341.ほめる

341.ほめる
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 ほめる、心からほめるって、むずかしいことかもしれませんね。心からほめなくては、相手に伝わりません。相手に伝わってこそ、ほめたことになります。

 大げさにほめただけでは、かえって空回りします。
 社交的なほめ上手もあります。それは、大人には伝わっても子どもには伝わりません。

 こちらが用意したプリントを全部やり終えた!「よく出来ました!」「すごいね!」「がんばったね!」これも、まあ、ほめことばです。全部やり終えることが目標である生徒さんにとっては、それは「すごい!」と評価すべきことでしょう。

 しかし、やり終えることは一応出来ている生徒さんであれば、取り立ててほめることではありません。ほめすぎるとかえって空回りします。やらせる側が全部やらせることが出来たことに安心し、自分をほめているようなものです。

 講師からの「生徒さんがやってくれました」「描いてくれました」「答えてくれました」・・・というような報告や記述は、私は改めるように指導しています。学習は、「やらせる」のでもなければ、「やってもらう」のでもありません。講師が舵取りをしながらも、共に学習に取り組んでいくのです。

 もちろん楽しく取り組んでいきます。しかし、楽しみながらも講師は真けんです。生徒さんがどこでつまずいているのか、こうすれば理解が進むか、ああすれば理解が進むか、もう少し繰り返すべきか、ここは引くべきか、常に感じながら、考えています。

 ですから、生徒さんの小さな変化にも気づき、本当に小さなことに対しても心からほめられます。なぜ、・・・それはこちらも本当にうれしいからです。生徒さんが自分でも手ごたえを感じたポイントを逃さずにほめるのです。そのためには、こちらも生徒さんと共に頭と心を動かしていなくてはなりません。

 大変な労力かと思われるかもしれません。でも講師業としては、そこが楽しいのです。

造形リトミック教育研究所
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なかのひと

37.心の軸(1)自分がほれ込んだものに懸ける


37.心の軸(1)自分がほれ込んだものに懸ける
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 一人ひとりの子どもの周囲には親御さんをはじめ、学校の先生、職場の指導者、療育機関の医師や指導者、生活の支援者などさまざまな人たちがいます。

 私は知的障害・発達障害の療育機関に携わる者として、今週はその理想的なあり方について考えてみたいと思います。

 これまで理想的な指導者を内に外に探し求め、何人かの方に出会えました。その結果、理想的な方たちの有する共通点に気がつきました。それは、精神面に軸となる確かなものを持っている、ということでした。

 療育のプロセスには良いときも厳しいときもありますが、それを乗り越えて継続できるには軸となる精神性をもっていることがとても大切です。それは使命感であったり、探求心であったり、メソッドや人との出会いであったり・・・・・さまざまです。

 中途半端だったり疑心暗鬼で行っている取り組みは、十分な力を発揮できません。療育そのものやひとつの教育法にほれ込んで打ち込んでいる方たちは、一本筋の通ったしっかりした療育を行っておられます。

 これは、単に年齢の問題ではありません。先輩方だけではなく、若い方にもすばらしい療育者はおられます。

 療育も人生と同様、山あり谷ありです。晴れの日もあれば曇りの日もあり、雨の日や雪の日もあります。途中で目標を見失わずにやり遂げるには、「ほれ込む」ということが不可欠であると私は思います。本物を目指すには、思い入れや、こだわりが大切。本当に自分が気に入ったもの、良いと思ったもの、ほれ込んだものなら、多少困難があってもチャレンジし続けることができます。

 一度決めたら、多少の困難があっても楽しみながらやり抜いていきましょう。きっと大きな収穫があるでしょう。これは、療育に携わろうとするこれからの若い方たちに望むことでもあります。

 「理想的な指導者」のポイント
 ・プラス思考 (逆:マイナス思考)
 ・ほれこんで主体的に取り組む (逆:教育法に一貫性がない、中途半端)
 ・感謝の気持ちがある(逆:言い訳やグチばかり)
 ・まじめで努力家 (逆:要領だけでこなす、お調子者)
 ・壁にチャレンジする勇気 (逆:初めから諦めている)
 ・豊かな自分の世界をもっている (逆:無趣味で感動がない)

 ・・・しかしいつも120%でやりきる人もいますが、疲れたなと思ったときは、一休み。気分転換はとても大切です。

* 写真は、観覧車の各ゴンドラ(釣りかご)を支えている支柱です。この一本
  にすべてを託してのっています・・・大丈夫? 大丈夫!!

造形リトミック教育研究所

知的障害・発達障害の療育に携わる指導者、
理想的な指導者について今週は考えてみたいと思います。

一人ひとりの子どもの周囲には親御さんをはじめ、学校の先生、職場の指導者、療育機関の医師や指導者、
生活の支援者などさまざまな人たちがいます。

その中で、療育機関の指導者について。
私は、次のように考えます。

これまで理想的な指導者を内に外に探し求め、何人かの方に出会えました。

その結果、理想的な方たちの有するいくつかの共通点に気がつきました。
 それは、精神面に軸となる確かなものを持っている、ということでした。
療育のプロセスには良いとき厳しいときがありますが、それを乗り越えて継続できるには
軸となる精神性をもっていることがとても大切です。それは使命感であったり、
探求心であったり、メソッドや人との出会いであったり・・・・・さまざまです。

 中途半端だったり疑心暗鬼で行っている取り組みは、十分な力を発揮できません。
療育そのものやひとつの教育法にほれ込んで打ち込んでいる方たちは、一本筋の通ったしっかりした療育を
行っておられます。
 これは、単に年齢の問題ではありません。先輩方だけではなく、若い方にもすばらしい療育者はおられます。

 療育も人生と同様、山あり谷ありです。晴れの日もあれば曇りの日のあり、雨の日や雪の日もあります。
途中で目標を見失わずにやり遂げるには、「ほれ込む」ということが不可欠であると私は思います。
本物を目指すには、思い入れや、こだわりが大切。
 本当に自分が気に入ったもの、良いと思ったもの、ほれ込んだものなら、多少困難があってもチャレンジ
し続けることができます。
また一度決めたら、多少の困難があっても楽しみながらやり抜いていきましょう。きっと大きな収穫がある
でしょう。これは、療育に携わろうとする若い方たちに望むことでもあります。

 「理想的な指導者」のポイント
・プラス思考 (逆:マイナス思考)
・ほれこんで主体的に取り組む (逆:取り組みが中途半端、教育法に一貫性がない)
・感謝の気持ちがある(逆:言い訳やグチばかり)
・まじめで努力家 (逆:要領だけでこなす、お調子者)
・壁にチャレンジする勇気 (逆:初めから諦めている)
・豊かな自分の世界をもっている (逆:無趣味で感動がない)

「ワンポイントアドバイス」
・・・いつも120%でやりきる人もいますが、疲れたなと思ったときは、一休みや気分転換はとても大切です。

 研究所ではスタッフに対して、「月々のテーマをまず私たちが楽しみましょう」と数十年間言い続けています。
指導者が楽しいと思って指導すると、生徒さんにとってもさらに楽しく興味のある指導が可能になります。
注意点としては、まだ経験の浅い指導者は「自分の好きなテーマ」を選ぶことがありますが、
これは考え違いです。
あくまで「テーマ」は一人ひとりのお子さんの今一番興味を引くものを選ぶ必要があります。
 昨年秋に、「コスモス」と「建築機械」を
同時に取り上げましたが、男の子でブルドーザーやクレーン車等が興味があるお子さんはまず
そちらを選ぶべきです。

造形リトミック教育研究所

nan

26.指導のポイント(9)


26.指導のポイント(9)「飽きる?」このことを常に頭の隅に

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 「飽きる」ということ、療育について考える時これもとても大事なことです。

 発達障害をもつ子ども達について、とかく次のようなことがよく言われます。

・こだわりが非常に強い
・いつも同じでないと我慢できない
・いつもと違うとパニックになる

 そのために、療育者は同じことばかりを指導しているということがあります。しかし発達障害をもつお子さん達も、やはり「飽きる」のです。そのことを知って、療育に当たることが必要です。

