332.物知りになりたい

332.物知りになりたい
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 少し前のことですが、生徒さんの中の一人の女の子が七夕の短冊にこう書きました、「物知りになりたい」。「ふーん、そうなの・・・!」と、少し異なる一面を見たような思いがしました。

 勉強熱心で、勉強好きの生徒さんですが、短冊に一番に書くほどとは思っていませんでした。でも改めて、「うーん、そうなのね!」と思い直し、これからの学習にこちらも気持ちを新たにしたのを覚えています。しかも、「物知り」という表現がいいですね!

 今朝の教室ブログの「鳥かこまれる?!」もとっても面白かったですね。講師が3つの観点にまとめていました、

・知りたいという気持ちを持つこと
・質問しようという気持ちになること
・理解の喜びを感じること

 「知りたい」とか「興味を持つ」ということは、気持ちが外に向いている証拠です。新しいものを求めている証拠でもあります。気持ちが安定していてこそ可能です。

 質問しようとすること、相手への安心感や信頼があってこそ可能なことです。講師とも学習のいい関係が作られているのでしょう。教室に限らず、ご家庭でも学校でも安心して聞ける環境があるのでしょう。これは、人との信頼関係にもつながります。学習的な質問だけでなく、何かあったときに聞ける環境、聞こう、話そうという気持ちになれることは、将来的にもとても有用なことです。

 理解の喜びを感じること、つまり「分かる」喜びや「知る」喜びを心得た生徒さんには、「学習力」がますます育ちます。さらに「知りたい」・「質問する」「調べる」・「分かった」「満足」「うれしい!」「面白い!」→「知りたい」・・・
といういい循環が生まれ、ますます「学習力」が高まります。そしてそれが、豊かさへとつながっていきます。対象(もの)への豊かさ、人との豊かさ、生き方の豊かさ・・・。

 時々この場でもお話しする「新しい生活のための勉強」がしたい生徒さん、先ほどの「物知りになりたい」生徒さん、新しい課題(「天気」「気温」「月」「お金」・・・)にどんどん取り組む生徒さん、どうにか答えようと知恵と言葉の限りを尽くす生徒さん・・・こう眺めてみると、学究肌の生徒さんが少なくありません。

 学習に追われるのではなく、楽しみながら味わいながら学習をしていくと、意図しなくとも「学習好き」に成長していくようです。それが、それぞれの豊かな生活に結びつけば、何よりですね。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

331.生活の学習

331.生活の学習
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 きのうの「安心して学習を」のつづきです。それは日常の数の学習でありながら、生活の学習としての意味もあります。

 衣類の整理整頓、洗濯、クリーニング、清潔、というような課題に積極的に関心を持ち、すすんで行動できるようになれば・・・という思いももって学習の課題としています。

 と言っても、「脱いだもの、ちゃんと片付けてる?」「いつもきれいなもの着てる?」「自分のものは、自分で洗濯しようね」と規範的なことを言うのではありません。「クリーニングやさんか、・・・お母さんが出してるよ」「お父さんの、ワイシャツ。ズボンもね」、とまずは関心を持ってくれればいいのです。

 そして、少しお家での様子を聞きます。そして、必要あれば少し関心を持って関わることができるように、生徒さん自身、または親御さんに提案します。

・自分専用のハンガーを用意する
・ことに女の子だったら、マスコットを下げるなどハンガーに工夫をする
・クリーニングを出す、受け取る、のお手伝いをする
・クリーニングの預かり票をテープで貼っておいて、受け取りに行く日をチェックする係りを担当する
・家庭内での洗濯に関心を向けてもいいですね。
 ※たたむことより、洗濯機の操作のほうが関心を持たせやすいでしょう。

 このように、あらゆる機会を利用して、生き生きと積極的に生活に取り組むきっかけ作りを心がけていきます。そのきっかけ作りは生徒さん一人ひとり異なります。しかし、誰に何をと取り立てて考えるのではありません。生徒さんとお話をしたり、親御さんから家庭や学校でのようすを伺うことによって自ずと浮かんでくるのです。

