391.知的障害:書字への導入(円描)

391.知的障害:書字への導入(円描)
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 枠の中に十字形が描けるようになったら、今度は丸を描く練習をしましょう。なぐり描きがとても大切なプロセスであることは前にお話いたしましたが、これから練習する丸はなぐり描きとは少し区別してより形を意識して描けるように、大きな丸をトレースして描くことから練習を始めましょう。

 画用紙の中央にできるだけ大きな丸を太い線で描いてあげましょう。その上をくり返し、くり返し、トレースさせましょう。線からはみ出さないでトレースできるようになったら、丸をだんだん小さくしていきましょう。最初の丸の6分の1くらいの大きさまで小さくしていき、そのトレースができるようになったら、先に学習した十字形と組み合わせて、文字のトレースの学習に入りましょう。

 ひらがなの半分近くの文字は十字形を含んでいますが、それに加え、6割以上は丸(曲線も含め)を含んでいます。従って、十字形と丸が描ければ、ほとんどのひらがなは書けることになります。しかも、丸は多くの場合、縦線や横線、十字形とのつながりで書く場合が
ほとんどです。たとえば、「す」。十字形を描いてから丸を描き(回転)、下にすーっと伸ばします。

 ですから円描は、縦線、横線、十字形ほどには、ひとり描きの練習は必要とされません。もちろん、ひとり描きできるに越したことはありませんが。それよりも教室では、だ円や弧線を描く練習に進めることによっていろいろな形態の曲線が描けることようにと、書字プログラムを進めていきます。

 さあ、書字へのスタート!なぐり描き、縦線、横線、十字形、丸、曲線、ひとつひとつのプロセスに意味があります。楽しく、くり返しくり返し練習していきましょう。

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390.知的障害:書字への導入(十字形)

390.知的障害:書字への導入(十字形)
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 白い紙の上に縦線や横線が描けるようになったら、今度は縦線と横線を組み合わせて十字形を描きましょう。ひらがなの半数近くは、文字の中に十字形を含んでいます。なぐり描きを存分に行い、縦線描きや横線描きを十分に行ったように、十字形も楽しく楽に描けるようにくり返し練習しましょう。

 はじめに描いた横線が基軸となって、縦線の位置が決まります。十字形が描けるとは、まず十字形の形の把握ができて、その上でそれを再現できることです。十字形を描くなんてかんたん!と思われるでしょうが、書字へのつまずきを示すお子さんにはそこが難しいのです。十字形の横線は描けた、でも次の縦線の描き出しの位置がわからない。紙の上で迷子になってしまっているのです。

 十字形をどうにか描いているこんな段階で文字書きに進めてしまうと、本人は相当苦労をして文字を練習することになってしまいます。ともすると、書字嫌いになるおそれもあります。書字嫌いや漢字嫌いにさせないために、♪「よこたて、よこたて」といろいろな色のクレヨンで楽しくくり返し描きながら、十字形描に習熟させてあげましょう。

 この間、文字学習をしてはいけないということではありません。文字の読みを進めておくことは有効です。また、手を添えて、無理なく書かせることも有効です。無理さえさせなければ、お子さんの興味の向くままにどんどん進めてあげて全く構いません。

 しかし、なぞり書きや介助書きはできても、「ひとり書き」は難しいというケースがあるのです。空間の認知に困難を示すタイプのお子さんの場合です。本当に「ひとり書き」の機能を獲得させるためには、何もない空間に楽に十字形が描けるような、認知と巧緻性の機能を十分に保障していってあげることがとても大切なのです。

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389.知的障害をもつお子さんの書字への導入

389.知的障害をもつお子さんの書字への導入
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 今日は、関東地方も夕方から雪が降ってきました。さっと雪化粧した街路樹、街灯の中に白く舞う雪、車のフロントガラスに向かってくる雪、慣れないチェーンの音と振動を感じながら帰路につきました。やはり都心に住むものにとって、雪は日常の世界を一新する美しいものです。

 さて、お話は先週の続き、書字への導入です。なぐり描きをふんだんにくりかえして、紙面の中を自由に行き来できるようになったら、その中に中心を感じ、そこに縦線と横線を見出していくのが、次の一歩。つまり、書字への導入です。

 紙面の広さや限界(枠)を知ることと、中心を知ることは同時に行われます。枠と中心が定まって、はじめて「縦・横」いう方向性が得られます。縦線を1本描いてみましょう。介助でもいいのです。やさしく手を添えて、いっしょに描きましょう。