 「飽きる」ということは別の観点からみると、「自分の好きな事をさらに先に進めてみたい」ということかもしれません。「探求心」とも言えます。

 たとえばある子どもは電車が好きで、中でも中央線が好きだとします。いつもの通り中央線に乗っていると、ある日新型の車両が来た、そこで新型車両に乗ってみた。こんなきっかけから、さらに別の中央線にも乗ってみたいと思うようになるでしょう。また、いつも使っている駅よりも、先に行ってみたいと思ったりするかもしれません。

 たまたま他の路線との連絡のある駅で見かけた西武線や南武線、横浜線などにも乗ってみたくなる。

 いつもは快速に乗っていたが、たまたま目の前を通り過ぎた特別快速や通勤快速に乗ってみたくなる。

 また目の前を通過した特急あずさや特急かいじなどに興味が広がったり。

 さらにまた通過しただけだけど、たくさんの貨物を連結して引っ張っていたディーゼル機関車や電気機関車に興味が湧いたり。 

 このようにプラスの流れが拡大していくことは、とても大きなチャンスです。無理に学習を進めることはリズムを崩したり、大きなストレスなったりするのでマイナスですが、慎重になりすぎて、また固定観念に捉われて、同じことばかりをやっていることには、チャンスロスという大きなマイナスもあります。そのことを意識していなくてはなりません。

 もしできるのであれば、許容範囲の中でちょっとしたサプライズとして、いろいろ小さなことからチャレンジしていきましょう。小さなきっかけから、お子さんの可能性が広がっていきます。

*写真は、大宮にある鉄道博物館にあった「人車」です。人力車ではなく、線路の上を人が引っ張る「人車」が存在したことを初めて知りました。驚きでした。
 現代の便利な乗り物にいたるまでの苦労、願い、思い、喜びのプロセスの歴史を感じました。

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nan

25.指導のポイント(8)


25.指導のポイント(8)「記録は常に破られる?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
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*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 今の方法が最高ではありません。常に新しいものにトライし、超えていくことが求められています。

 コンピュータなどまだなかった30年以上前、私は中学生でした。その頃は手動のタイプライターを打っていました。当時はこのような機械を扱うのはは早くて中学生ぐらいからで、小さな子どもが使うことはまず考えられませんでした。

 しかし現在はタイプソフトなどの開発により、五歳ぐらいの子どもでもコンピューターのキーボードでブラインドタイプをします。こんなことも、決して珍しいことではなくなりました。

 オリンピックで記録がどんどん更新されるように、テクノロジーも次々にこれまでの壁を乗り越えて行っています。それによって社会もどんどん変わってきています。

 療育者も、それに伴って積極的に革新的なものに取り組んでいかなくてはなりません。
 
 今や、電子マネーで交通機関を利用し、また買い物をする時代となりました。かつてのお金の学習と今の学習とでは、当然違いがこなくてはなりません。これまでのように、お金の種類を知り、お金を財布から取り出す学習はほとんど不要になってきます。それよりも、お金(金額)の多少や価値を知ることが学習の中心になってくるでしょう。

 何よりも良いことは、これまでは自立した買い物は難しいと思われていた人たちにも買い物のチャンスや楽しみが広がるということです。

 買い物に行く、新しくできたお店を覗いてみる、自分の好きなものを選んで買う、買う楽しみを知る、お土産を買う、誰かにプレゼントする、・・・いろいろな楽しみが出てきます。生活自体に、張りが出てくるでしょう。

  大切なことは、楽しむことです。こんな青年がいます。幼児期から造形リトミック研究所に通っているダウン症の青年ですが、今は成人して社会参加しています。当時の常識からすると、彼が携帯電話を使いこなすようになるということは
おそらく考えられなかったでしょう。

 しかしこの青年は携帯電話が大好きなので、いえ携帯電話が彼の生活の必需品になっているので、時間さえあれば自発的に操作しています。特に天気予報が非常に気になるので、一日に何度も天気予報を携帯電話で確認します。友達や知人の住所や情報も携帯電話に入っていて、折に触れ適切に利用しています。メールや写メール、インターネット・・・携帯電話に関しては、私よりもはるかに詳しいのです。

 もちろんパソコンやSuicaも、クーポン券も貯まったポイントも使いこなしています。彼の生き生きと、楽しく張りのある生活は、教室の彼に続く生徒さん達の目標です。

 「楽しむ」という力は、本当に一人一人の可能性を大きく広げていきますし、日々進歩していくテクノロジーはそれを適切に用いれば、より多くの人たちの夢を少しずつ実現させる力となります。

