26.指導のポイント(9)


26.指導のポイント(9)「飽きる?」このことを常に頭の隅に

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

*楽しいからのパートナー
*新しく知るからのパートナー
*ちょっと簡単からのパートナー  

 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 「飽きる」ということ、療育について考える時これもとても大事なことです。

 発達障害をもつ子ども達について、とかく次のようなことがよく言われます。

・こだわりが非常に強い
・いつも同じでないと我慢できない
・いつもと違うとパニックになる

 そのために、療育者は同じことばかりを指導しているということがあります。しかし発達障害をもつお子さん達も、やはり「飽きる」のです。そのことを知って、療育に当たることが必要です。

 「飽きる」ということは別の観点からみると、「自分の好きな事をさらに先に進めてみたい」ということかもしれません。「探求心」とも言えます。

 たとえばある子どもは電車が好きで、中でも中央線が好きだとします。いつもの通り中央線に乗っていると、ある日新型の車両が来た、そこで新型車両に乗ってみた。こんなきっかけから、さらに別の中央線にも乗ってみたいと思うようになるでしょう。また、いつも使っている駅よりも、先に行ってみたいと思ったりするかもしれません。

 たまたま他の路線との連絡のある駅で見かけた西武線や南武線、横浜線などにも乗ってみたくなる。

 いつもは快速に乗っていたが、たまたま目の前を通り過ぎた特別快速や通勤快速に乗ってみたくなる。

 また目の前を通過した特急あずさや特急かいじなどに興味が広がったり。

 さらにまた通過しただけだけど、たくさんの貨物を連結して引っ張っていたディーゼル機関車や電気機関車に興味が湧いたり。 

 このようにプラスの流れが拡大していくことは、とても大きなチャンスです。無理に学習を進めることはリズムを崩したり、大きなストレスなったりするのでマイナスですが、慎重になりすぎて、また固定観念に捉われて、同じことばかりをやっていることには、チャンスロスという大きなマイナスもあります。そのことを意識していなくてはなりません。

 もしできるのであれば、許容範囲の中でちょっとしたサプライズとして、いろいろ小さなことからチャレンジしていきましょう。小さなきっかけから、お子さんの可能性が広がっていきます。

*写真は、大宮にある鉄道博物館にあった「人車」です。人力車ではなく、線路の上を人が引っ張る「人車」が存在したことを初めて知りました。驚きでした。
 現代の便利な乗り物にいたるまでの苦労、願い、思い、喜びのプロセスの歴史を感じました。

造形リトミック教育研究所

nan

25.指導のポイント(8)


25.指導のポイント(8)「記録は常に破られる?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 今の方法が最高ではありません。常に新しいものにトライし、超えていくことが求められています。

 コンピュータなどまだなかった30年以上前、私は中学生でした。その頃は手動のタイプライターを打っていました。当時はこのような機械を扱うのはは早くて中学生ぐらいからで、小さな子どもが使うことはまず考えられませんでした。

 しかし現在はタイプソフトなどの開発により、五歳ぐらいの子どもでもコンピューターのキーボードでブラインドタイプをします。こんなことも、決して珍しいことではなくなりました。

 オリンピックで記録がどんどん更新されるように、テクノロジーも次々にこれまでの壁を乗り越えて行っています。それによって社会もどんどん変わってきています。

 療育者も、それに伴って積極的に革新的なものに取り組んでいかなくてはなりません。
 
 今や、電子マネーで交通機関を利用し、また買い物をする時代となりました。かつてのお金の学習と今の学習とでは、当然違いがこなくてはなりません。これまでのように、お金の種類を知り、お金を財布から取り出す学習はほとんど不要になってきます。それよりも、お金(金額)の多少や価値を知ることが学習の中心になってくるでしょう。

