20.指導のポイント(3)


20.指導のポイント(3)「全部を生かす、一部を伸ばすどっち?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 「全部を生かす? 一部を伸ばす?」

 これもやはり大切なことですね。

  きょうはこれを、「教科の学習」において整理して考えたい思います。
 冒頭の問いを言い換えると、「全部の科目にあたるか? 一部(ひとつ)の科目に絞るか?」となります。

 これは、お子さんによって異なります。
 勉強が好きなお子さん、すでに勉強の習慣ができているお子さんは、全部の科目に配分よく取り組んでいけばよいでしょう。

 しかしまずは一科目に絞って、学習の習慣をつけることから少しずつ進めていくのがよい場合もあります。

 ・勉強はあまり好きでない
 ・成績もなかなかふるわない
 ・特別興味のある科目がない
 ・毎日勉強する習慣がない、
 ・勉強の仕方が分からない
 ・いい成績をとったことはない、・・・のような場合です。

 このような状況は、ゼロからのスタートというよりもマイナスからのスタートです。お金で考えればただお金がないだけでなく、既に借金がある状況と同じです。また水泳に例えれば、ただ泳げないだけではなく、水への恐怖を持っている状況と考えれば分かりやすいと思います。

 このような状況で全科目をねらっていっては、マイナスの溝をさらに掘り進めてしまいます。では、どうしたらよいでしょう?

・机の上を片付けて、楽しい雰囲気で始めましょう。叱り付けて始めるのは禁物です。
・すぐにできそうなこと(簡単)から始めましょう → すぐに結果がでるように。
・「できた」(新しく知る)という実感が、次に進むエネルギーになるよう応援しましょう。

 例えば漢字学習。まずは傍らに座って学習に取り組むエンジンをかけてあげましょう(楽しい雰囲気で導入)。

 学習内容としては、書くことよりも読むことを優先しましょう。読むことは書くことに比べて、短時間で効果が出ます。やっているそばから、「できた」「できた」ということを肌で実感できることが必要です。5問できた、10問できた、半ページできた、1ページできた、・・・この達成感が大切なのです。

 自信や達成感は、前向きな意欲という恵みを与えます。ここで特に大切なことは、親御さんがあせらないことです。

「やらなくてはいけないことは、ほかにもたくさんあるのよ!漢字だけじゃないんだから!」

 でもあせらないことです。あせらず逆に、ほめることです。人はだれでも、他人に認められるとそれが大きな意慾となります。「すごいね」「できるじゃない」など何でもいいですからたくさんほめてあげて下さい。これは次への種まきです

 最終的には、人にほめられなくても自分から進んで目標を決めて努力するようになります。小さな目標を設定して、楽しく、簡単から取り組むことによって結果を感じられるように指導することがポイントです。

 そもそも人生の選択、進路の選択の、仕事の選択など、「選ぶ」ということは、逆に考えてみるとその他のこと捨てるということです。

 お店に入ってたくさんのメニューから自分が今食べたいものを選ぶということは、とりあえず今日は他のものは食べない、選ばないということですね。

 私はこのところ「鶏と野菜の黒酢アンかけ」をよく選びます。他にもおいしそうなメニューはたくさんあるのです。しかしそれは捨てて、「鶏と野菜の黒酢アンかけ」を選んだのです。他のメニューは今度のお楽しみです。あしからず

 
造形リトミック教育研究所

19.指導のポイント(2)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
* 新しく知るからのパートナー
* ちょっと簡単からのパートナー  

19.指導のポイント(2)

「大きくとらえる? 細かくとらえる?」

 このことも、大切な見方の一つです

・物事を大きくとらえる
・物事を小さくとらえる
・鳥瞰図
・虫瞰図
・今をみる
・これまでをみる
・目先をみる
・生涯をみる(これから先)
・就学期間を考える
・社会参加から先を考える