 *写真:昨日、埼玉県大宮市にある鉄道博物館にいってきました。サプライズです!!すごいです!!中央になんとターンテーブルがあるではないですか!中央にある蒸気機関車(C57:3つの動輪がデカイ!びっくり!大きな汽笛も良かったです!)と周囲の歴代の電車が語り合っているようでした。神田にあった旧交通博物館からは大きく変わりました。年間フリーパスは大人3000円、小中高生1500円、幼児600円、目玉です!!日曜日で混んでいましたが、童心にかえって楽しめました。1日で見るには特盛りでした。また、行きます!!

造形リトミック教育研究所

24.指導のポイント(7)


24.指導のポイント(7)「裸の王様」になっていませんか?

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 指導者が一番陥りやすいのは、固定観念や知識偏重の落とし穴です。そこに嵌っていては、ブレイクスルー(壁を突破すること)はできません。

 「病気を診て人を見ず」という言葉があります。知識に偏重すると、当たり前のことも見えなくなってきてしまいます。

 かねてから療育の世界では、「自閉さん」「ダウンちゃん」という言葉がよく使われてきています。親しみを込めて言われているのかもしれません。しかし私には、とても抵抗があります。

 もし自分の子どもだったら当たり前のことですが、「○○ちゃん」と名前で呼んでもらいたいと思います。「自閉症」や「ダウン症」である前に、一人ひとりには、「○○くん」「○○ちゃん」という名前があるのですから。

 「自閉症の○○くん」ではなく、「○○くんは、自閉症」つまり「○○くんには、自閉症状がある」という認識の方が
療育における子どもとの関わりとして、本質的であると思います。前者には、子どもを「自閉症」というひと括りで捉えてしまう危険があります。すると、指導書の規則ばかりがひとり歩きしてしまいます。

・自閉症だから、いつも同じ対応をしなくてはいけない(親や指導者が言ったことは、覆してはだめ)。

・自閉症だから、ルールどおりにしなくてはいけない(ルールを変えたら混乱する)。

・自閉症だから、いつも同じ言い方で分りやすく話しかけなくてはいけない。「くつ、は・く!」「手、あ・ら・う!」

 こういった指導に拘束されてしまっている状況を時おり目にします。そのたびに、私は思います。

「この子は何を望んでいるのだろう」
「どんなことに興味があるのだろう」
「どんなことにわくわくしたり、気持ちを惹かれるのだろう」
それが一人ひとりの「テーマ」です。「テーマ」は、人に生きる力を与えます。

 生徒さんが言葉で伝えてくれなくても、生徒さんの反応や様子を見ていたり、親御さんから日常のようすを伺うことでわかります。一人ひとりが生き生きと生きるための「テーマ」は、生徒さん自身が示しています。

 多くの生徒さんは本当に好奇心や学習意欲が旺盛ですから、人対人としてその意欲にしっかりと付き合って行きたい、それが私たちの療育です。こちらも図鑑や専門誌で調べたり、インターネットで最新情報を求めなくては対応しきれないことも多々あります。

 「自閉症である」とか「ダウン症である」とかという前に、まずはこのような人として共に生きるものどうしとしての学習を大切にしていきたいと常々考えています。

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23.指導のポイント(6)


23.指導のポイント(6)「逆」という冷静な眼

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 行き詰まったときには「逆」を考える、これはひとつ思考の仕方の原点です。自ずと、思考に柔軟性が生まれます。

 学習指導での問題解決という視点で考えてみましょう。

・学習への不安が強い時期に自立を求める指導が優先する
 ←→実は傍らにいてあげて、やさしく安心できる指導が必要

・一人で考えるように指導する、「もっと考えて!」「ちゃんと考えて!」
 ←→実は言葉がけをして回答へと導いてあげる指導が必要

・全科目を平均的に解らせようとするする
 ←→実は1科目で何か成果を出させてあげる指導が必要

・指導者がどうしても教科書から離れられず、将来必要でないことを形ばかり指導している
 ←→実は教科書の内容を吟味、選択して指導することが必要

・学習中は注意を散らさないで30分、1時間と集中することを求める
 ←→実は障害のもつ器質的要素を理解し、本人の集中できる時間を計ってそこから集中時間を伸ばし、深める指導が必要

