345.1個ずつ、1個ずつ

345.1個ずつ、1個ずつ
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 秋から初冬の今、落ち葉拾いやどんぐり集めは、太陽の光を浴び、ピリッとした空気や風の冷たさを感じる格好の楽しみとなります。それと同時に、数の存在を感じ、数感覚を育むとても良い機会ともなります。

 机の上に積み木やミニチュアの果物などを並べて、いきなり「これはいくつ?」と尋ねたり、「~を ○つください」などと指示を出して数の理解をさせようとしても、なかなか数概念を獲得できないことが多いものです。心理テストで数の理解度を測るのならばそれでもよいのですが、数概念を育てるための学習として行うのならば、これは得策ではありません。

 数えることを求めたり、合計数を答えさせようとする前に、1個ずつ、1個ずつというものの操作やものの移動を遊びとしてたくさん行いましょう。カップの中に何かものを全部入れる、入れたらまた全部出す、そしてまた入れる、また出す・・・、ものの増えたり減ったりを自分の操作を通して心いくまで体験させるのです。

 発達テストの中に、カップの中に積み木を10こ入れさせたり、ものを並べて遊ぶようなことがあるかどうかを尋ねたりする項目があります。たいていの幼児は幼児期に、自然に遊びとしてそんなことを行っているからです。そんな遊びを通して、数感覚を獲得していっているのです。

 発達テストことにスクリーニングテストは、まずは被検児が通常の基準どおりに発達しているかを測るものですから、通常の幼児が発達のプロセスでたいてい行うこと自体がテスト項目となっています。言い換えれば、発達テストで問われる課題はたいていの幼児が通過していく課題です。

 ハンディのあるお子さんは、幼児期にまだ手先が器用でなかったり、集中力が十分でなかったり、ものの認知が明確でなかったりするために、このような遊びの時期を通過することなく、いわゆる「数学習」へと突入してしまうことがあります。ですから、いっそう数学習の進みが鈍くなってしまうのです。悪くすると、数ぎらいにさせてしまいます。

 数ぎらいにさせずに、1ステップずつ数の学習を進めていくためには、このたいていの幼児が行う遊びを十分に行うチャンスを作ってあげましょう。尋ねたり指示したりと迫らずに、ものを移動させたりものを並べたりすることを一緒に楽しんであげましょう。このような遊びの中で、数学習にとって不可欠な数感覚が育まれていくのです。

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nan

344.イチョウの葉っぱ

344.イチョウの葉っぱ
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 あすから12月というのに、木々の葉は赤に黄色にとまだまだその美しさを楽しませてくれています。

教室では、イチョウの葉を折り紙で切って、貼り絵をしました。黄色は白い机の上に1枚取り出しても、それだけでまぶしいほどの色ですね。その印象をもって、きのう本もののイチョウを見ると、さらにその色の輝きに驚きました。落ち葉の黄色もまるで雪の世界かのようにまぶしく輝いていました。黄色がこんなにも目から顔面にそして体の中に飛び込んでくるようなインパクトのある色かと、あらためて感じました。

 生徒さんの中にも黄色の好きな方が少なくありません。ある生徒さんは、いろいろな黄色でイチョウを描き、その下の道も全部黄色で塗ったと聞きました。

 秋から冬の一日、お子さんとイチョウの葉っぱを1枚1枚拾って集めてみてはいかがでしょう。1枚拾っては袋に入れ、また1枚拾っては袋に入れる・・・。「1枚ずつ」という体験をしてみましょう。こんなそぼくな動作が、私達の生活環境に
たくさんある「1」ということを感得させてくれます。すべての独立したものには、個数があります。1個であつたり、2個であったり・・・・、それが少しであったり、たくさんであったり、かぞえきれないほどであったり。

 1枚、1枚、1枚、1枚、1枚・・・、1枚がたくさん集まって、「たくさん」になる。数概念より以前の数感覚は、幼児のような遊びの経験を通して獲得されていきます。1つずつ箱にものを入れたり、箱からものを出したり、右にあるものを1つずつ左に移したり、1つずつ何かを並べたり・・・。

 1個、2個、3個・・・という個数の前に、1個ずつをたくさん経験して数感覚を身につけていくことは数学習の素地作りとしてとても大切ことです。そこを飛び越えて個数の学習に飛び込んでしまうと、数概念の獲得がなかなか容易ではないことがあります。

 遊びを通して「1個」の体験をくり返し積み重ねていきましょう。1個ずつ手にものを握って移動させる、幼児が夢中になって行うこの際限のない動作のくり返しが、実は数学習の基礎として欠かすことのできない大切な体験となっているのです。

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343.捨てちゃった?!

343.捨てちゃった?!
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 きょうの授業「お金の管理」から:

 お金の管理の学習のために、レシートの貼り分けを毎日行っている社会人の生徒さんがいます。A4用紙の半分のスペースに1日分のレシートを少しずつずらして貼り重ねていくのです。その欄の下には、その日の合計金額を書き、1日の予算の中に納まっているか、オーバーしてしまったかを自己チェックします。

「予算-使った金額」が、プラスだったらOK。マイナスだったら使いすぎ。マイナスの場合は△をつけて、いくらオーバーしたか金額を明確にします。でも近頃では、前日はオーバーしても翌日は控えめだったので、まあOKという感覚も身についてきたようです。

 1週間に一度教室でレシートチェックをしているので今日もざっとながめてみると、20日に靴を買って、24日にまた同じ店で同じ金額の靴を買っています。職場の友だちにでもプレゼントしたのかとも思いつつ尋ねてみると、「大きさが合わなかったからまた買いました。前のは捨てました!」とのことです。えっ?!捨てちゃったの?!えっ?!

「本当は、23.0だけど、前のは23.5で、5違うから」・・・それはそうだけど。
「で、ゴミ箱に入れちゃったの?もう、ごみやさんに出しちゃったの?」
「それは、会社の○○さんが知っています」

 私もそれなりにも講師ですから、「なんでぇ?」「どうしてぇ?」「ダメでしょう~」「もったいないでしょ!」・・・とは言いません。一歩街に出ると、学習課題は、本当にいろいろありますね。でも困りながらも、どこか笑みがこぼれてしまうのです。もちろん、人事だからではありませんし、ばかにしているのでもありません。何ともほほえましいというか、自分で一生懸命に考えているんだな、と純粋なものも感じます。

 彼は休みの日には、会社で必要なものをよく買っているのです。今回の靴も仕事用の上履きです。会社用のティッシュペーパー、掃除用品、修正液など文房具、職場の方のためにめがね拭き、・・・。休日にも仕事や職場のことを考えているなんて、見上げたものです。

 さて、今回はこの出来事を通して何を学べるでしょうか?
・靴は、店頭で履いてみてから買うということ
・サイズの数字の違いのみに反応しているのか、それともたとえ0.5の違いでも本当に大き過ぎたのか
・靴は中敷や靴下の厚さで多少の大きさの調整はできるということ
・サイズを間違えたのなら、取り替えてもらうこともできるということ
・倹約するという意識をより明確にすること
・もったいないという意識を育てること
・困った時には、誰かに相談するということ

 こう考えてくると、今回の出来事の一番の問題は、「靴のサイズを間違えて買ってしまっても、本人は困っていない」というところにあるのかもしれません。「倹約」「もったいない」という意識を育てることが最優先かもしれませんね。困っていないから誰かに相談することもないし、「もったいない」という意識がないからすぐに捨ててしまうし、「倹約」の意識がないからダブルで買うことにも抵抗がない。

 靴に限らず、お金の管理の学習としては、「倹約」「もったいない」というこの2つの意識を育てることがとても大切なようです。今回のことで、私も認識を新たにしました。それにしてもあの靴、今頃どうなってしまっているのでしょう・・・?みんな帰って誰もいない夜の会社のゴミ箱に、さびしく捨てられている様子が目に浮かんできてしまいます。

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342.ほめことば

342.ほめことば
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 生徒さんの反応に対して「うーん!」と唸るのもほめことばです。これをほめ言葉として受け取れる生徒さんも、それはそれで成長している証です。これだけで、講師である相手の意図を感じ取り、その意味するところを受けとめることが
出来ているからです。生徒さん自身も自らの学習にそれなりの手ごたえを感じることが出来ているのでしょう。

