外国であったり。時代的にも現代であったり、民話の世界であったり、少し前の時代の話であったり。場面も学校であったり、家庭であったり、地域であったり、また戦争中のことであったり。それぞれの舞台、それぞれの時代、それぞれの場面での言葉があります。

 もちろん分からない言葉もあるでしょう。でも雰囲気や情景を感じることは出来るでしょう。挿絵を見て、何となくでもいいのです。親御さんがお子さんの理解できる言葉でやさしく説明してあげてもいいですね。でも、説明しすぎないことです。たとえ分からなくても、触れるだけでいいのですから。それでも、少しずつ新しい語彙や、その語の意味するものがお子さんの中には蓄積されていきます。

 しかも、新しいものに触れていくこと自体が、脳への刺激にもなっています。新しい語彙に触れていくことによって、言葉に対する反応や言葉を情報として得る力や、感じ取る力が敏感になっていくことでしょう。

 また説明文では、大人でも感動をもってはじめて知るようなことに出会います。
 たとえば、小2の教科書の「たんぽぽのちえ」。
 「・・・花がしぼむと、たんぽぽの花のじくは、ぐったりとじめんにたおれてしまいます。けれども、かれてしまったのではありません。花とじくを休ませて、たねにたくさんのえいようをおくっているのです。・・・たねがふとり、わた毛ができると、たんぽぽはたおれていたじくをぐうっとおこし、せいいっぱいせいをたかくして、よく晴れて風のある日にはわた毛のらっかさんをとおくまでとばすのです・・・」(要約「たんぽぽのちえ」)

 たんぽぽのちえをお子さんと一緒に味わえたらすばらしいですね。その時季に、道で見かけるたんぽぽに対する思いも変わってくることでしょう。

 教科書では続いて、「サンゴの海の生きものたち」というまたすばらしい説明文が上巻のさいごにあります。詳しくは割愛しますが、「イソギンチャク」「クマノミ」「ホンソメワケベラ」、教科書にもすばらしい写真がありますし、図鑑の索引から調べても学習が広がります。水族館までいけば、最高ですね。

 
造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

326.国語の教科書を読みましょう

326.国語の教科書を読みましょう
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 学校の授業に合わせた学習をしていくことを希望されるのでしたら、国語の教科書を毎日読むことをおすすめします。それは、少なくとも学校で何を学習しているかをお子さんが知るためです。

 物語だったら、題名と登場人物を知っておけば、授業中に耳に入ってくる言葉も増えるでしょう。説明文についても、題名と例として書かれていることを知っておけば、これもまた授業に参加しやすくなるでしょう。

 月の初めには学校から学習の予定表が配られると思いますので、一足すすめて前もって読んでおかれれば効果的ですね。つまり、予習型です。

 教科書を読むことをおすすめする理由は他にもあります。
 ひとつは、書き言葉の流れに耳を馴染ませることです。話し言葉を獲得するのに誰しも文法の学習から始めたのではないように、書き言葉においても、教科書を見日読むことによって、言葉の流れを体得するような感覚で読み慣れ、聞きなれていきましょう。

 国語のワークに接続詞を問う問題が時々あります。「だから」なのか「しかし」なのか。ひとつのフレーズとして
流れを体得できるようになってくると、それを順説か逆説かを文法的に考えるようなやり方ではなく、感覚的に二つの接続詞を使い分けられるようになります。

 私達は言葉の流れと共に、やはり気持ちを動かしているのです。
「雨が降った。だから・・・」まで読むと、穏やかな気持ちで次に続く言葉を予測しています。しかし、
「雨が降った。しかし・・・」となると、いささか不穏な「えっ」という気持ちになります。

 接続詞だけでなく、他の語の流れについても同様です。言葉にそって気持ちを動かし、先を予測しながら読んでいっているのです。予測どおりであったり、予測を裏切られたり。慣れてくれば、その変化を楽しめるようにさえなるのです。書き言葉独特のフレーズの流れを感得、体得していきましょう。(つづく)

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと