398.英語の語順も

398.英語の語順も
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 a car に new を加えて、「新しい車」とするには、 new a car それとも、a new car? 
 このような基礎問題でつまずいてしまうケースがあるのです。

 問題集にはこれと同様に、「古いラケット」「良い本」「アメリカ製の車」を英語にする問いが並んでいます。

 文法的には、「不定冠詞+形容詞+名詞」の順に語を並べればいいのですが、このようなレベルのことは文法的に理解するというよりは、フレーズで覚えていくほうが容易です。耳慣れない文法用語を覚える間に、a new car、an old racket、 a good book、an American car・・・、と繰り返し発音して感覚的に覚える方が効率的です。

 しかし、英語の導入時につまずいたり、はじめから苦手意識を持ってしまうと、基礎の学習させ十分に行うことができずに、かえって、文法的なややこしい取り組みをすることになり、いっそう英語から遠ざかってしまうことがあります。

 きのうの国語の学習ではありませんが、とにかく量的に繰り返し繰り返し、見て、書き、発音していくことが必要です。苦手意識さえ持たさなければ、気持ちよく繰り返すことができます。

 記憶することが苦手な生徒さんもいます。その場合は、必要以上に覚えるように迫らないことです。覚えることが苦手だったら、見ながら書くだけでもいいのです。とにかくある程度の量に触れていきましょう。そうしている間に、見慣れていきます。また書き慣れ、発音し慣れていきます。

 記憶できなければ、学校のテストにはしばらくの間努力が反映されないこともありますが、そこで焦らずに、見る・書く・発音する、を繰り返していきましょう。テキストのストーリを日本語で把握しておくことだけでも意味はあります。

 そんな学習を通して、記憶することも次第にトレーニングされてきますし、英語のスタイルが視覚的に、聴覚的にまた運動感覚として体得されてきます。すると、教科書を開いたときに、単語がポンと目に入ってくるようになります。そして、少々文法的な説明も少しずつ理解できるようになってきます。

 アルファベットの羅列が、単語の並びとして見えてくるまで、ここであせらず、たんたんと練習を積み重ねていきましょう。

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397.助詞の学習

397.助詞の学習
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 「明日午前はいない、昼(   )出かける予定なので。」
 「明日午後はいない、昼(   )出かける予定なので。」

 (  )の中には、「まで」と「までに」のどちらが入るのでしょう?これは、きのうのなぞなぞではありません。小学校6年生の国語の問題です。単元「言葉って、おもしろいな」からの出題です(教科書わかるわかるテスト:朋友出版)。

 「学校の教室(   )勉強する」
 「学校の教室(   )いる」
 (  )の中には、「に」と「で」のどちらが入るのでしょう?先の午前・午後の問題の前の問いに比べて、これは、かんたんですね。午前・午後の問題では、講師としても一瞬ドキッとしました。落ち着いて考えて、納得しましたが。

 ところが、国語を不得手とする発達障害をもつ小6の生徒さんが、5問中5問全部正解しました。二者択一の問題ですから、まぐれもあるかもしれません。でも、全部まぐれとは言えません。しかも、両方を読み比べて考えている風もありましたから。答えの理由までは明確に説明できなくても、きっと理解して正解したのだと思います。

 幼児期から、語彙が少なく、言葉での表現や理解に困難を示す生徒さんでしたが、在籍する普通学級の進度に合わせて国語の学習も進めてきました。教科書の読みをご家庭でも繰り返し、市販のワークには2回ずつ取り組み、理解しいくい問題には再度取り組む。意味の流れを把握させるためには、必要に応じてオリジナルワークで補充する。

 こんな進め方で、対応してきました。本人の好きなのはやはり漢字の問題ですが、読解や文法、言葉の言い回しの学習にも嫌がらずに取り組んできました。

 ここまで取り組めてきた理由は、教室でもご家庭でも叱らずに、また回答を迫らずに指導してきたことにあります。わからないところは回答を示し、短時間で効率よく学習を進めてきました。ですから本人も困らずに、またイライラすることなく取り組めたのでしょう。

 理解が不十分なところはまだまだあります、しかし、この6年間、たくさんの文章の読み書きに当たってきました。

 言葉を駆使するその量と経験が、言葉の自然な流れを獲得させてきたのでしょう。量だけでなく、質的経験から得るものも大きいと思います。理解が不十分だからと言って初歩的な文章にとどまっていては、学習能力もそこでとどまってしまいます。内容的にも難易度的にも年齢とともに更新させていくことは必要です。