 そこまでくれば、その生徒さんの中には学習の評価の基準というか、尺度というようなものが形成されていると言えます。他者からの評価を得る前に、自己評価できているのです。手ごたえを感じるとはそういうことです。学習の評価基準が自己の中に形成されている生徒さんは、自分が納得するまで学習を繰り返します。

 たとえば、漢字は覚えられるまでくり返し書きます。納得しないと、絵でも文字でも文でも書き直します。その場で覚えるべき課題では、覚えるまで睨み、覚えたところで自ら「いいよ!」と言って、見ないで復唱したり書き取ったりします。

 この間生徒さんから、こんな質問がありました。北海道美唄市で「プリンセチア」という花が栽培されている新聞記事を取り上げた時のことです。「プリンセチア」というのは、ピンク系の「ポインセチア」です。名前は「プリンセス」の由来するのだそうですが、・・・で話題となったのは、「美唄市の唄という字と歌とはどう違うんですか?」という疑問です。

 この問いに答えるのはそう簡単ではありません。こちらはイメージとしては分かっているものの、生徒さんの理解できる言葉でいかに伝えるか。そこで、辞書を利用しました。パソコンの電子システムソフトで調べることを心得ている生徒さんは、「私がやります!」と自ら喜んで調べます。歌と唄に加え、詩という漢字も出てきました。これら3つを読み比べ、「ふーん」といっしょに感心し納得しました。

 「家に帰ったら、お父さんとお母さんにも教えてあげてね」と促すと、「はーい」といい返事をします。誰かに話すことによって、理解と記憶はさらに確実なものとなります。

 こんなことを言った生徒さんもいました、「上手と言わないで下さい。うまいと言ってください」。「上手」というのは、どこか幼い感じがするのでしょう。こちらも心して「上手」と言わずに、「うまいですね」「よく考えましたね」「うーん!」・・・という具合に別の表現を心がけました。

 年が長ずるに従って体も成長し、学習を積み重ねることによって心も成長します。体と心の成長に見合ったほめことばが求められるのですね。

 ほめるべき時期に十分にまた適切にほめると、学習を楽しみ、学習に対して意欲的になります。そうすると、次第に学習力が育ってきます。自ら疑問を持ったり、驚いたり感心したり、感動したり。自らのうちに学習のきっかけを持ったときほど学習が身につくことはありません。

 他者からほめられるとか、評価されることを超えて、講師が「うん、うん」と、時には「うーん」と相槌を打つ程度で、自ら学習を進め取り組んでいくことが出来るのです。

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341.ほめる

341.ほめる
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 ほめる、心からほめるって、むずかしいことかもしれませんね。心からほめなくては、相手に伝わりません。相手に伝わってこそ、ほめたことになります。

 大げさにほめただけでは、かえって空回りします。
 社交的なほめ上手もあります。それは、大人には伝わっても子どもには伝わりません。

 こちらが用意したプリントを全部やり終えた!「よく出来ました!」「すごいね!」「がんばったね!」これも、まあ、ほめことばです。全部やり終えることが目標である生徒さんにとっては、それは「すごい!」と評価すべきことでしょう。

 しかし、やり終えることは一応出来ている生徒さんであれば、取り立ててほめることではありません。ほめすぎるとかえって空回りします。やらせる側が全部やらせることが出来たことに安心し、自分をほめているようなものです。

 講師からの「生徒さんがやってくれました」「描いてくれました」「答えてくれました」・・・というような報告や記述は、私は改めるように指導しています。学習は、「やらせる」のでもなければ、「やってもらう」のでもありません。講師が舵取りをしながらも、共に学習に取り組んでいくのです。

 もちろん楽しく取り組んでいきます。しかし、楽しみながらも講師は真けんです。生徒さんがどこでつまずいているのか、こうすれば理解が進むか、ああすれば理解が進むか、もう少し繰り返すべきか、ここは引くべきか、常に感じながら、考えています。