 理想的には、大づかみに捉えて少しずつ確実にしていくといったイメージが良いでしょう。 

 私たちはどうしてもマイナス面が気になりますから、目の前の問題や小さな問題に捉われて、無理を押し付けたり、イライラしたり、先に進めずに足踏みをしたりしてしまうことがあります。
 
 しかしもっと、生涯という大きな視点で療育をとらえることが必要です。

 生徒さん一人ひとりの療育を考えるとき、ただ単に「今、○○ができるように」ということだけでなく,一人ひとりの生徒さんがどのような人生を歩み、どのような生涯を送るだろうかという、大きな視野を持つことが大切です。

 私たちの多くは義務教育を経て、高校や大学に進学し、就職し結婚し・・・という道をたどってきています。しかし、人生はそれだけではありません。ハンディを持つ方たちの、それとは違うすばらしい生き方が今ではたくさん紹介されています。造形リトミック研究所でも、20代・30代となってそんな人生を歩み始めている生徒さんが少なくありません。

 どのような道のりを歩むにしても、私たちに共通であるのは「生き生きと、日々幸福に生きること」です。その視野をもって、乳幼児期の療育、学齢期の療育、社会参加への療育、社会人の療育が考えられるべきです。

 そうすると、たとえ今出来ないことがたくさんあったとしても、それを全部乗り越えなくても良いことに気づくこともあります。また今それが出来なくても、全然気にしなくても良いことにも気づきます。

 また同じ課題(たとえば足し算)でも、何のために行うのか、どの段階まで行うのか、どのような方向性を持って行うのか、そういった判断が必要となってきます。

「幸福に生きる」ために、その目的のために課題が賢明に吟味、選択されるべきです。

 これは、ハンディがあるから学習しなくても良い、難しいことはしなくても良い、ということではありません。また、ハンディがあるからといって幼少のうちから人生を見限ることでもありません。まったくその逆です。

 私たちの多くは、学校の教科教育というあまりに限られたコースを生きてきています。それに合う人もいれば余りあわない人やまったく合わない人もいるのです。義務教育の大きな恩恵はありますが、その在り方は今、健常の子どもたちにとっても検討されなくてならない危機的な状況にもあります。

 療育者はともすると、自らが受けてきた学校教育の経験や視点から抜け出せずに、それをすべての生徒さんに当てはめようとしていることがあります。

 限られたコースから自由に抜け出し、解放されてコースを選択できる喜びを享受しましょう。目の前の努力は、基本的には生き生きと生きるための努力につながるものでなくてはなりません。

 そのための努力なら、惜しまず楽しみながらやっていきましょう。

 
造形リトミック教育研究所
nan

18.指導のポイント(1)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
* 新しく知るからのパートナー
* ちょっと簡単からのパートナー  

18.指導のポイント(1)

「プラス(+)を伸ばす? マイナス(-)を減らす?」

 このことは基本的で大切なことです。

・長所を伸ばす
・短所を改善する
・得意なものを伸ばす
・苦手なもの克服する
・興味のあるものを伸ばす
・いま必要とされるものを身につけさせる

 これは、この中のどれが正解かという問題ではありません。長所を伸ばしながら短所を克服していく、というのが理想的でしょう。しかし、実際にはなかなかそう上手くいくものではありません。大づかみで考えるとやはり、まずは「できること」や「好きなこと」、「興味のあること」を優先することです。

 「できた」「楽しかった」「おもしろい」という経験を重ね、常に気持ちが充電されていることが大切です。そうすれば当然、「ほめられること」が「「叱られること」よりも多くなります。否、相当悪い行為でもない限り、叱るようなこともないでしょう。

 学習する上での「わからない」「できない」「まちがえる」、注意欠陥、多動、自傷、・・・などは叱る対象ではありません。理解の回路の躓きや誤り、行動の背景、器質的な問題を考慮し配慮して、ケアをするべき対象です。まさにこれが治療教育であり、私たちが力を発揮するべきところです。