 多くの生徒さんにとって、算数も国語も学習のほとんど全ては生活のためのものです。ですから、生徒さんが生きる上でその学習がどのような意味を持っているかを意識して学習を進めることはとても大切です。必ずしも「役に立つ」「必要だから」ということが目的でなくてもいいのです。「楽しいから」「好きだから」だけでもいいのです。ただ、教科書を追うだけの学習にはならないようにしていきましょう。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

nan

330.安心して学習を

330.安心して学習を
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 算数の学習、お金の学習、半額の学習、生活の学習を兼ねて、クリーニング店の半額セールチラシを使いました。チラシに、定価と特価が分かりやすく表示されていますから、まさに一目瞭然です。「半額だといくら?」と問われても、最初から答が出ているようなものです。生徒さんも安心して学習に取り組めます。

 一応、割り算の式を立てて計算機で半額の値段を求める。計算した答とチラシの特価を見比べて、同額になっていることを確認する。当たり前でも、「おんなじだ!合ってた!」というときはうれしいものです。

 安心して学習できることは何より大事です。安心していれば、
・落ち着いて取り組めます
・イライラしないで取り組めます
・楽しんで取り組めます
・何より頭がよく働きます
・次の意欲へとつながります

 しかもちらしは、少しでも多くのお客さんを集めようと、その内容やデザインに力を結集していますから、
・パッと見て、気持ちが引かれる
・雰囲気が伝わる(クリーニングなら清潔感!)
・目的・主張がすぐ分かる(たとえば、半額!)
・内容が分かりやすい(金額の比較)
・言葉が明確(単語または単文表現)

 この問題、文章題だと「洋服をクリーニングに出します。クリーニング店は今ちょうど半額セールです。上着のクリーニング料金の定価は380円です。半額だといくらになるでしょう?」となりますが、文章題を見ただけで頭のスイッチを切りそうになる生徒さんも時にはいます。

「洋服をクリーニング屋さんに出すよ」・・・上着、ズボン、スカート、セーター、コートなどの文字が立て一列に並んでいるのが目に入って、洋服のイメージがわきます。
「今、半額よ」・・・「半額」の大きな文字が赤字に白抜きであるのを示します。
「上着、定価は380円」・・・明確に表示されているので、見れば納得です。
「半額だと?」と言いながら特価の表示を指で示します・・・定価、特価、半額、の仕組みが何となく分かってきます。

 そして、割り算の式の中に数字を当てはめさせます。割り算をしながら割り算の意味を把握させていくのです。

 文章題を読ませて「じゃあ、何算?」と尋ねても、なかなか分かるものではありません。安心した状況で、効果的な教材(時にチラシ)を使って学習に向かう気持ちを引き出し、自ずと考える(頭を使う)ように働きかけます。

 楽しみながら、分かるように働きかけます。逆に言えば、分かるから楽しいのです。先生が面白いことを言うから、楽しいのではありません。

 小学校の5年生で教室に入られた生徒さんがいらっしゃいます。絵画や工作のときは生き生きとしていても、いざ算数となると・・・、わざとではなく本当に眠ってしまうのだそうです。これは、「わがまま」で片付けられる問題ではありません。分からないことを「がんばりなさい。がんばりばさい」で押されてきてしまうと、体が防御し、拒否してしまうのです。

 でもあきらめないで、楽しみながら、少しずつ、もう一度学習していきましょう。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

329.言葉を紡ぐ

329.言葉を紡ぐ
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 日常の面白い言葉にまた出会いました。今度は生徒さんから出てきた言葉です。
「ポワン、ポワン、フワ、フワ」

「クラゲがたくさんいた!」
「そう、クラゲはなに色?」
「クラゲは、とうめい!」

「クラゲは、どんな感じだった?」
「ポワン、ポワン、フワ、フワ」
「そう、ポワン、ポワン、フワ、フワ、・・・なるほど、ね」

「ポワン、ポワン、フワ、フワ」は、水族館で見たクラゲの形容です。自分から紡ぎだした言葉、楽しいですね。こんな言葉を紡ぎだす土壌は、どのように育てられたのでしょうか。