 ですから、生徒さんの小さな変化にも気づき、本当に小さなことに対しても心からほめられます。なぜ、・・・それはこちらも本当にうれしいからです。生徒さんが自分でも手ごたえを感じたポイントを逃さずにほめるのです。そのためには、こちらも生徒さんと共に頭と心を動かしていなくてはなりません。

 大変な労力かと思われるかもしれません。でも講師業としては、そこが楽しいのです。

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340.日の出の時刻

340.日の出の時刻
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 「月の形の変化」の学習から、思いがけず「日の出の時刻」の学習へと転じたケース。まずは日の出の時刻を日付ごとにグラフ化していくことにしました。初日は6時3分が日の出、それが日に日に1分ずつ遅くなってきています。11月24日今朝は、6時25分です。

 先週末の授業で、月の半ばまで追えましたので、少しテンポアップして実際の日付にテンポを合わせていければというところです。冬至に、間に合うように。

 冬至は、昼の時間が最も短くなる日で、その日を境にだんだんと昼の時間が長くなっていきます。そして、春分の日あたりに昼と夜の時間がほぼ同じになります。それからは、夏至に向かって昼の時間がますます長くなっていきます。知識としては、聞いたことがあっても、実際にグラフにして1分ずつ変化していくことを手でたどっていくと、講師ですら耳からの知識を体感として実感できるような気がします。天体の動きを身近に感じると同時に、宇宙とのつながりも感じます。

 この生徒さん、昨年行った「冬の気温」「夏の気温」の学習の成果でグラフを書くことは得意です。しかし、たとえば25分は20分と30分の大体真ん中とか、28分は30分寄りということの理解がこれからなので、グラフの罫線は1分ずつとっていきます。

 ですから、6時を0分から59分まで表すには、A4の用紙を3枚縦に貼りあわせなくてはなりません。しかも、日付が30日までですから1ヶ月を表すのに、横にも2枚貼りあわせ、合計6枚の用紙を使って、日の出の時刻の変化を書き表していきます。

 尤も、貼りあわせるのは最後の作業ですから、プロセスでは1枚の用紙ごとに記入していきます。ですから、さほど手間ではありません。最後に貼りあわせるのが、楽しみです。

 同じことを日の入りの時刻でも行う予定です。日の出と日の入りのグラフの形態がつかめたら、今度は1枚のA3の用紙に両方のグラフを書き表して、昼と夜を色分けさせてみたいと思います。「日がどんどん短くなっている」ことを自分のグラフで、確認出来ることを期待しています。

 6枚つづりのグラフが2つとA3の昼・夜グラフが1つ、これらを自分の部屋に貼っていつでも眺められるように。そんな環境を作ってあげられることも楽しみです。

 今の寒い時期、教室の後半の時間帯の生徒さんが変えるときはもうすっかり暗くなっています。でも冬至を過ぎ、新年を迎えると、その時刻はまだ明るいのです。真冬なのに、春に向かい夏に向かっていくことを毎年感じます。冬来たりなば春遠からじ、・・・ですね。

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339.学習のゆくへ

339.学習のゆくへ
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 今日の教室ブログ、バザーでのクッキー販売を前に自分から「お金の学習をお願いします」といってきた生徒さんの記述でした。講師はその月その週の学習プログラムを立てながらも、数年先の必要性や目標にも目を向けています。こうして、舵取りをしながら一人ひとりの学習プログラムに個別に当たっていきます。

 そんな中で時にはこの生徒さんのように、自らリクエストが出たりもします。小さな生徒さんですと、ちょうどいまの時季は道すがら拾ってきた落ち葉やどんぐりがその日の授業の教材になったりもします。大きく舵取りをしながらも、ちょっと一緒に楽しんだり、成果につないでいくことは、講師の力量のなせることです。

 先日も面白いことがありました。十月頃にご紹介した月の満ち欠けの「月齢カレンダー」、この11月1日より生徒さんと行っています。月の形の変化がまるで手に取るように、また月が恰も動いているかのように見えとてもおもしろかったので、
このブログでも取り上げたのですが、ひとりの生徒さんは月の形の変化にはほとんど無関心。もっぱら日の出と日の入りの時刻に注目しています。

 月の絵の下には、日の出・日の入りの時刻と月の出・月の入りの時刻が24時制で記されているのです。何故そこに興味があるのかは分かりませんが、それほどに興味があるのならと、日の出と日の入りを取り上げることとしました。

 これも飛び入りの学習課題です。でもこの予定外の興味をどう学習として展開していくかを考えることは、講師としてとても楽しいことです。この展開は、あしたにつづきます。

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338.ソーシャルスキル:借りたら、返す!