 ここでひとつ加えておきます。「できること」「好きなこと」「興味のあること」を優先する、というのはあくまでも「優先する」のであつて、「苦手なこと」「あまり好きでないこと」「興味のないこと」には触れない、ということではありません。

 前者に優先的に取り組むことによって、集中力や根気、探究心などプラスの態勢や意慾が養われます。また講師との信頼関係も育くまれます。そうすると、後者にも少しずつ取り組むことが出来るようになるのです。

 講師や親御さんのちょっとした工夫が、意外に大きな効果を生み出します。以前に紹介したような「素晴らしい引き立て役」を上手に活用して、「苦手なこと」「あまり好きでないこと」「興味のないこと」も上手に演出してみましょう。

「楽しい」「知る(おもしろい!)」「簡単」、造形リトミック研究所の3つのパートナーシップは、皆さんへのメッセージでもあり、講師としての確認項目でもあるのです。

 心理的なマイナスの壁をいかに低くするか、限りなくゼロに近づかせるか、この辺りの技量が本物を問われるところですね。私も、自分に再確認します。

 造形リトミック教育研究所

nan

17.テーマの力 (2)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
* 新しく知るからのパートナー
* ちょっと簡単からのパートナー  

17.テーマの力(2)

 秋になり、このところテレビの番組で「鉄道」がいろいろと特集されています。地方のローカル線の話、ユニークな鉄道、猫の駅長、イベント列車など各地の鉄道とそれにまつわる暮らしが紹介されていました。

 それぞれの「鉄道」には路線があり、駅舎があり、店があり、特産物があり、街があり、地域があり、人々の日々の営みとまた歴史があります。

 ・・・興味ある対象があって、そこから時間的にも空間的にも楽しく広がっていく・・・ということはとても素晴らしいことです。私たちの求める「テーマからの、プラスの連鎖(広がり)」です。

 造形リトミック研究所では、講師がまずそのテーマを楽しむことを前提と考えています。この気持ちは一人一人の生徒さんの気持ちに届き、生徒さんの中で広がっていくからです。

 こんな思いで、この休みに実際に蒸気機関車に乗りに行ってみました。・・・ちょっとこじつけかな? 単純に乗ってみたかったんですね。

 場所は埼玉県の秩父です。
 西武国分寺線恋ヶ窪駅から東村山駅、西部新宿線で所沢駅、西部池袋線で飯能駅、特急レッドアロー号で西武秩父駅まで行きました。

 途中飯能駅には都営副都心線の新型車両が停車していたので、思いがけず本の数分ですが車内に乗り込んでみました。さすがに洗練された新しいタイプの車両。しゃれた配色のシートやシャープな角度で規則的に並ぶ手すり、連結部の半透明のドア、とても満足感がありました。近いうちに、ぜひ乗ってみたい。

 本命の蒸気機関車には西武秩父駅から三分程のところにある「御花畑」という駅から三峰口駅まで乗ります。

 小さな子どもからお年寄りまでたくさんの人が興奮気味に列車の到着を待っています。遠くに蒸気機関車の黒い姿が小さく見えてくると、12時18分いよいよ機関車が構内に入ってきました。感動です。本物、さすがに本物は重量感があり存在感があり、時を越えて目の前に停車しています。魅力いっぱいです。

 乗ってみました。ほんのりと、なつかしい石炭ストーブのようなにおいがします。じきに、ごん、ごんと体への振動を与えながら動き出しました。乗り心地は、「ぐんぐん」と引っ張るようなイメージとはかなり違いました。スピードは思ったよりも遅かったです。でも、独特な振動と独特な速度、窓からの景色など、30分ほどの蒸気機関車の旅は十分楽しめました。

 友達からも聞いていましたが、沿道では大勢の人たちがにこにこしながらこちらに向かって手を振っていています。蒸気機関車への特別な思いを共有しているような何とも言えない感覚を持ちました。多くの鉄道ファンはポイントで、カメラを向けて撮影しています。

 私にとって何とも魅力的だったのは、終点の駅で停車している機関車自身です。本物=実物の迫力!64年も前の機関車(昭和19年製)ですが、車体の一つ一つの部品に形や質感がありました。そして機関士の方々はにこにこと楽しそうに説明してくれました。炭水車からスコップで石炭をごそっと出して、記念にひとつずつくれました。 

 その後切り離して給水場に移動させ、消防のようなホースで何トンもの水を補給します。さらにその後反対方向にバックで移動して、方向転換をします。初めて見るターンテーブル(方向転換)、蒸気機関車が丸ごと一台載れる線路で、この線路ごと180度回転して向きを変えます。

 秩父の大自然の中でちょうど天気もよく、コスモスもきれいで、とても楽しい経験ができました。

 一例ですが、このように一つのテーマの魅力は計り知れません。またそこからの広がりもとても大きいのです。ぜひチャンスを作って、実物=本物に触れてください。感動の質が違います!

 テーマごとの描画が、その世界との出会いのきっかけとなれば・・・、そんな願いを持って新しい絵描き歌を造り続けています。

造形リトミック教育研究所
nan

16.テーマの力(1)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
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* ちょっと簡単からのパートナー  

16.テーマの力(1)

 造形リトミック研究所には、月ごとのテーマ(≒モチーフ)があります。

 テーマにはそれ自身に大きな魅力があります。種類、色、形、味、音、存在感、名前、部品、部位、機能、、歴史や開発者の思い、研究の蓄積、自然の恵み、雄大さ、智恵・・・・・、ほんとうにさまざまな要素を個別にもっています。
そのひとつひとつの魅力が大きな魅力を創り上げています。

 それぞれのテーマに対して、一人一人はそれぞれに興味や経験をもっています。
自分がもっとも魅かれるテーマに出会えることはとても幸いです。それを自らの生涯のテーマとして楽しみ、追求していくことができれば、どんなに豊かな人生となるでしょう。

 造形リトミック研究所の今月のテーマは「鉄道」です。

・電車の顔
・快速電車
・都営副都心線
・特急電車
・新幹線500系「のぞみ」
・蒸気機関車
・・・・・・

「鉄道」といってもこのように複数の対象を用意しているのは、一人一人の生徒さんにとって最も心の動く対象を講師が選べるようにとの思いからです。造形リトミック研究所が当初から貫いてきている個別教育ならではの計らいです。

 画一的な教材でのマニュアルどおりの指導は、私たちの思いとは異なるところにあります。それはある意味、提供する側にとっては楽で効率が良いでしょう。しかし、ひとりひとりの個性や可能性をほんとうに伸ばす教育は実現しにくいと思われます。

 「創造性を伸ばす」「個性を伸ばす」、ひと言で言うことはたやすいのですが、実現するには大変に手間隙がかかります。一人一人の生徒さんとの対話(言語を介さない対話の場合もあります)、親御さんとの対話が、まずそのきっかけ(糸口)
を作ります。そこから、研究所と講師とが周到な用意をしてテーマと学習対象を提供します。

 「特別扱い」、どちらかと言うとマイナスの意味合いで用いられる言葉ですが、一人一人の育ったプロセスや好みは異なるのですから、私たちはより積極的な意味で一人一人の生徒さんを「特別扱い」していきたいと考えています。

 「特別扱い」=「オーダーメード」です。一人一人、正にその子(その人)の心が動くものを提供していくのです。子ども・・・大人もそうですが、よほどの必要性に迫られない限り、自ら取り組もうと思うのは自らの「心が動くもの」です。

 教育は、心を動かすことから始まるといっても過言ではないでしょう。そしてテーマには、「心を動かす力」があるのです。提供する側の私たちもテーマから力をもらって、楽しみながら十分手間隙をかけて、生徒さんのテーマとの出会いの場を創っていきたいと考えています。

 造形リトミック教育研究所

nan

15.すばらしい引き立て役 4(テクノロジー)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
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15.すばらしい引き立て役 4(テクノロジー)