 何よりも良いことは、これまでは自立した買い物は難しいと思われていた人たちにも買い物のチャンスや楽しみが広がるということです。

 買い物に行く、新しくできたお店を覗いてみる、自分の好きなものを選んで買う、買う楽しみを知る、お土産を買う、誰かにプレゼントする、・・・いろいろな楽しみが出てきます。生活自体に、張りが出てくるでしょう。

  大切なことは、楽しむことです。こんな青年がいます。幼児期から造形リトミック研究所に通っているダウン症の青年ですが、今は成人して社会参加しています。当時の常識からすると、彼が携帯電話を使いこなすようになるということは
おそらく考えられなかったでしょう。

 しかしこの青年は携帯電話が大好きなので、いえ携帯電話が彼の生活の必需品になっているので、時間さえあれば自発的に操作しています。特に天気予報が非常に気になるので、一日に何度も天気予報を携帯電話で確認します。友達や知人の住所や情報も携帯電話に入っていて、折に触れ適切に利用しています。メールや写メール、インターネット・・・携帯電話に関しては、私よりもはるかに詳しいのです。

 もちろんパソコンやSuicaも、クーポン券も貯まったポイントも使いこなしています。彼の生き生きと、楽しく張りのある生活は、教室の彼に続く生徒さん達の目標です。

 「楽しむ」という力は、本当に一人一人の可能性を大きく広げていきますし、日々進歩していくテクノロジーはそれを適切に用いれば、より多くの人たちの夢を少しずつ実現させる力となります。

 *写真:昨日、埼玉県大宮市にある鉄道博物館にいってきました。サプライズです!!すごいです!!中央になんとターンテーブルがあるではないですか!中央にある蒸気機関車(C57:3つの動輪がデカイ!びっくり!大きな汽笛も良かったです!)と周囲の歴代の電車が語り合っているようでした。神田にあった旧交通博物館からは大きく変わりました。年間フリーパスは大人3000円、小中高生1500円、幼児600円、目玉です!!日曜日で混んでいましたが、童心にかえって楽しめました。1日で見るには特盛りでした。また、行きます!!

造形リトミック教育研究所

24.指導のポイント(7)


24.指導のポイント(7)「裸の王様」になっていませんか?

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 指導者が一番陥りやすいのは、固定観念や知識偏重の落とし穴です。そこに嵌っていては、ブレイクスルー(壁を突破すること)はできません。

 「病気を診て人を見ず」という言葉があります。知識に偏重すると、当たり前のことも見えなくなってきてしまいます。

 かねてから療育の世界では、「自閉さん」「ダウンちゃん」という言葉がよく使われてきています。親しみを込めて言われているのかもしれません。しかし私には、とても抵抗があります。

 もし自分の子どもだったら当たり前のことですが、「○○ちゃん」と名前で呼んでもらいたいと思います。「自閉症」や「ダウン症」である前に、一人ひとりには、「○○くん」「○○ちゃん」という名前があるのですから。

 「自閉症の○○くん」ではなく、「○○くんは、自閉症」つまり「○○くんには、自閉症状がある」という認識の方が
療育における子どもとの関わりとして、本質的であると思います。前者には、子どもを「自閉症」というひと括りで捉えてしまう危険があります。すると、指導書の規則ばかりがひとり歩きしてしまいます。

・自閉症だから、いつも同じ対応をしなくてはいけない(親や指導者が言ったことは、覆してはだめ)。

・自閉症だから、ルールどおりにしなくてはいけない(ルールを変えたら混乱する)。

・自閉症だから、いつも同じ言い方で分りやすく話しかけなくてはいけない。「くつ、は・く!」「手、あ・ら・う!」

 こういった指導に拘束されてしまっている状況を時おり目にします。そのたびに、私は思います。

「この子は何を望んでいるのだろう」
「どんなことに興味があるのだろう」
「どんなことにわくわくしたり、気持ちを惹かれるのだろう」
それが一人ひとりの「テーマ」です。「テーマ」は、人に生きる力を与えます。

 生徒さんが言葉で伝えてくれなくても、生徒さんの反応や様子を見ていたり、親御さんから日常のようすを伺うことでわかります。一人ひとりが生き生きと生きるための「テーマ」は、生徒さん自身が示しています。

 多くの生徒さんは本当に好奇心や学習意欲が旺盛ですから、人対人としてその意欲にしっかりと付き合って行きたい、それが私たちの療育です。こちらも図鑑や専門誌で調べたり、インターネットで最新情報を求めなくては対応しきれないことも多々あります。

 「自閉症である」とか「ダウン症である」とかという前に、まずはこのような人として共に生きるものどうしとしての学習を大切にしていきたいと常々考えています。

 造形リトミック教育研究所
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23.指導のポイント(6)


23.指導のポイント(6)「逆」という冷静な眼

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 行き詰まったときには「逆」を考える、これはひとつ思考の仕方の原点です。自ずと、思考に柔軟性が生まれます。

 学習指導での問題解決という視点で考えてみましょう。

・学習への不安が強い時期に自立を求める指導が優先する
 ←→実は傍らにいてあげて、やさしく安心できる指導が必要

・一人で考えるように指導する、「もっと考えて!」「ちゃんと考えて!」
 ←→実は言葉がけをして回答へと導いてあげる指導が必要

・全科目を平均的に解らせようとするする
 ←→実は1科目で何か成果を出させてあげる指導が必要

・指導者がどうしても教科書から離れられず、将来必要でないことを形ばかり指導している
 ←→実は教科書の内容を吟味、選択して指導することが必要

・学習中は注意を散らさないで30分、1時間と集中することを求める
 ←→実は障害のもつ器質的要素を理解し、本人の集中できる時間を計ってそこから集中時間を伸ばし、深める指導が必要

・姿勢が崩れたりだらけていると、「がんばれ!」とはっぱをかける
 ←→実は姿勢の保持困難や睡眠異常、その日暑かったり、泳いできたりなどで本当に疲れている場合もある。その時はプログラムを検討する。

・「早くやりなさい!」←→実はゆっくり進める指導が必要

・「この子にこんなことできますか!」力があるのにできることだけをやらせている
←→子どもの持つ力は一様ではなく、興味のあることや好きな教科の理解力や学習意欲は思いがけないほど大きい

・できるのに教科学習を全く無視している←→実は子どもの学習への欲求度は高い。興味に応え、知的好奇心を刺激するような指導が必要。理科も社会も。

 次のように、良い悪いでは判断しきれない「逆」もあります。

・経験的に、過去に指導した生徒さんと重ねてしまう
 ←→経験があるにもかかわらず、これまで指導した生徒さんと重ねられない

・いつも同じことだけをする(飽きる)
 ←→いつも違うことをしている(変化に対応できない・習熟しない)

 
 一見「熱心」というベールに隠れて、実は「逆」を行ってしまっている状況もあれば、状況に応じた判断の求められる「逆」もあります。名人と言われる人たちは思考が柔軟で、子供を中心にしてその時々の状況に最も合う形を選ぶことができる人たちです。私が師として尊敬している人から「目の前の子どもがテキストです」と教えられたことがあります。目の前の子どもが発している事柄を感性と分析力をもってキャッチしていかなくてはなりません。

 それに少し行き詰まった時には「逆」を考えて見ましょう。子どもから発信がストンと読み取れるかもしれません。「逆」というのは意外な近道なのです。

造形リトミック教育研究所

22.指導のポイント(5)


「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 
 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

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22.指導のポイント(5)「教科指導、その他の指導どっち?」

 普通学級に在籍している生徒さんや、そうでなくても教科学習を中心としている生徒さんも、教室にはたくさんおられます。全科目を平均的に進められる生徒さんもいれば、勉強は苦手、がんばっているけれどなかなか効果が出ない、と困っておられた生徒さんもいます。

 後者の場合、どのように教科学習を進めていくか?