 そうしたら、その横に、その横に、と縦線を並べて描いていきましょう。紙の端まで行き着いたら、今度ははじめの縦線の反対側にも縦線を並べて描いていきましょう。反対側の紙の端に行き着くまで、描きつづけていきましょう。

 紙の中央がわかるようになってきたら、紙の中央に縦線を描きましょう。そうして、その縦線と紙の端の間に縦線をもう1本描きましょう。反対側にも同じように、さいしょの縦線と紙の端の間に縦線をもう1本描きましょう。

 クレヨンの色を替えて、それら3本の縦線と紙の両端の線の間に、「あいだに たーて」「あいだに たーて」と発声しながら、縦線を描いていきましょう。さらにクレヨンの色を替えて、それらのあいだに細かく、「あいだに たーて」「あいだに たーて」
と発声しながら、縦線を描いていきましょう。きれいな縞模様ができてきますね。これだけでも、りっぱなデザインです。

 同じように、横線でもやってみましょう。

 縦線を描いたり、横線を描いたり、書字へは程遠いとお感じかもしれません。焦る気持もわかりますが、このプロセス大切です。

 紙の上を自由に等分できてこそ、絵や文字のひとり描き(書き)へと成熟していくのです。デザインを楽しむような気楽な気持で、取り組んでいきましょう。

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388.知的障害をもつお子さんの文字学習

388.知的障害をもつお子さんの文字学習
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 きのう、このブログを訪れてくださった方の中にこんな関心がおありだったので、お答えしていきたいと思います。書字は、造形リトミックの教室でもっともお役に立てる課題のひとつです。「まだなぐり描きしかできないんです」とおっしゃって体験授業に来られて、その場で「たてせん」が描けるようなケースが少なくありません。

 まず、「なぐり描き」ができていることを評価しましょう。「なぐり描きしか」ではなく、「なぐり描きは、できるんです!」と肯定的に捉えていいのです。「なぐり描き」ができるというのは、

・クレヨンをしっかり持つことができているということです。
・紙に向かう姿勢の保持ができているということです。
・紙の中を自由に見渡すことができているということです(空間の把握)。
・同じく、紙の中を自由に見渡すことができているということです(視線の移動)。
・視線の移動に伴い、手を自由に動かすことができているということです(目と手の協応)。

 なぐり描きをしながら、お子さんはこのような数種類の機能のトレーニングを統合的に積み重ねていっているのです。お子さんが楽しんで自発的に行っているトレーニングですから、そのトレーニング効果は抜群です。なぐり描きを通してこれらの機能が十分に保障されることによって、書字にもスムーズに進んでいくことができます。

 来週は、なぐり描きから進めて書字への導入についてあらためて考えてみたいと思います。

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387.形のないものに言葉を

387.形のないものに言葉を
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 形のないもののひとつに、においがあります。きょう台所で手を洗ったら、いつもと違うハンドソープが置いてあったので、思わずそのにおいに惹かれました。いつもは無臭だったので、いっそうそのにおいに惹かれたのでしょう。

 においにスーッと引き込まれるとき、神経はそこに集中されます。いつも使わない脳を使っているようで、脳に良い刺激を与えることができたような満足感も持ちます。

 でも、それがどんなにおいなのか、説明しようとしても言葉を持ちません。ただ「いいにおい」と表現できるだけです。生徒さんが何か言おうとして言葉にならなかったり、作文を書こうとしても何て言ったらいいのか言葉が出てこなかったり、・・・そのときの生徒さんは、こんな気持ちなのかもしれません。

・言葉にして自らも確信を得たいのに、それができない。
・言葉にして誰かに伝えたいのにそれができない。
・言葉にして、誰かと共感したいのにそれができない。

 ワインのソムリエのような香りのプロは、香りについての固有の言葉を持っているそうです。香りを「ぬれた落ち葉」「秋の森」などに例えるのだそうです。コーヒーの味を評価するカッパーも、酸味を「アプリコット」「ブルーベリー」など多彩に表現するそうです
(読売新聞:2009年12月27日)。

 プロは訓練によって、香りや味について通常の人よりもその分野の脳の機能が高く、感覚が多種に分化しているのでしょう、そしてそれに伴う言葉をその数だけ有しているのでしょう。