 この力はもうだれもが認めるところです。

 毎日の生活、この力を利用しないでは現代の生活が成り立ちません。携帯電話、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、インターネット、ナビゲーター、ATM、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ。また、今や乗り物はすべてこのシステムが入っています。自動車、電車、飛行機、船。ご存じのようにディズニーランドもコンピューターがいろいろな乗り物を制御しています。これらすべてのものは、問題解決として発明されました。

[毎日のテクノロジー]

・グローバルで幅広い世界(映画、テレビ、インターネット)
・物理的な便利さ(乗り物、家電、電話、インターネット)
・迫力ある演出(遊園地)
・わかり易い表現(テレビ、インターネット、CG)
・驚きの楽しさ(映画、テレビ)
・実物を記録する(文字、絵、写真、動画)
・情報収集
・快適な生活
・安心、安全の支援

上手に活用すれば同じことを楽しく元気よくできます。

 言葉や文字は大きな発明です。図や絵も記録という大きな役割を果たしてきました。白黒写真、カラー写真、録音という技術。レコード、カセット、ラジオから、テレビ。静止画から動画にと、その表現力もどんどん向上しています。コンピューターグラフィックによる新しい表現も増えてます。感性やイメージが豊かに表現できるようになってきました。今までできなかった表現が可能になりました。

 造形リトミック研究所では、中でもタッチパネルを中心にしたシステムが活躍中です。キーボードやマウスと比べると、受け入れられる生徒さんの幅がぐっと広がります。指一本で一人一人の生徒さんがパソコンでの学習に楽しく取り組めます。タッチでリズミカルに、わかりやすく。

 文字の発明から現代のハイテクにいたるまで、発明の歴史は人類の思いの集積・集約です。その恩恵を教室に取り入れ、どの生徒さんにも役立つようにクリエイティブにアレンジしていくのが私の仕事であり楽しみです。がんばってます!

http://www.zoukei-rythmique.jp   造形リトミック教育研究所

14.すばらしい引き立て役 3(身体表現)

おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

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14. すばらしい引き立て役 3(身体表現)

 第3回は身体表現です。動物(ゴリラなど)の威嚇行動や昆虫(蜂)のダンス、鳥の求愛行動なども身体表現です。

 人類においてもはるか遠く原始時代から、感情の表現やシャーマンの祈祷などに身体表現が見られます。雨乞い、収穫の祈り、戦勝祈願、勝ち鬨など儀式的なことや形式的なこと、共同的なことには、多くの場合に身体表現が伴われています。

 また現代においても、オーケストラの指揮、応援団長の振り、野球のサイン、車の誘導、交通整理、商業的なコミュニケーション手段・・・・・。精神性や感情、情景の表現として、意志の統率として、言葉の代替としてまた言葉や意味づけのより効果的かつ微妙な表現として、身体表現は実に多種多様に用いられています。 

 意図された身体表現としては、次のようなものがありますね。

・ダンスや舞踊など広い意味での踊り
・手話やジェスチャー
・リトミック
・ミュージカルや劇や映画など
・表情(笑顔、その逆のにらみつけ・・・)
・スポーツ(新体操、スケート、シンクロナイズドスイミング)や武道
・体操やヨガ
・数を数えること
・指差し

 これらとは別に、自然発生的にアドリブとして発現するものは、数え上げれば切がありません。私自身、車の誘導での「オーライ、オーライ」「ストップ」とか、、「ご飯にしましょう」と言うとき、自然に手が動きます(招くしぐさ、制止するしぐさ、箸を持つしぐさ)。

 言葉(気持ちや感情、意思や意図)は自然に「身体表現=動き」を伴います。また同時に「身体表現=動き」は言葉を引き出します。

 造形リトミックのサブメソッドである「リズム造形」・「歌唱造形」は、まさにこの動きと言葉の同調的関係を教育方法に取り込んだものです。このような意味合いでの言語に対して、私どもはそれを「造形言語」と銘打っています。