 ひとつは、小さいときから絵本を通してたくさんの言葉に触れたきたことにあるのかもしれません。教室の月ごとのテーマに即して、親御さんはよくご自宅にある絵本を持ってきてくださいました。絵を描くことに加え、絵本を通して言葉の世界を広げてきました。ご本人も兄弟も大きくなって要らなくなった本は教室に下さるほど、ご家庭にはたくさんの本の環境があるのでしょう。
 

 もう一つは、何につけても無理なく楽しく取り組んできたことにあるかもしれません。学校の授業や行事にも、地域の生活にも、もちろんご家庭での生活にも。教室でも、絵を描くことも工作をすることも、国語の勉強も算数の勉強も、どれも区別なく楽しんでしまうようなところがあります。これも、才能ですね!

 仕事に就きながらも、毎日(月~金)の日記と決めた6枚のワークは必ずやってきます。でも時に、宿題の計算問題にまるをつけてあげようとすると、「計算機でやっちゃった・・・ふふふ」と笑っています。こちらも「えーっ、あらーっ」と言いながらも、「でも、宿題できたね」と大きなまるをあげます。お陰で、3桁でも4桁でも数の読みは得意です。計算機の操作もとても早いのです。思えば私たちだって、暗算で出来るもの意外は、計算機を使っています。携帯電話にも、計算機はついているのですから。

 無理なく、楽しく、でもやるべきことはきちんと行い、本や、さまざまな場での人との交わりをもって豊かに生活していく、そんなところから言葉は紡ぎだされてくるのかもしれませんね。

 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

327.国語の教科書(つづき)

327.国語の教科書(つづき)
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 国語の教科書を毎日読むことのおすすめ。その目的は、
1)学校で勉強している箇所の内容を知ること
2)書き言葉の流れに慣れること

 今日はその3つめ、
3)新しい語彙に触れていくこと、新しい世界に出会うこと、新しいことを知ること

 教科書では詩や物語や説明文、表現や発表などを通して、いろいろなジャンルの言葉に触れていくことができます。

 特に物語では、舞台が都会であったり、農村、漁村、山村であったり、また外国であったり。時代的にも現代であったり、民話の世界であったり、少し前の時代の話であったり。場面も学校であったり、家庭であったり、地域であったり、また戦争中のことであったり。それぞれの舞台、それぞれの時代、それぞれの場面での言葉があります。

 もちろん分からない言葉もあるでしょう。でも雰囲気や情景を感じることは出来るでしょう。挿絵を見て、何となくでもいいのです。親御さんがお子さんの理解できる言葉でやさしく説明してあげてもいいですね。でも、説明しすぎないことです。たとえ分からなくても、触れるだけでいいのですから。それでも、少しずつ新しい語彙や、その語の意味するものがお子さんの中には蓄積されていきます。

 しかも、新しいものに触れていくこと自体が、脳への刺激にもなっています。新しい語彙に触れていくことによって、言葉に対する反応や言葉を情報として得る力や、感じ取る力が敏感になっていくことでしょう。

 また説明文では、大人でも感動をもってはじめて知るようなことに出会います。
 たとえば、小2の教科書の「たんぽぽのちえ」。
 「・・・花がしぼむと、たんぽぽの花のじくは、ぐったりとじめんにたおれてしまいます。けれども、かれてしまったのではありません。花とじくを休ませて、たねにたくさんのえいようをおくっているのです。・・・たねがふとり、わた毛ができると、たんぽぽはたおれていたじくをぐうっとおこし、せいいっぱいせいをたかくして、よく晴れて風のある日にはわた毛のらっかさんをとおくまでとばすのです・・・」(要約「たんぽぽのちえ」)

 たんぽぽのちえをお子さんと一緒に味わえたらすばらしいですね。その時季に、道で見かけるたんぽぽに対する思いも変わってくることでしょう。

 教科書では続いて、「サンゴの海の生きものたち」というまたすばらしい説明文が上巻のさいごにあります。詳しくは割愛しますが、「イソギンチャク」「クマノミ」「ホンソメワケベラ」、教科書にもすばらしい写真がありますし、図鑑の索引から調べても学習が広がります。水族館までいけば、最高ですね。