338.ソーシャルスキル:借りたら、返す!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

「借りたものを返す」ことが苦手な生徒さん。どのようにアプローチしていきましょうか。問題が絞られているので対策は練りやすいと思います。所有の意識もしっかりしているし、借りたものは返さなくてはいけないことも分かっている。分かっているけれど、できない、というケースです。

 ならば、「借りる」という状況をたくさん作って、返す練習をしていきます。親御さんにも協力していただきます。

 まず毎週、授業の度に何かを貸してあげることにしました。たとえば、
・宿題を行うための、太ペンを貸してあげます。
・宿題を行うための、資料を貸してあげます。
・本を貸してあげます。
・雨が降りそうな日に、傘を貸してあげます。
・たくさんのプリントをはさむためにファイルを貸してあげます。
(※何のために何を貸したかを親御さんにもそっとお伝えしておきます)

 第1週目は何かを貸し、翌週返すことができるか様子をみます。返すことができたら、褒めます。そしてまた何かを貸してあげます。もし返すことが出来なかったら、今日返す約束になっていたことを確認します。そして、来週その結果を待ちます。

 第3週目です。返すことが出来たら褒め、返すことができなかったら今度は親御さんに言葉がけをお願いします。
「先生に借りたペンを明日返すんでしょ。鞄に入れましょう」と入れるところまで見届けてもらいます。

「わかってる、後で入れる」という返事でしたら、一度だけ「今、入れましょう」と促してもらい、それでも行わなかったら、ペンを持ってきてその場で入れさせるように手助けをお願いします。

 このとき、親御さんがイライラしないこと、叱らないこと、口うるさく言わないことがとても大切です。「今やれば簡単なんだ」、そして翌日、先生にちゃんと返すことが出来た、良かった、という達成感と満足感へとつながるようにしてあげましょう。

 この場面がとにかく一番大事です。ここで「うるさいなー!」という気持ちにさせてしまうと、親御さんの言うことをますます聞こうとしない態勢に入ってしまいます。講師も、約束のものを返せなくても決して叱りません。小言めいたことも言いません。ただ、約束だったことの確認だけをします。親御さんもここがガマンのしどころです。

 お互いに焦ったりイライラしないためにも、時間にゆとりをもって行わせましょう。ですから、用意は前日に。当日になると、親も子も焦ります。焦っていてはできることも出来なくなります。

 こんなやり取りを何回か様子を見ながら繰り返していきます。この11月の中旬から初め、クリスマスの頃には、少し目途が立つといいなと思っています。ほかにもいろいろと気になるところはあるようですが、ひとつずつ解決していきましょう。

 ひとつ解決するごとに、生活リズムも整い始め、身の回りも整頓されてくることでしょう。親子の関係も流れがよくなることでしょう。すると、忘れ物、提出物の管理、など他の問題も少しずつ良い方向にきっと向かっていきます。

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337.ソーシャルスキル:誰のため?

337.ソーシャルスキル:誰のため?
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

「借りたものは返す」、なんて当たり前と思われるかもしれません。でも、これがなかなかできないというケースが少なくありません。

 自分のものと人のものとの区別はついていて、いわゆる所有の意識はきちんとあってもそんなことが起こりうるのです。しかしこれは、発達障害をもつ生徒さんに限られたことではなく、一般人にもマナーとして問われていることでもあります。

 100円、500円、1000円、10000円、・・・たとえいくらであっても借りたお金を返さない。
 図書館の本やレンタルビデオを返さない。
 図書館の本といえば、返さないだけでなく、書き込みがされていたり、ページが引き裂かれていたり、ということもよく問題になっています。こう考えていくと、「えっ」と思われるような行為は、一般の大人の社会においてもそこらじゅうで目にします。