「リズム造形」「歌唱造形」「造形言語」いずれの用語も、造形リトミック・メソードの理論と方法論を語るために私どもが造り出した造語です。

 造形リトミックが認知教育や描画機能教育であると同時に言語教育でもありうる所以は、ここにあるのです。

造形リトミック教育研究所
nan

13.すばらしい引き立て役  2 (歌)

おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

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13.すばらしい引き立て役 2(歌)

 第2回は歌です。歌の力もだれもが認めるところ、長い歴史を持っております。

 音楽に言葉が加わることで、記憶の効果が高まります。

・紙面で伝えることのできなかった時代は、歌が記録と伝達としての大きな役割を果たしていました。

・メロディーから言葉を思い起こし、また逆に言葉からはメロディーを思い起こすことができます。

・言葉による意味の流れ(ストーリー)をメロディに乗って理解することができます。つまりメロディは言葉をチェーンのようにつないでくれるので、初めから終わりまで意味を順に理解していくことがよりたやすくなるのです。

・コミュニケーションとしての使い方もあります。赤ちゃんに話しかける母親語は歌に近いものです。大人でも感情が大きく動いているときの発語はイントネーションの幅が広がり、語気の強弱も生じて歌に近いものとなります。

・それを劇として造りあげたのが、ミュージカルでありオペラです。

・仕事や作業を楽しくリズミカルにするような使われ方もあります。「田植え歌」のような仕事歌がそうです。仕事歌は、協働性(共働性)も生みます。

 造形リトミック研究所では、歌に乗って絵をかく、歌に乗って言葉を学習する、歌に乗って算数を学ぶ、歌に乗って生活力をつける、歌に乗って作業手順を覚える・・・・・など、歌が大活躍です。

造形リトミック教育研究所

12.すばらしい引き立て役 1 (音楽)

おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

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12.すばらしい引き立て役 1(音楽)

 昨日の昆虫と同じくらい私が好きなものは、音楽です。父が作曲家であったからでしょうか。幼い時から家の中にはたくさんのレコードがあって、こっそり聞いていました。クラシック音楽「運命」「田園」・・・から、映画音楽「野生のエルザ」「第三の男」「007」・・・、ラテン音楽にいたるまでのさまざまな音楽。

 父親がピアノに向って夜中まで曲を作っていたことも鮮明に覚えています。パソコンが世に出てからは、コンピューターを使ってにこにこ楽しそうに作曲していました。曲ができると、なぜか父はいつも踊っていました。頭の中では、出来立ての曲が鳴っているのでしょうか。

 今ではいつの間にか、私も曲を作るようになっています。そして父と同じように楽しんでいます。何かを表現できることは、上手い下手にかかわらずとても楽しいことです。私もいつの間にか踊っています。

 さて今日からは、何かをするときに「すばらしい引き立て役になるもの」について考えてみたいと思います。第1回は、私も大好きな音楽です。

 音楽の力はもう誰もが認めるところです。一歩街に出るとヘッドホンをした若者から中高年や高齢の方に至るまで、多くの方が毎日またいろんなところで音楽に触れています。

 音楽には、いろいろな力があります。

・同じことを楽しくする力
・雰囲気をつくる力
・言葉のイメージや映像の印象を膨らませる力
・動きや作業にリズムをつける力
・やる気を出させる力
・作業を継続させる力
・作業に集中させる力
・即効的に気持ちを切り替える力
・特別な記憶をする力
・緊張をほぐす力
・疲労を軽くする力
・マイナスの思いを消す力
・・・・・

 私は、時々室内プールに行きます。プールのコースでは、かなり高齢の方たちや少々太目の方たちがアクアビクスを楽しんでいます。アクアビクスとは、エアロビクスの水中版です。本当にたくさんの方たちが参加されていることには、びっくりです。

 曲は、ビートの聴いたハイテンポの曲です。とてもハードな動きですが、若いコーチにリードされて、約30分間水中で苦にすることなく楽しそうに動き続けています。しかも皆さんの動きは、音楽のリズムにぴったりです。