 
造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

326.国語の教科書を読みましょう

326.国語の教科書を読みましょう
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 学校の授業に合わせた学習をしていくことを希望されるのでしたら、国語の教科書を毎日読むことをおすすめします。それは、少なくとも学校で何を学習しているかをお子さんが知るためです。

 物語だったら、題名と登場人物を知っておけば、授業中に耳に入ってくる言葉も増えるでしょう。説明文についても、題名と例として書かれていることを知っておけば、これもまた授業に参加しやすくなるでしょう。

 月の初めには学校から学習の予定表が配られると思いますので、一足すすめて前もって読んでおかれれば効果的ですね。つまり、予習型です。

 教科書を読むことをおすすめする理由は他にもあります。
 ひとつは、書き言葉の流れに耳を馴染ませることです。話し言葉を獲得するのに誰しも文法の学習から始めたのではないように、書き言葉においても、教科書を見日読むことによって、言葉の流れを体得するような感覚で読み慣れ、聞きなれていきましょう。

 国語のワークに接続詞を問う問題が時々あります。「だから」なのか「しかし」なのか。ひとつのフレーズとして
流れを体得できるようになってくると、それを順説か逆説かを文法的に考えるようなやり方ではなく、感覚的に二つの接続詞を使い分けられるようになります。

 私達は言葉の流れと共に、やはり気持ちを動かしているのです。
「雨が降った。だから・・・」まで読むと、穏やかな気持ちで次に続く言葉を予測しています。しかし、
「雨が降った。しかし・・・」となると、いささか不穏な「えっ」という気持ちになります。

 接続詞だけでなく、他の語の流れについても同様です。言葉にそって気持ちを動かし、先を予測しながら読んでいっているのです。予測どおりであったり、予測を裏切られたり。慣れてくれば、その変化を楽しめるようにさえなるのです。書き言葉独特のフレーズの流れを感得、体得していきましょう。(つづく)

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

325.たくさんのSくんへ

325.たくさんのSくんへ

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 きのうのSくんのようなお子さんがたくさんいらっしゃると思います。Sくんのようなお子さん、つまりこれからの学習への向かわせ方によって、学習が好きになれそうなお子さんです。

 学習の導入で初めに躓いてしまうと、学習に苦手意識を持たせてしまうことがあります。それをそのまま押し切って学習を続けさせたり、さらに頑張らせてエスカレートさせてしまうと、なかなか回復しにくい”学習嫌い”になってしまいます。

 でも、絵や工作など何でもいいのです、好きなもので机に向かわせ、それに一緒に取り組んであげると、もう一度学習に向かうきっかけを作ってあげることが出来ます。

 その好きなものに取り組んでいるときに、お母さんならお母さんといい関係を作っていくことが大切です。「お母さんと、一緒に何かをするのは楽しいな」という、関係です。ですから、「早く勉強の方に・・・」とあせらずに、お母さんも心から一緒にお子さんと楽しみましょう。

 2年生ならば、これからのほぼ半年の取り組み方によっては、3年生からは学校の学習のペースに少しずつ合わせていくことも不可能ではありません。普通学級を希望していながら、少々勉強嫌いで困っている方、そろそろ勉強をあきらめ気味の方、ここでもう一度学習に取り組みなおしましょう。

 かといって、来春に向かって猛勉強をさせようというわけではありません。まず、好きなことから机に向かわせます。それから、ゆっくり、ていねいに、出来ているところから学習にとりくんでいきましょう、ということです。

 親御さんももう一度目標をはっきりと意識なさり、1日に短時間でもいいですから規則正しくお子さんとの学習の時間を持ちましょう。そして、叱らずに楽しく学習を進めていくことです。

 ”ゆっくり、ていねいに”、春に向かっていい半年が過ごせるといいですね。

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

nan

324.小学校2年生(普通学級)のSくんへ

324.小学校2年生(普通学級)のSくんへ

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 お教室に来られて数ヶ月。少々お勉強には苦手意識を持っているようですが、絵画や工作には相当な集中力。独創性もあって、いつも面白い作品が出来るんです、と担当の先生からも聞いています。玄関に飾ってあった粘土工作の昆虫は、Sくんの作品ですか?重量感もあって、迫力ですね!