 まず一科目に絞って、成果を出させるように取り組みましょう。
「○○君は、漢字の読みが得意だ」、「算数の計算が早い」、「社会にはくわしいよ」・・・というような目標をもって。

 成果はもちろん自分の自信になりますが、親御さんから認められる、友達から認められる・・・というように周りの目が違ってきます。また親御さんにとっても、マイナスの充電(ストレス)を多少なりとも減らすという大きなメリットもあります。

 しかしながら発達が緩やか、また発達の偏りが大きくてなかなか教科学習になじみにくい場合は、思い切って教科以外でも好きなことからアプローチしていくこともひとつの方法です。 昔から「読み書き計算」と大切にされた3つのことがありますが、これは何も教科学習でなければ絶対学べないというものでもありません。

 たとえば電車が好きであれば、駅の名前で漢字の学習を、電車や路線の雑誌を使って文章の学習を、地名の学習を、名産品の学習を、歴史の学習を、機械や技術の学習を・・と広げたり掘り下げていくことができます。

 この時、親御さんや指導者など周囲も「これも学習だよ」「勉強だよ」「これでいいんだよ」という気持ちで見守り、一緒に楽しむことが大切です。「また電車?!」「駅名ばっかり覚えたって、役に立たないわよ」というような焦りをもったら、せっかくの集中、根気、持続、興味、探求の芽生えも台無しです。

 造形リトミック研究所ではいろいろなテーマを設けて、ちょっと簡単なことから、楽しみながら、知る面白さを感じることができるよう、一人ひとりの生徒さんの学習との出会いの場作りを心がけています。コンピューターと関連させたり、歌や音楽や身体表現によって楽しい演出をしたり。

 学習をコーディネートすることで、より確実に脳に定着させ、楽しいので繰り返し学ぶ、学習自身が遊びになっているような学習システムを開発することも可能と考えています。

造形リトミック教育研究所
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21.指導のポイント(4)


 21.指導のポイント(4)「集団指導、個別指導どっち?」

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おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

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 集団指導と個別指導、これはどちらもとても大切です。それぞれに意味と目的があります。ここでは、個別指導について考えてみたいと思います。

 個体における認知能力・基礎学習能力を育てる学習においては、個別指導が欠かせません。また、既に苦手意識を持っていたり、自信をなくしていたり、躓いてしまっている場合はいっそう個別のケアが求められます。

 これらの場合、集団教育ではメリットよりもデメリットが出てくる場合が多いからです。

・解らないのに置いていかれてしまった
・自分はやっぱりできないのではないか?
・常に他人と比較して、あぁ劣等感・・・
・将来に対して不安、自分はだめな人間ではないか?
・勉強ってやっぱりつまらない
・いじめられているのではないか?

・・・などマイナスの充電の要素が限りなく出てきます。

 人間は一人一人違います。たとえばネットでブログやオークションなどをちょっと覗くだけでも、これほど多種多様な趣味や嗜好があるのかと驚くばかりです。いろいろな世界のあることがわかります。日本人は世界でも屈指の個性派ではないでしょうか。

 「一人一人を伸ばす」ということ、そこに本気で取り組むには、やはり個別指導(最も非効率的ではありますが)が不可欠です。ここ数年、公教育でも「特別支援」つまり「特別な支援をすること」の必要性が強調されています。

 基本的なモデルは、医療での治療に近いとみてよいと思います。診察、診断、投薬、手術、治療計画や再発予防計画など、どれもすべてが個別です。

 学習においても、学習状況の分析、把握、指導計画、学習を支える生活リズムや心理的状態へのケア・・・ひとりひとりを対象として丁寧に教育を施す必要があります。しかもここで特に重要なことは、ひとりひとりの得意なところ、出来るところ、興味のあるところ、好きなところを把握し、積極的に認め、生かすことです。

 プラスを利用しながら、さらにプラスを伸ばす。プラスが増すことでマイナスを減らす、というのが鉄則です。

造形リトミック教育研究所

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20.指導のポイント(3)