 アクアビクスには、ここにあげた音楽の力のほとんどが有効に生かされています。

 面白いことに、この横で泳いでいる周りの人たちも皆いつもよりテンポが上がってきます。音楽の力を知らぬ間に享受しているのです。私もそのひとりです。

 造形リトミック研究所では、このようなすばらしい音楽の力を学習に活用し、音楽のあふれる教室であることを心がけています。

http://www.zoukei-rythmique.jp/  造形リトミック教育研究所

11.自分はどう育てられたか?


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。
nan
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11.ちょっと 一息 (自分はどう育てられたか?)
 
 初代所長すなわち父がよく言っていたことが、「逆を考える」です。

 療育において子育て考えるとき、逆に自分はどう育てられたかを振り返ってみましょう。

 私の父は中国の大連育ちで、比較的裕福な家庭の一人っ子でした。非常に甘やかされて育ったそうです。箸の使い方も下手で、ただ好きなことを一生懸命やるように祖父に言われて育ったようです。従って、私も同じように育てられました。父に叱られたり、怒られたりはほとんどなく、片手に収まってしまいます。

 私が子どもの時に特に好きだったのは、昆虫です。とにかく虫が好きで、蝶もたくさん採りました。ただ普通とちょっと違う点は、採った後に昆虫の展翅をすることです。子どもでも、大人のコレクターがするのと同じように父から指導を受けました。

 40年以上前ですが、渋谷にある志賀昆虫店にいくことが楽しみでした。そこには、本格的な方が使う3段4段の虫とり網や世界の蝶などがあったように思います。このときに大人が使う、本物にふれるチャンスがありました。

 昆虫については、こんなこともありました。友達からアフリカの蝶(マダラチョウ)をもらったこともあります。彼はお父さんの仕事でアフリカに行っていたのです。そのお礼に、私はブラジルの蝶を彼にあげました。私も父の仕事の関係で、ブラジルに行っていたことがあるのです。

 標本を見るのもとても楽しみでした。その時の父の解説がとても印象深く、今も言葉として耳に残っています。
nan
・「昆虫はすごいなあ。空も飛べるし、木にも止まれる。水の中でも水の上でも、 いろんなところで生活できる」

・「昆虫の形には意味がある。必ず左右対称だ」

・「蝶の飛び方と翅には関係がある。その構造には自然の美がある」
nan
 父の説明を繰り返し聞いていたので、私も昆虫を見るとそのように感じるようなりました。

 また近所の昆虫好きの大学生(当時)もよく父と昆虫の話に熱中していました。父と図鑑を見ながら、「この蝶はこれかな?」「こっちじゃないですか?」など会話が弾み、毎日のように行き来がありました。

 その大学生の部屋に行くと、ベッドの下の引き出しに標本箱がごっそり入っていて、自分の持っていない昆虫があるととてもうらやましかったのを覚えています。一番ほしいと思ったのが、「ギフチョウ」でした。その大学生は、後に生物学者になりました。

 「子どもだから・・・」という発想は父にはなく、小さいときから本物に触れさせてくれました。採集道具や標本、図鑑(分厚くて、詳しくて学者が見るような)、本当に好きな人の思い、考え方にじかに触れてきました。ここで、探求していく面白さを知りました。

「好き」なものから広がっていく世界には、非常に魅力があります。楽しみや元気、力を与えてくれます。またそれは、ものの見方や考え方をまなぶ場でもあり、忍耐力や根気、逆に達成感や満足感を楽しみながら養ってくれる場でもあります。

 造形リトミック研究所は、「好きなもの」を、絵描き歌という「簡単な手法」で、「楽しみながら」描くことを通して、見る力を育てることを目指しています。最終的には、ひとりひとりが好きな世界をもち、その世界が広がっていくことを願っています。
nan
http://www.zoukei-rythmique.jp/ 造形リトミック教育研究所

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