・姿勢が崩れたりだらけていると、「がんばれ!」とはっぱをかける
 ←→実は姿勢の保持困難や睡眠異常、その日暑かったり、泳いできたりなどで本当に疲れている場合もある。その時はプログラムを検討する。

・「早くやりなさい!」←→実はゆっくり進める指導が必要

・「この子にこんなことできますか!」力があるのにできることだけをやらせている
←→子どもの持つ力は一様ではなく、興味のあることや好きな教科の理解力や学習意欲は思いがけないほど大きい

・できるのに教科学習を全く無視している←→実は子どもの学習への欲求度は高い。興味に応え、知的好奇心を刺激するような指導が必要。理科も社会も。

 次のように、良い悪いでは判断しきれない「逆」もあります。

・経験的に、過去に指導した生徒さんと重ねてしまう
 ←→経験があるにもかかわらず、これまで指導した生徒さんと重ねられない

・いつも同じことだけをする(飽きる)
 ←→いつも違うことをしている(変化に対応できない・習熟しない)

 
 一見「熱心」というベールに隠れて、実は「逆」を行ってしまっている状況もあれば、状況に応じた判断の求められる「逆」もあります。名人と言われる人たちは思考が柔軟で、子供を中心にしてその時々の状況に最も合う形を選ぶことができる人たちです。私が師として尊敬している人から「目の前の子どもがテキストです」と教えられたことがあります。目の前の子どもが発している事柄を感性と分析力をもってキャッチしていかなくてはなりません。

 それに少し行き詰まった時には「逆」を考えて見ましょう。子どもから発信がストンと読み取れるかもしれません。「逆」というのは意外な近道なのです。

造形リトミック教育研究所

22.指導のポイント(5)


「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 
 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

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22.指導のポイント(5)「教科指導、その他の指導どっち?」

 普通学級に在籍している生徒さんや、そうでなくても教科学習を中心としている生徒さんも、教室にはたくさんおられます。全科目を平均的に進められる生徒さんもいれば、勉強は苦手、がんばっているけれどなかなか効果が出ない、と困っておられた生徒さんもいます。

 後者の場合、どのように教科学習を進めていくか?

 まず一科目に絞って、成果を出させるように取り組みましょう。
「○○君は、漢字の読みが得意だ」、「算数の計算が早い」、「社会にはくわしいよ」・・・というような目標をもって。

 成果はもちろん自分の自信になりますが、親御さんから認められる、友達から認められる・・・というように周りの目が違ってきます。また親御さんにとっても、マイナスの充電(ストレス)を多少なりとも減らすという大きなメリットもあります。

 しかしながら発達が緩やか、また発達の偏りが大きくてなかなか教科学習になじみにくい場合は、思い切って教科以外でも好きなことからアプローチしていくこともひとつの方法です。 昔から「読み書き計算」と大切にされた3つのことがありますが、これは何も教科学習でなければ絶対学べないというものでもありません。

 たとえば電車が好きであれば、駅の名前で漢字の学習を、電車や路線の雑誌を使って文章の学習を、地名の学習を、名産品の学習を、歴史の学習を、機械や技術の学習を・・と広げたり掘り下げていくことができます。

 この時、親御さんや指導者など周囲も「これも学習だよ」「勉強だよ」「これでいいんだよ」という気持ちで見守り、一緒に楽しむことが大切です。「また電車?!」「駅名ばっかり覚えたって、役に立たないわよ」というような焦りをもったら、せっかくの集中、根気、持続、興味、探求の芽生えも台無しです。

 造形リトミック研究所ではいろいろなテーマを設けて、ちょっと簡単なことから、楽しみながら、知る面白さを感じることができるよう、一人ひとりの生徒さんの学習との出会いの場作りを心がけています。コンピューターと関連させたり、歌や音楽や身体表現によって楽しい演出をしたり。

 学習をコーディネートすることで、より確実に脳に定着させ、楽しいので繰り返し学ぶ、学習自身が遊びになっているような学習システムを開発することも可能と考えています。

造形リトミック教育研究所
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21.指導のポイント(4)


 21.指導のポイント(4)「集団指導、個別指導どっち?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」

おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 集団指導と個別指導、これはどちらもとても大切です。それぞれに意味と目的があります。ここでは、個別指導について考えてみたいと思います。

 個体における認知能力・基礎学習能力を育てる学習においては、個別指導が欠かせません。また、既に苦手意識を持っていたり、自信をなくしていたり、躓いてしまっている場合はいっそう個別のケアが求められます。

 これらの場合、集団教育ではメリットよりもデメリットが出てくる場合が多いからです。

・解らないのに置いていかれてしまった
・自分はやっぱりできないのではないか?
・常に他人と比較して、あぁ劣等感・・・
・将来に対して不安、自分はだめな人間ではないか?
・勉強ってやっぱりつまらない
・いじめられているのではないか?

・・・などマイナスの充電の要素が限りなく出てきます。

 人間は一人一人違います。たとえばネットでブログやオークションなどをちょっと覗くだけでも、これほど多種多様な趣味や嗜好があるのかと驚くばかりです。いろいろな世界のあることがわかります。日本人は世界でも屈指の個性派ではないでしょうか。

 「一人一人を伸ばす」ということ、そこに本気で取り組むには、やはり個別指導(最も非効率的ではありますが)が不可欠です。ここ数年、公教育でも「特別支援」つまり「特別な支援をすること」の必要性が強調されています。

 基本的なモデルは、医療での治療に近いとみてよいと思います。診察、診断、投薬、手術、治療計画や再発予防計画など、どれもすべてが個別です。

 学習においても、学習状況の分析、把握、指導計画、学習を支える生活リズムや心理的状態へのケア・・・ひとりひとりを対象として丁寧に教育を施す必要があります。しかもここで特に重要なことは、ひとりひとりの得意なところ、出来るところ、興味のあるところ、好きなところを把握し、積極的に認め、生かすことです。

 プラスを利用しながら、さらにプラスを伸ばす。プラスが増すことでマイナスを減らす、というのが鉄則です。

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20.指導のポイント(3)


20.指導のポイント(3)「全部を生かす、一部を伸ばすどっち?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 「全部を生かす? 一部を伸ばす?」

 これもやはり大切なことですね。

  きょうはこれを、「教科の学習」において整理して考えたい思います。
 冒頭の問いを言い換えると、「全部の科目にあたるか? 一部(ひとつ)の科目に絞るか?」となります。

 これは、お子さんによって異なります。
 勉強が好きなお子さん、すでに勉強の習慣ができているお子さんは、全部の科目に配分よく取り組んでいけばよいでしょう。

 しかしまずは一科目に絞って、学習の習慣をつけることから少しずつ進めていくのがよい場合もあります。

 ・勉強はあまり好きでない
 ・成績もなかなかふるわない
 ・特別興味のある科目がない
 ・毎日勉強する習慣がない、
 ・勉強の仕方が分からない
 ・いい成績をとったことはない、・・・のような場合です。

 このような状況は、ゼロからのスタートというよりもマイナスからのスタートです。お金で考えればただお金がないだけでなく、既に借金がある状況と同じです。また水泳に例えれば、ただ泳げないだけではなく、水への恐怖を持っている状況と考えれば分かりやすいと思います。

 このような状況で全科目をねらっていっては、マイナスの溝をさらに掘り進めてしまいます。では、どうしたらよいでしょう?

・机の上を片付けて、楽しい雰囲気で始めましょう。叱り付けて始めるのは禁物です。
・すぐにできそうなこと(簡単)から始めましょう → すぐに結果がでるように。
・「できた」(新しく知る)という実感が、次に進むエネルギーになるよう応援しましょう。

 例えば漢字学習。まずは傍らに座って学習に取り組むエンジンをかけてあげましょう(楽しい雰囲気で導入)。

 学習内容としては、書くことよりも読むことを優先しましょう。読むことは書くことに比べて、短時間で効果が出ます。やっているそばから、「できた」「できた」ということを肌で実感できることが必要です。5問できた、10問できた、半ページできた、1ページできた、・・・この達成感が大切なのです。