20.指導のポイント(3)「全部を生かす、一部を伸ばすどっち?」

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」
 造形リトミック教育研究所 玉野摩知佳 

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おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

 「全部を生かす? 一部を伸ばす?」

 これもやはり大切なことですね。

  きょうはこれを、「教科の学習」において整理して考えたい思います。
 冒頭の問いを言い換えると、「全部の科目にあたるか? 一部(ひとつ)の科目に絞るか?」となります。

 これは、お子さんによって異なります。
 勉強が好きなお子さん、すでに勉強の習慣ができているお子さんは、全部の科目に配分よく取り組んでいけばよいでしょう。

 しかしまずは一科目に絞って、学習の習慣をつけることから少しずつ進めていくのがよい場合もあります。

 ・勉強はあまり好きでない
 ・成績もなかなかふるわない
 ・特別興味のある科目がない
 ・毎日勉強する習慣がない、
 ・勉強の仕方が分からない
 ・いい成績をとったことはない、・・・のような場合です。

 このような状況は、ゼロからのスタートというよりもマイナスからのスタートです。お金で考えればただお金がないだけでなく、既に借金がある状況と同じです。また水泳に例えれば、ただ泳げないだけではなく、水への恐怖を持っている状況と考えれば分かりやすいと思います。

 このような状況で全科目をねらっていっては、マイナスの溝をさらに掘り進めてしまいます。では、どうしたらよいでしょう?

・机の上を片付けて、楽しい雰囲気で始めましょう。叱り付けて始めるのは禁物です。
・すぐにできそうなこと(簡単)から始めましょう → すぐに結果がでるように。
・「できた」(新しく知る)という実感が、次に進むエネルギーになるよう応援しましょう。

 例えば漢字学習。まずは傍らに座って学習に取り組むエンジンをかけてあげましょう(楽しい雰囲気で導入)。

 学習内容としては、書くことよりも読むことを優先しましょう。読むことは書くことに比べて、短時間で効果が出ます。やっているそばから、「できた」「できた」ということを肌で実感できることが必要です。5問できた、10問できた、半ページできた、1ページできた、・・・この達成感が大切なのです。

 自信や達成感は、前向きな意欲という恵みを与えます。ここで特に大切なことは、親御さんがあせらないことです。

「やらなくてはいけないことは、ほかにもたくさんあるのよ!漢字だけじゃないんだから!」

 でもあせらないことです。あせらず逆に、ほめることです。人はだれでも、他人に認められるとそれが大きな意慾となります。「すごいね」「できるじゃない」など何でもいいですからたくさんほめてあげて下さい。これは次への種まきです

 最終的には、人にほめられなくても自分から進んで目標を決めて努力するようになります。小さな目標を設定して、楽しく、簡単から取り組むことによって結果を感じられるように指導することがポイントです。

 そもそも人生の選択、進路の選択の、仕事の選択など、「選ぶ」ということは、逆に考えてみるとその他のこと捨てるということです。

 お店に入ってたくさんのメニューから自分が今食べたいものを選ぶということは、とりあえず今日は他のものは食べない、選ばないということですね。

 私はこのところ「鶏と野菜の黒酢アンかけ」をよく選びます。他にもおいしそうなメニューはたくさんあるのです。しかしそれは捨てて、「鶏と野菜の黒酢アンかけ」を選んだのです。他のメニューは今度のお楽しみです。あしからず

 
造形リトミック教育研究所

19.指導のポイント(2)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

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19.指導のポイント(2)

「大きくとらえる? 細かくとらえる?」

 このことも、大切な見方の一つです

・物事を大きくとらえる
・物事を小さくとらえる
・鳥瞰図
・虫瞰図
・今をみる
・これまでをみる
・目先をみる
・生涯をみる(これから先)
・就学期間を考える
・社会参加から先を考える