 そんなSくんには、お勉強も楽しくがんばれる可能性がとっても大きいと思います。Sくんの作品をとってもほめてくれるご両親と一緒に取り組めば、お勉強もきっと好きになることでしょう。

 国語の教科書を使って、読むことと書くこと。算数の足し算と引き算。20まで数えることが出来ているのですから、足し算はいくつの足し算だってできます。引き算だって、10の中の引き算まで出来ていれば、あと補数の勉強をすれば、いくつの引き算だって出来ます。でも、まずは2桁の足し算と引き算を「かんたん!」と思えるくらい練習しちゃいましょう。

 「補数ってなに?!」・・・「補数は合わせて10になる数」です。数カードを見ながら、歌で覚えちゃいましょう。

 歌と言えば、かけ算も歌で覚えましょう。教室では、パソコンで「かけ算ってなにか」を先生と目で見て、感得・体得のトレーニングを毎週していきましょう。歌で覚えた九九とパソコンの映像がSくんの中で合致すれば、かけ算の文章題だって、「あっ、そうだ!」ってわかるようになりますよ。

 Sくんが3年生になるまでの5ヶ月間、こんな目標をもって「お勉強大好き計画」を立てて取り組んでいきましょう。ご両親と、大好きなお教室の先生と、いっしょに取り組んでいけばだいじょうぶ!

 これからクリスマスがきて、お正月が来るのに来年の春の話なんて早すぎる、と思うかもしれませんね。でも、私はいつも少し先を見ています。桜が咲くころのSくんのことを想像するとわくわくしてきます。

 絵画や工作の力がお勉強の力にも変わっていった先輩がたくさんいますよ!Sくんも「お勉強大好き計画」、今週からスタートしましょう!

 
造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

323.日常の言語~”しゃおっ”

323.日常の言語~”しゃおっ”

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 ”しゃおっ”って、何のことでしょう。これは、揚げたてのえびフライを口の中に入れたときの音。生徒さんと、国語の教科書で読みました(光村図書中2)。三浦哲郎作「盆土産」に、こんな表現があったのです。三浦哲郎1931年生まれ、青森県出身の作家です。
 
 このお話の舞台も青森県。素朴な家族のお話です。時は、昭和30年代くらいでしょうか。都会に働きに行っている父親(父っちゃ)が盆に休暇が取れて急に帰ってくることになり、そのことを知らせる便りに「土産にえびフライを買って帰る」と
あったのです。「えびフライ」と聞いても、話の中心人物である少年(おら)もその姉(あんね)も祖母(婆っちゃ)も、またその友達も、「えびフライ」がどんなものなのか見当がつきません。

 見当がつかないだけに気になって仕方なく、つい「えんびフライ」と口に出てしまうほどです。分からないけど、「とびきりうまいものにはにちがいない」と、父の帰りを心待ちにしていました。そして父親が帰ってえびフライ揚げてくれた、
そのえびフライを食べたときの音が、”しゃおっ”なのです。

 「えびフライ」という言葉だけ聞いて、そのものを知らない。そんな未知のものに対する想像力、期待、気持ちの高まりが実によく表現されているお話です。今の私達は、エビフライがどんなものだか知っています。しかし、このお話を読みながら、この少年といっしょに、「えびフライ」ってどんなものだろうかというように、想像を働かせていくのです。「とびきりうまいものにはにちがいない」というこの確信と共に。

 エビフライのにおい、大きさ、長さ、太さ、ころもの具合、色、揚げたての熱々、油で光るエビの尾・・・、この想像のプロセスの終点が、この”しゃおっ”です。これまでの想像のすべてが、この”しゃおっ”に集約されています。未知だったえびフライが口の中に入ったときの食感です。読み手の口の中にも、”しゃおっ”という食感が広がります。あのにおい、旨みを追体験します。

 夕方のお腹の空いている時刻に、このお話はたまりませんね。「あー、エビフライ、食べたい!」こんな気持ちでいっぱいになります。(実際、この間に2度、エビフライ、食べましたけど。すごい、誘惑です。)