 そんな中で、助詞も言葉の自然な流れとして獲得されてきたのでしょう。もちろん、まだ完璧ではありません。でも言語能力を駆使することによってこそ、言語能力は発達していくのです。発達したところで少し戻り、基礎を固めながら、さらに発達を促していきましょう。ここであせらず、楽しみながら。

 
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393.知的障害:書字への導入(記憶)

393.知的障害:書字への導入(記憶)
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 この1週間は、書字について改めえ考えてきました。巧緻性と空間の把握(構成も含め)の両方の機能が保障されれば、文字を書くことはできます。ただし本当の意味でのひとり書きのためには、さらに文字を正確に記憶していることが必要です。

 巧緻性と空間の把握の機能が保障されていても、書くべき文字が頭の中になくては、ひとり書きにはいたらないからです。そこまででは、お手本を見て書くという模写の段階にとどまります。

 しかし、なぞることはできても模写することはできないというケースがあるように、なぞり書きと模写との間の壁は意外に高いのです。しかも、空間の把握ができていないということは、傍から認識されにくいために、そこで大きなつまずきやストレスを抱えて文字嫌いや学習ぐらいになるケースは残念ながらとても多いのです。ですから、月曜日から昨日まで触れてきた書字へのプロセスはとても重要なことです。

 それを踏まえた上で、本当のひとり書きへと進めるためには、1文字1文字を記憶していくことが必要です。「あを書きましょう」と言われて、「あ、あの文字だ」とわかって初めて、「あ」が書けるのです。

 こう考えてくると、日頃文字を書くという行為において、私達はいろいろな機能を働かせ、いろいろな作業を連動的に行っているということがわかりますね。知的障害や発達障害をもつお子さんに対しては、この緻密な作用を細かく分析して、一つ一つ保障していってあげることが必要なのです。これが、特殊教育です。私はそこに、特殊教育の面白みと誇りを感じるのです。

 さて、では文字を記憶するにはどうしたらいいでしょう。・・・書字のための巧緻性のトレーニングや空間認知のための学習をしている間に、文字の読み学習はどんどん進めていきましょう。

・五十音表を読む。
・「あひるの あ」「いちごの い」のように、基本単語と文字とを連動させてイメージで記憶していく。
・好きなものの名前と文字を関連させて、イメージで記憶していく。
・絵本の読み聞かせを通して、文字に触れさせる。
・興味のある看板やタイトルを通して、文字に触れさせる。

 決して強要せずに、生活の中で文字にゆっくりと十分に触れていくことです。まずは、文字があるんだ(文字の存在)ということに気づかせ、興味を持たせ、見慣れていく環境を作っておかれると良いと思います。文字を覚える、学習するという前のそんな素地作りを大切にしていきましょう。

 
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392.知的障害:書字への導入(空間認知)

392.知的障害:書字への導入(空間認知)
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 ひらがなの書字(模写)ができるための条件は、空間の把握と手指の巧緻性です。ここ3日間は空間把握のトレーニングについて考えてきました。巧緻性は、空間認知のトレーニングを通して養われます。巧緻性は、運動の要素が高いのでトレーニングすればするほど機能は高まります。

 また巧緻性の問題は、鉛筆の持ちかたが悪いとか、手指の動きがぎこちないとか、傍から見ていて捉えやすいものです。ですから、お子さんがまだ上手に文字が書けなくても、がんばっていることは認めてあげることができます。

 それに対して、傍から捉えにくいのが空間を把握する機能です。紙の真ん中に、またはマスの真ん中に縦線を書かせようとしても、とんでもないところに書くことがあります。「ちゃんと見てるの?」「よく見て!」と言いたくもなるような状況です。しかし、お子さんはちゃんと見ていないどころか、相当真剣に見ているのです・・・、でも真ん中がどこなのかがわからないのです。

 真ん中がわからなければ、上も下も、右も左も、ましてや斜めなんて、それを捉えるのは至難のわざです。

 そこを理解してあげることが、何よりも大切です。本人は一生懸命に取り組んでいるのに、「そこじゃないでしょ!」となると、鉛筆を紙面に下ろすこと自体が恐怖になります。まず、鉛筆を置く最初のポイントがどこなのか、それがわからないのです。

 お子さんを書字嫌いにさせないためには、そこのところを理解してあげることです。ひらがなでつまずくと、当然カタカナや漢字の書字でもつまずきます。せっかく持っている力を損なわないためにも、ゆっくりと上手に書字へと導いてあげましょう。

 書字の前には、絵、絵の前には基本描画、その前には彩色やなぐり描き、どれも書字へといたるプロセスの大切なステップです。あせらずに、お子さんと楽しみながら一つ一つのステップを進んでいきましょう。

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391.知的障害:書字への導入(円描)