 発達障害の生徒さんたちは、通常持ち合わせている感覚がうまく機能していないことがあります。ですから、当然それに伴う言葉を持ち合わせていない、ということがあります。それは、ちょうど私達がにおいや味に対する多種の感覚と言葉を持ち合わせていないのと重なるところがあります。

 ならば折に触れ、ひとつひとつの感覚に意識を向けられるように促し、それに伴う言葉を伝えていきましょう。私達は幼児期に基本的な感覚と言語を獲得していますが、それがまだ十分でないのなら、年齢に関係なく、生活の中の対象への感覚をていねいに育て、言葉を伝えていきましょう。

 教室でのテーマごとの学習は、いろいろな対象と向かい合うチャンスです。授業の後に、親御さんとお話をすると、親御さんも納得されてこう話してくださったそうです。今月のテーマ「カレー」の学習の後で、「そういえば、カレーの中に何が入っているなんて話したことないですね。ビーフなのか、ポークなのかか、チキンなのかなんてことは、もちろん。甘いのか、辛いのか、なんていうことも」。

 ただ一言で「カレーライス」と言ってしまうだけではなく、カレーの中にもいろいろな味やにおいがありますね。ちょっと気持ちにゆとりを持って、食卓で楽しく味わいながら、そんな感覚や言葉を育てていきましょう。

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386.カルタ、楽しんでますか?

386.カルタ、楽しんでますか?

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 今日食事をしていたレストランで、3、4才の女の子がお料理が届くまでの間カルタをしていました。「ここはお店だからね、カルタはお家でやるんだよ」というおじいちゃまの声かけにもがまんができず、テーブルいっぱいに広げてカルタが始まったのでした。

 お母さんが札を読み、女の子が一生懸命に絵札をさがします。横でおじいちゃまもヒントを与えながら応援しています。とてもほほえましい光景です。

 聞こえてくるのは、なにやら「ひらがなカルタ」のようです。正確な文は記憶していませんが、たとえばこんなふうです。
「あひるさん、ありとなかよく、あそんでる」「かささして、かめが からすとさんぽした」「たぬきが たくさん、たうえした」・・・のように、ひとつの音がつく3つの言葉で作られた文が読み札になっているのです。

 後ろのテーブルのご家族だったので、カルタの絵までは見えません。文を聞いて、どんな絵かなと想像しました。言葉は不思議なもので、聞くと意図しなくても頭の中には自ずと絵が描かれ、イメージが広がっているのです。長しかくの絵札の枠の中にカチッと想像の絵がはまっていきます。

 もし、実際に描いてみたら、想像しているのよりもはるかに詳細にイメージが具体化されるでしょう。
「どんなあひる?」「どっち向いているの」「どんな足?水かき?」「あり、どのくらいの大きさ?」「どんな顔?」「あそんでいる、どんなあそび?」「どこであそんでいるの?」「まわりの風景は?」「お天気は?」「色は?」・・・と。

 描くという作業は、言葉をより具体化することです。イメージの中では大まかであいまいだったものを詳細に一つずつ決定していきます。

 描くことは、言葉と映像を一つずつ対応させていきます。発達障害をもつお子さんの中には、言葉と映像がうまく結びつかないケースがあります。そのようなお子さんにとって、カルタは有効な教材となりますね。

 絵本にも同じような機能がありますが、カルタの方が絵も言葉も小さく短くまとまっているので、把握しやすいでしょう。限られた空間と限られた語数の中に一つの世界が描かれている、という面白みがあります。。

 発達障害を持つお子さん、カルタを楽しんでいらっしゃいますか?絵札の文字だけを見て、また絵札の一部だけを見て、カルタとりをしているのかもしれません。楽しめればまずはそれでいいのですが、できたら絵と言葉を結びつけてお話してあげましょう。

 あひるとありはバラバラにいるのではなく、「なかよく」「あそんでいる」のです。両者には、関係性があるのです。

「なかよく、あそんでいる」という言葉には、両者の関係性が語られているのですね。私達は、その言葉にその関係性をも自然に聞き取っているのです。発達障害を持つお子さんにとって、カルタがそんなことに気づいていくチャンスになるといいですね。

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385.否定語は使わない

385.否定語は使わない

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 電車の中でこんなことがありました。
 発達障害かと見受けられる成人の女性ともう高齢なお母さまの2人連れ。何かお話しているようでしたが、その女性にとって言われたくないことの発言がお母さまにあったようで、女性は少々気勢も荒くなっています。