 一般の大人にもソーシャルスキルトレーニングが必要であるようです。ソーシャルスキル、一体誰のためのもの?と感じるのは、私だけでしょうか。

・スーパーの駐車場に置きっぱなしにされているカート
・野菜売り場に置き去られた、お肉のパック
・取ったお皿をレーンに戻す回転寿司のお客
・投げ捨てられている空き缶や吸殻やごみ
・「ぬれた体で歩かないで下さい」という掲示やアナウンスにも拘わらず、ロッカールームをぬれた体で歩く人。
・脱ぎ散らかされた数足のスリッパで、乱雑になっている洗面所 
・「靴は靴箱に」とあるのに、玄関に脱ぎっぱなしの人
・電車の中で大声で話す人
・携帯電話を相変わらず電車の中で使う人 
・・・・・あげていけば切がありません。しかも、若者ばかりが問題なのではなく、中年、壮年、老年も。年齢には、関係ないようです。

 みんなが守ればよいことが守られていないのです。・・・なんだか低級な話題で、小学校の学級会の問題みたいになってきてしまいましたね(こんな言い方、小学生に申し訳ありませんが)。

 では、今晩はここまでにします。明日は、「借りたものを返す」ことが苦手な生徒さんに教室ではどのようにアプローチしているかをお話ししたいと思います。

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336.ソーシャルスキル:ぼくが1番!(つづき)

336.ソーシャルスキル:ぼくが1番!(つづき)
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 「何でも自分が1番でなくては気がすまない!」というケース:(つづき)もうひとつは、気持ちが満たされていない場合です。

 兄弟のいる場合、家庭の中でも誰が1番かということでもめることもあるでしょう。とくに上のお子さんにとっては、下のお子さんはライバルです。弟や妹は、ある時まではいなかった存在。その突然現れた存在にお母さんを奪われ、独占されるような状況になってしまうのですから、上のお子さんとしては、黙ってはいられません。

 しかも下のお子さんの誕生前後には、上のお子さんはたいてい特別な状況下に置かれます。おばあちゃんとお留守番。慣れないおばあちゃんの家に預けられる。説明も予告もないままに、自分の生活状況がどんどん変わっていきます。

 こんな場合での自己主張は、赤ちゃん返りや母子分離不安や人見知りなどいろいろな形で現れますが、「ぼくが1番!」というのもその一つです。絶対に弟や妹に、1番は譲れないというガンとした主張です。

 「自分に1番に目を向けてもらいたい」「自分に1番に気持ちを向けてもらいたい」「自分を1番に大事にして欲しい」という欲求の表れです。

 「お兄ちゃんだから(お姉ちゃんだから)がまんしなさい」というよりは、その自己主張を受容し気持ちを満たしてあげましょう。1番にしてあげましょう。気持ちが満たされれば、その気持ちは下の兄弟のほうへ自然に向けられるようになります。「○○ちゃんが先でいいよ」というように。

 兄弟間のライバル意識のほかにも、思うように何かが出来ない・・・たとえば絵が描けない、なわとびができない、勉強がわからない、友だちと遊べない、かけっこが苦手・・・というようなことによるストレスで、「ぼくが1番!」という自己
主張が過度になることもあります。

 その場合は、「できない」という状況に出来る限り追い込まないようにしましょう。出来ることをもっと伸ばして、ほめてあげましょう。自信を持たせてあげましょう。苦手なことは、無理やりにやらせる必要はありません。さりげなく、援助をしてあげましょう。または、できるところから少しずつ克服させていきましょう。そうしてストレスをとり除き、気持ちを満たしてあげることです。

 小言や注意が多すぎて、お子さんがストレスをためていることもあります。器質的な「イライラ」とは異なり、環境から生じる「イライラ」です。その「イライラ」がストレスとなって、「ぼくが1番!」とそれをストレスのはけ口にしていることもあります。

 決められたことをしない、時間を守らない、だらしがない・・・、気になるところはたくさんあると思いますが、一つずつ直していきましょう。小言や過度の注意で、行動がよくなることはまずありません。

 ソーシャルスキル、行動を直す前に、まず気持ちを満たしてあげることが先、ということもあるのです。

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