 理想的には、大づかみに捉えて少しずつ確実にしていくといったイメージが良いでしょう。 

 私たちはどうしてもマイナス面が気になりますから、目の前の問題や小さな問題に捉われて、無理を押し付けたり、イライラしたり、先に進めずに足踏みをしたりしてしまうことがあります。
 
 しかしもっと、生涯という大きな視点で療育をとらえることが必要です。

 生徒さん一人ひとりの療育を考えるとき、ただ単に「今、○○ができるように」ということだけでなく,一人ひとりの生徒さんがどのような人生を歩み、どのような生涯を送るだろうかという、大きな視野を持つことが大切です。

 私たちの多くは義務教育を経て、高校や大学に進学し、就職し結婚し・・・という道をたどってきています。しかし、人生はそれだけではありません。ハンディを持つ方たちの、それとは違うすばらしい生き方が今ではたくさん紹介されています。造形リトミック研究所でも、20代・30代となってそんな人生を歩み始めている生徒さんが少なくありません。

 どのような道のりを歩むにしても、私たちに共通であるのは「生き生きと、日々幸福に生きること」です。その視野をもって、乳幼児期の療育、学齢期の療育、社会参加への療育、社会人の療育が考えられるべきです。

 そうすると、たとえ今出来ないことがたくさんあったとしても、それを全部乗り越えなくても良いことに気づくこともあります。また今それが出来なくても、全然気にしなくても良いことにも気づきます。

 また同じ課題(たとえば足し算)でも、何のために行うのか、どの段階まで行うのか、どのような方向性を持って行うのか、そういった判断が必要となってきます。

「幸福に生きる」ために、その目的のために課題が賢明に吟味、選択されるべきです。

 これは、ハンディがあるから学習しなくても良い、難しいことはしなくても良い、ということではありません。また、ハンディがあるからといって幼少のうちから人生を見限ることでもありません。まったくその逆です。

 私たちの多くは、学校の教科教育というあまりに限られたコースを生きてきています。それに合う人もいれば余りあわない人やまったく合わない人もいるのです。義務教育の大きな恩恵はありますが、その在り方は今、健常の子どもたちにとっても検討されなくてならない危機的な状況にもあります。

 療育者はともすると、自らが受けてきた学校教育の経験や視点から抜け出せずに、それをすべての生徒さんに当てはめようとしていることがあります。

 限られたコースから自由に抜け出し、解放されてコースを選択できる喜びを享受しましょう。目の前の努力は、基本的には生き生きと生きるための努力につながるものでなくてはなりません。

 そのための努力なら、惜しまず楽しみながらやっていきましょう。

 
造形リトミック教育研究所
nan

18.指導のポイント(1)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
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18.指導のポイント(1)

「プラス(+)を伸ばす? マイナス(-)を減らす?」

 このことは基本的で大切なことです。

・長所を伸ばす
・短所を改善する
・得意なものを伸ばす
・苦手なもの克服する
・興味のあるものを伸ばす
・いま必要とされるものを身につけさせる

 これは、この中のどれが正解かという問題ではありません。長所を伸ばしながら短所を克服していく、というのが理想的でしょう。しかし、実際にはなかなかそう上手くいくものではありません。大づかみで考えるとやはり、まずは「できること」や「好きなこと」、「興味のあること」を優先することです。

 「できた」「楽しかった」「おもしろい」という経験を重ね、常に気持ちが充電されていることが大切です。そうすれば当然、「ほめられること」が「「叱られること」よりも多くなります。否、相当悪い行為でもない限り、叱るようなこともないでしょう。

 学習する上での「わからない」「できない」「まちがえる」、注意欠陥、多動、自傷、・・・などは叱る対象ではありません。理解の回路の躓きや誤り、行動の背景、器質的な問題を考慮し配慮して、ケアをするべき対象です。まさにこれが治療教育であり、私たちが力を発揮するべきところです。