 自信や達成感は、前向きな意欲という恵みを与えます。ここで特に大切なことは、親御さんがあせらないことです。

「やらなくてはいけないことは、ほかにもたくさんあるのよ!漢字だけじゃないんだから!」

 でもあせらないことです。あせらず逆に、ほめることです。人はだれでも、他人に認められるとそれが大きな意慾となります。「すごいね」「できるじゃない」など何でもいいですからたくさんほめてあげて下さい。これは次への種まきです

 最終的には、人にほめられなくても自分から進んで目標を決めて努力するようになります。小さな目標を設定して、楽しく、簡単から取り組むことによって結果を感じられるように指導することがポイントです。

 そもそも人生の選択、進路の選択の、仕事の選択など、「選ぶ」ということは、逆に考えてみるとその他のこと捨てるということです。

 お店に入ってたくさんのメニューから自分が今食べたいものを選ぶということは、とりあえず今日は他のものは食べない、選ばないということですね。

 私はこのところ「鶏と野菜の黒酢アンかけ」をよく選びます。他にもおいしそうなメニューはたくさんあるのです。しかしそれは捨てて、「鶏と野菜の黒酢アンかけ」を選んだのです。他のメニューは今度のお楽しみです。あしからず

 
造形リトミック教育研究所

19.指導のポイント(2)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
* 新しく知るからのパートナー
* ちょっと簡単からのパートナー  

19.指導のポイント(2)

「大きくとらえる? 細かくとらえる?」

 このことも、大切な見方の一つです

・物事を大きくとらえる
・物事を小さくとらえる
・鳥瞰図
・虫瞰図
・今をみる
・これまでをみる
・目先をみる
・生涯をみる(これから先)
・就学期間を考える
・社会参加から先を考える

 理想的には、大づかみに捉えて少しずつ確実にしていくといったイメージが良いでしょう。 

 私たちはどうしてもマイナス面が気になりますから、目の前の問題や小さな問題に捉われて、無理を押し付けたり、イライラしたり、先に進めずに足踏みをしたりしてしまうことがあります。
 
 しかしもっと、生涯という大きな視点で療育をとらえることが必要です。

 生徒さん一人ひとりの療育を考えるとき、ただ単に「今、○○ができるように」ということだけでなく,一人ひとりの生徒さんがどのような人生を歩み、どのような生涯を送るだろうかという、大きな視野を持つことが大切です。

 私たちの多くは義務教育を経て、高校や大学に進学し、就職し結婚し・・・という道をたどってきています。しかし、人生はそれだけではありません。ハンディを持つ方たちの、それとは違うすばらしい生き方が今ではたくさん紹介されています。造形リトミック研究所でも、20代・30代となってそんな人生を歩み始めている生徒さんが少なくありません。

 どのような道のりを歩むにしても、私たちに共通であるのは「生き生きと、日々幸福に生きること」です。その視野をもって、乳幼児期の療育、学齢期の療育、社会参加への療育、社会人の療育が考えられるべきです。

 そうすると、たとえ今出来ないことがたくさんあったとしても、それを全部乗り越えなくても良いことに気づくこともあります。また今それが出来なくても、全然気にしなくても良いことにも気づきます。

 また同じ課題(たとえば足し算)でも、何のために行うのか、どの段階まで行うのか、どのような方向性を持って行うのか、そういった判断が必要となってきます。

「幸福に生きる」ために、その目的のために課題が賢明に吟味、選択されるべきです。

 これは、ハンディがあるから学習しなくても良い、難しいことはしなくても良い、ということではありません。また、ハンディがあるからといって幼少のうちから人生を見限ることでもありません。まったくその逆です。

 私たちの多くは、学校の教科教育というあまりに限られたコースを生きてきています。それに合う人もいれば余りあわない人やまったく合わない人もいるのです。義務教育の大きな恩恵はありますが、その在り方は今、健常の子どもたちにとっても検討されなくてならない危機的な状況にもあります。

 療育者はともすると、自らが受けてきた学校教育の経験や視点から抜け出せずに、それをすべての生徒さんに当てはめようとしていることがあります。

 限られたコースから自由に抜け出し、解放されてコースを選択できる喜びを享受しましょう。目の前の努力は、基本的には生き生きと生きるための努力につながるものでなくてはなりません。

 そのための努力なら、惜しまず楽しみながらやっていきましょう。

 
造形リトミック教育研究所
nan