 娘さんはお母さまに「言わないでよ」、「もう言わないでよ」とくり返し訴えています。お母さまとしては穏やかに話されているのですが、娘さんの違っていることについてはくり返し訂正をしています。訂正されるたびに、娘さんは気を荒げます。

 「ここはまず、”そうだね、そうだね”と聞いておいてあげればいいのですよ」、とお母さまに申し上げようかとも思いましたが、次の駅で降りて行かれました。降り立ったホームでも、まだその話は続いているようでした。

 発達障害の方に限られたことではありませんが、誰しも失敗したこと、負の状況、否定されることは受け容れがたいのです。でも、それが事実であれば受け容れ、越えていかねばなりません。負を受け容れることによって、成長があります。

 しかし、それが出来るのは精神的に確たるものを持ち、知的にも整理して考える力のある場合です。または、精神的にも知的にもよき援助者に恵まれた場合です。

 それが難しい場合、その力の度合によって対応を加減していくことが必要です。たとえ事実であっても、事実をそのまま突きつけただけではかえって事態を悪化させてしまう場合があります。

・たとえ事実であっても、相手が受け容れられる範囲で、受け容れさせることです。場合によっては、事実との相違が多少生じても。
・同じことの表現でも、否定語は避けることです。「~が出来ないから」を「~ができるように」というように。

ex.「この漢字が書けないから、練習しないと困るでしょ」と、「この漢字が書けるように、練習したら大丈夫よ」とでは、どちらが気持ちが軽く、明るく、練習する気持ちになるでしょう。いい気持ちで練習すれば、練習の成果も上がるんです!

・負の状況について、「でもこうすれば大丈夫!」という解決策を同時に提示してあげることです。

 発達障害の方はおうおうにして生真面目です。いい加減ではないので、うまくいかないと困るのです。人一倍、困るのです。「まあ、いいか」で片付けられないところがあります。
そんな気持ちを理解してあげることは、大切です。必要以上に困らせないように、こちらもあわてずに洋々と構えて、肯定語でていねいに対応してあげましょう。「大丈夫」というメッセージを常に発信してあげましょう。
 

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384.感動する主体に

384.感動する主体に

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 今朝の教室ブログ「雪だるま作れるかな」、もうお読みになりましたか?
 一人ひとりの講師たちは、いかに生徒さんにテーマへの興味や関心を持たせ、感覚を働かさせ、気持ちを動かさせるか、ということに熱心です。

 造形リトミックの目的は、だれもが「描けるように・作れるようになること」にあります。それを認知の点から、技術の点から、また表現の点から統合的に指導にあたります。しかし、それと同時にもうひとつの大切な目的があります。それは、テーマとなっている対象に対して、自らの感覚が働き、自らの気持ちが動くような主体となり得るように育てることです。

 1月は、「雪だるま」のほかに「野菜」をテーマにしました。野菜を描き、野菜を作ります。各教室ではテーマに関してそれぞれに、生徒さんへの工夫が行われています。

・パックに入った本物のににんじんが置いてある教室
・大根やにんじんの芽が出るようすを見させるように水栽培をしている教室
・画用紙工作の野菜を竹かごに入れてリアルにディスプレイしてある教室
・画用紙工作の野菜をスーパーの袋に入れて、買った野菜のようにして持ち帰らせている教室

 かつて、軸を切ったしいたけを黒い画用紙の上に伏せて一晩置き、胞子が放射状に広がる様子を見せたこともありました。

 各教室の工夫を目の当たりにすると、こちらもあっと驚いたり、いっしょに楽しんだり、感心したりします。親御さんにしても同様でしょう。生徒さんにとっては、もちろんです。実は、講師自身もそれを楽しんでいるのです。

 感覚を育て、感動する心を育てる教育は、知識を得られるだけでなく、生き方自体を豊かにします。教室のテーマを通して、生徒さんも親御さんも楽しみ喜び、教室のテーマがご家庭の中にまで浸透することが出来れば何よりです。

 
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383.国語の読解学習~(3)

383.国語の読解学習~(3)

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 文章読解の学習で、気持ちを問われている問題に答えることが難しいという報告や相談をよく耳にします。

 テキストの書き手や登場人物の気持ちを推測する、また事態や状況から彼らの気持ちを判断する、そこには、文意を理解するという言語理解の問題と、気持ちや他者との共感性が育っているかという情緒の発達の問題の2つが関与しています。