 言葉の力はすごいですね。言葉の力を生徒さんと共感、共有していきたいと思います。発達障害の生徒さんは、言葉の感性が乏しかったり、言葉の意味の把握が難しかったりということがありますが、私達の言葉の感性はどうでしょうか。

 雑事に追われる日常では、私達の言葉も単に道具としての言葉、記号としての言葉になってしまっているようなことはないでしょうか。

 気持ちの動きや揺れ、感性や感動、魂が伴うような言葉を私達が発し、投げかけることによって、生徒さん、お子さんの言葉も本来的なものとして育まれていくことでしょう。日常のほんの束の間でも、そんな言葉のやり取りを持ちたいものですね。

 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと

322.日常の言語~

322.日常の言語~

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

(つづき)「百聞は一見にしかず」、日常で実際のものや場に直面して「言葉」を経験するメリットについてきのうお話ししました。ちょうどその日、ひとりの講師が言っていました、

・・・国語のテキストで「いろいろな鉄道」について読んでいるので、そこに出てくる路面電車や地下鉄、貨物列車を「実際に見に行ってください」って、みんなに言っているんです。するとどの親御さんも、「はい、行ってきます!」と答えてくれるんです!・・・

 いいですね。そういうことなんです。テキストで、
「路面電車は、道路の上の線路を走っています」と読んでも、リアルに読み取り、感じ取れる生徒さんは少ないでしょう。
「路面電車は、自動車のように信号で止ります」、「本当だ!」とテキストの言葉を実際に体験してきてください。

 電車は電車でも一両の電車、路面電車の速度、振動、音、匂い、感触、形態、デザイン、道路の上の線路・・・さまざまな要素の中から、その生徒さんなりに親御さんと言葉を交わしながら何かをぜひ経験してきてもらいたいものです。

・・・ホームで貨物列車が通過したら、「これが、貨物列車!」と”その場で”教えてあげてください!とも言ったんです・・・

 そうですね、まさにその場で教えてあげてください。「金太郎」「桃太郎」の名にふさわしく、先頭の電気機関車が十何両もの貨車を力強く引っ張っていきます。私たちも、圧倒されます。その感動を伴って「これが、貨物列車!」、と教えてあげてください。

 さて、日常における言語トレーニングのメリットは、こんなところに求められます、として
・日常はまさに実際の場であるので、具体的なものや状況と言語が直結しています。
・日常はまさに実際の場であるので、話し手にも聞き手にも感情が伴います、までお話してきました。

最後にその3つめです。
・日常はまさに実際の場であるので、ダイナミックな言葉の働きを感じ取ることができます。

 先の電車たちのように、対象のダイナミックさがまずあります。それに加え、日常にはその場にいる人たちの関わりのダイナミックさがあります。言葉のやり取りの中に身をおいて、雰囲気や臨場感を味わい、吸収することができます。

 言語教育にとっては、幼稚園や保育園、学校での統合教育はお勧めです。言葉のダイナミズムがあるからです。しかも子どもの声は直截的で、表現はストレートで端的です。

 あちらからもこちらからも元気な声、あちらではけんか、こちらでは泣いている声、先生の声と友達の声、先生の言葉がけに対する子ども達の声・・・。たとえ自分からの言葉がまだ出ていなくても、クラスでの全体の言葉の流れが、言葉を生み出し発しさせる”感情の動き”を起こさせます。

「今日のプールは中止でーす」「えー!」「どうしてー?」
「雨が降ってきたからね」「やだー」「はいりたーい」・・・というような、ごく自然な言葉のやり取り。そんな中で気持ちは、この全体の言葉の波に乗るように動き出します。この気持ちの動きは、まだ言語にはならずとも言葉の発芽と言っていいものです。

 教室やご家庭の「学習の場での言葉」と「日常での言葉のやりとり」、言語トレーニングとして何れにもそれぞれに貴重な要素があります。ですから、何れの場も大切にしていきましょう。両者に共通に言えることは、言葉とは、人と人との関わりにおいてじっくりていねいに「育てていくもの」だと言うことです。
 

造形リトミック教育研究所
>>ホームページ http://www.zoukei-rythmique.jp/
>>お問い合せメール 

なかのひと