 ここでひとつ加えておきます。「できること」「好きなこと」「興味のあること」を優先する、というのはあくまでも「優先する」のであつて、「苦手なこと」「あまり好きでないこと」「興味のないこと」には触れない、ということではありません。

 前者に優先的に取り組むことによって、集中力や根気、探究心などプラスの態勢や意慾が養われます。また講師との信頼関係も育くまれます。そうすると、後者にも少しずつ取り組むことが出来るようになるのです。

 講師や親御さんのちょっとした工夫が、意外に大きな効果を生み出します。以前に紹介したような「素晴らしい引き立て役」を上手に活用して、「苦手なこと」「あまり好きでないこと」「興味のないこと」も上手に演出してみましょう。

「楽しい」「知る(おもしろい!)」「簡単」、造形リトミック研究所の3つのパートナーシップは、皆さんへのメッセージでもあり、講師としての確認項目でもあるのです。

 心理的なマイナスの壁をいかに低くするか、限りなくゼロに近づかせるか、この辺りの技量が本物を問われるところですね。私も、自分に再確認します。

 造形リトミック教育研究所

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16.テーマの力(1)


 おはようございます。造形リトミック教育研究所の玉野 摩知佳です。

知的障害・発達障害 個性と可能性を伸ばす

* 楽しいからのパートナー
* 新しく知るからのパートナー
* ちょっと簡単からのパートナー  

16.テーマの力(1)

 造形リトミック研究所には、月ごとのテーマ(≒モチーフ)があります。

 テーマにはそれ自身に大きな魅力があります。種類、色、形、味、音、存在感、名前、部品、部位、機能、、歴史や開発者の思い、研究の蓄積、自然の恵み、雄大さ、智恵・・・・・、ほんとうにさまざまな要素を個別にもっています。
そのひとつひとつの魅力が大きな魅力を創り上げています。

 それぞれのテーマに対して、一人一人はそれぞれに興味や経験をもっています。
自分がもっとも魅かれるテーマに出会えることはとても幸いです。それを自らの生涯のテーマとして楽しみ、追求していくことができれば、どんなに豊かな人生となるでしょう。

 造形リトミック研究所の今月のテーマは「鉄道」です。

・電車の顔
・快速電車
・都営副都心線
・特急電車
・新幹線500系「のぞみ」
・蒸気機関車
・・・・・・

「鉄道」といってもこのように複数の対象を用意しているのは、一人一人の生徒さんにとって最も心の動く対象を講師が選べるようにとの思いからです。造形リトミック研究所が当初から貫いてきている個別教育ならではの計らいです。

 画一的な教材でのマニュアルどおりの指導は、私たちの思いとは異なるところにあります。それはある意味、提供する側にとっては楽で効率が良いでしょう。しかし、ひとりひとりの個性や可能性をほんとうに伸ばす教育は実現しにくいと思われます。

 「創造性を伸ばす」「個性を伸ばす」、ひと言で言うことはたやすいのですが、実現するには大変に手間隙がかかります。一人一人の生徒さんとの対話(言語を介さない対話の場合もあります)、親御さんとの対話が、まずそのきっかけ(糸口)
を作ります。そこから、研究所と講師とが周到な用意をしてテーマと学習対象を提供します。

 「特別扱い」、どちらかと言うとマイナスの意味合いで用いられる言葉ですが、一人一人の育ったプロセスや好みは異なるのですから、私たちはより積極的な意味で一人一人の生徒さんを「特別扱い」していきたいと考えています。

 「特別扱い」=「オーダーメード」です。一人一人、正にその子(その人)の心が動くものを提供していくのです。子ども・・・大人もそうですが、よほどの必要性に迫られない限り、自ら取り組もうと思うのは自らの「心が動くもの」です。

 教育は、心を動かすことから始まるといっても過言ではないでしょう。そしてテーマには、「心を動かす力」があるのです。提供する側の私たちもテーマから力をもらって、楽しみながら十分手間隙をかけて、生徒さんのテーマとの出会いの場を創っていきたいと考えています。

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