 発達障害をもつ生徒さんの場合、多くはその両方の問題を抱えています。ですから、この両方の問題にひとつずつアプローチしていくことが必要です。

 まず、文意の理解についてはここ2回ほどお話させていただいたように、ひと段落ずつていねいに、読んだり書いたり、聞いたり、見ないで言ってみたり、文を再構成してみたり、とくり返しくり返し文に馴染むような学習を積み重ねていきましょう。

 そして、気持ちの発達を促し、共感性を育むことについては、日々の生活の中でことに触れ折に触れ言語を交えて気持ちや共感性を育てていくことです。

 発達障害をもつお子さんは幼児期に、人との関係性が希薄であったり、言語発達が十分でなかったり、ものや人への関心の幅が狭かったり、またそこに偏りがあったり・・・、といういろいろな理由から、感情が十分に育っていない、それに伴って感情に関する言語が獲得できていない、ということがあります。

 年齢に関係なく、気づいたときから少し意識して感情を育てていってあげることです。お子さんに伝わるように、ていねいに話しかけましょう。ただし、しつこくならないように。

冬の朝・・・
「今日も寒いけど、気持ちがいいわね。ほら、お日さま出てきたわよ」(感覚・気分)
「温かいお味噌汁(スープ)おいしい、あったまるわね。ぽかぽかしてきたわね」(感覚・気分)

テレビのニュースを一緒に見ながら・・・
「すごい雪ね。寒そう、東北の人たちは、雪で大変ね」(共感)
「湖に白鳥が来たんだって、わぁ、たくさん来たのね、白鳥って、きれいねぇ・・・」(感動)

学校の話・・・
「マラソン、がんばったのね。走ったら、暑くなった?最初は寒くて”やだなー”って思うことあるけど、走ったあとは気持ちいいよね!○○くんもがんばった?」(分析・推測)
「今日の給食は?いよかん?そう、すっぱかったの。でも、ちょっとあまかった?あまずっぱーい!!」(味覚:講師の報告より)

夕食(カレーライス)・・・
「○○くんが手伝ってくれたから、助かった。ちょっと辛口でおいしいね。きっと、お父さんが喜ぶね!」(味覚・推測)
「学校でもカレー作ったでしょ。みんなで分担してできた?そう、ひとりだけできなかったら、かわいそうだもんね!」(配慮・推測)

・・・というように、目に見えないものや形になっていないものを表現することを生活の中でお手本として示していってあげましょう。

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382.国語の読解学習~(2)

382.国語の読解学習~(2)

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 文章読解の学習においては、文意の把握が確実に出来ているかどうか、一段落ごとにていねいにおさえていきましょう。学校の学習についていくためにはある程度スピードを上げて学習を行うことも必要となりますが、本当の理解力を養うためには、きのうお話ししたような方法で一段落ごとにていねいに学習しましょう。教室では、逐一文意を問うようなオリジナルのテキストで、文章の理解力を育む学習を積み重ねていきます。

 さて、「理由」を問われている問題への対応の仕方について:
 「~から」「~ので」などの理由や原因を表す接続助詞が感覚的に把握できるように学習しましょう。

・まずは、その接続助詞を含む文を取り出して、その文だけを何度も読んでみましょう。
・つぎにその文を何度か書いてみましょう。
・さらに、その接続助詞を用いて日常的な短文を一緒に作って、読んだり書いたり、見ないで言ってみたりしてみましょう。

 発達障害をもつお子さんの場合、言葉を感覚的に把握する力が弱いことがあります。ですから、日常場面を表現するような短文を通して、経験的にその文意が把握できるようにしましょう。

「宿題がたくさん出たから、ごはんの前にやってしまおう」
「あしたは体育の授業があるから、体操服を持って行きます」
「ピーマンはにがいので、苦手です」
「たくさん走ったので、汗が出ました」
「もっと食べたかったけれど、がまんしました」

 少し生活を振り返るだけでも、たくさんの文を作れます。「こんなのどう?」と楽しみながら短文作りをしましょう。楽しめれば、語彙の意味や感覚は自ずと獲得されます。理由や原因を表す接続助詞が感覚的に把握できるようになれば、理由を問われる問題は、楽しみになるくらいに理解が進むことでしょう。

「”ので”や”から”が出てきたら理由よ!」と機械的に教えることもテストの対策としては有用ですが、やはり日常生活と重ねて、語彙からの感覚を養うことを少しずつでも積み重ねていくことは肝要です。やはり、言葉は理解するというより育むものです。

 明日お話したい「気持ちの理解」についても同様のことが言えます。

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