391.知的障害:書字への導入(円描)
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 枠の中に十字形が描けるようになったら、今度は丸を描く練習をしましょう。なぐり描きがとても大切なプロセスであることは前にお話いたしましたが、これから練習する丸はなぐり描きとは少し区別してより形を意識して描けるように、大きな丸をトレースして描くことから練習を始めましょう。

 画用紙の中央にできるだけ大きな丸を太い線で描いてあげましょう。その上をくり返し、くり返し、トレースさせましょう。線からはみ出さないでトレースできるようになったら、丸をだんだん小さくしていきましょう。最初の丸の6分の1くらいの大きさまで小さくしていき、そのトレースができるようになったら、先に学習した十字形と組み合わせて、文字のトレースの学習に入りましょう。

 ひらがなの半分近くの文字は十字形を含んでいますが、それに加え、6割以上は丸(曲線も含め)を含んでいます。従って、十字形と丸が描ければ、ほとんどのひらがなは書けることになります。しかも、丸は多くの場合、縦線や横線、十字形とのつながりで書く場合が
ほとんどです。たとえば、「す」。十字形を描いてから丸を描き(回転)、下にすーっと伸ばします。

 ですから円描は、縦線、横線、十字形ほどには、ひとり描きの練習は必要とされません。もちろん、ひとり描きできるに越したことはありませんが。それよりも教室では、だ円や弧線を描く練習に進めることによっていろいろな形態の曲線が描けることようにと、書字プログラムを進めていきます。

 さあ、書字へのスタート!なぐり描き、縦線、横線、十字形、丸、曲線、ひとつひとつのプロセスに意味があります。楽しく、くり返しくり返し練習していきましょう。

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390.知的障害:書字への導入(十字形)

390.知的障害:書字への導入(十字形)
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 白い紙の上に縦線や横線が描けるようになったら、今度は縦線と横線を組み合わせて十字形を描きましょう。ひらがなの半数近くは、文字の中に十字形を含んでいます。なぐり描きを存分に行い、縦線描きや横線描きを十分に行ったように、十字形も楽しく楽に描けるようにくり返し練習しましょう。

 はじめに描いた横線が基軸となって、縦線の位置が決まります。十字形が描けるとは、まず十字形の形の把握ができて、その上でそれを再現できることです。十字形を描くなんてかんたん!と思われるでしょうが、書字へのつまずきを示すお子さんにはそこが難しいのです。十字形の横線は描けた、でも次の縦線の描き出しの位置がわからない。紙の上で迷子になってしまっているのです。

 十字形をどうにか描いているこんな段階で文字書きに進めてしまうと、本人は相当苦労をして文字を練習することになってしまいます。ともすると、書字嫌いになるおそれもあります。書字嫌いや漢字嫌いにさせないために、♪「よこたて、よこたて」といろいろな色のクレヨンで楽しくくり返し描きながら、十字形描に習熟させてあげましょう。

 この間、文字学習をしてはいけないということではありません。文字の読みを進めておくことは有効です。また、手を添えて、無理なく書かせることも有効です。無理さえさせなければ、お子さんの興味の向くままにどんどん進めてあげて全く構いません。

 しかし、なぞり書きや介助書きはできても、「ひとり書き」は難しいというケースがあるのです。空間の認知に困難を示すタイプのお子さんの場合です。本当に「ひとり書き」の機能を獲得させるためには、何もない空間に楽に十字形が描けるような、認知と巧緻性の機能を十分に保障していってあげることがとても大切なのです。

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389.知的障害をもつお子さんの書字への導入

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 今日は、関東地方も夕方から雪が降ってきました。さっと雪化粧した街路樹、街灯の中に白く舞う雪、車のフロントガラスに向かってくる雪、慣れないチェーンの音と振動を感じながら帰路につきました。やはり都心に住むものにとって、雪は日常の世界を一新する美しいものです。

 さて、お話は先週の続き、書字への導入です。なぐり描きをふんだんにくりかえして、紙面の中を自由に行き来できるようになったら、その中に中心を感じ、そこに縦線と横線を見出していくのが、次の一歩。つまり、書字への導入です。

 紙面の広さや限界(枠)を知ることと、中心を知ることは同時に行われます。枠と中心が定まって、はじめて「縦・横」いう方向性が得られます。縦線を1本描いてみましょう。介助でもいいのです。やさしく手を添えて、いっしょに描きましょう。

 そうしたら、その横に、その横に、と縦線を並べて描いていきましょう。紙の端まで行き着いたら、今度ははじめの縦線の反対側にも縦線を並べて描いていきましょう。反対側の紙の端に行き着くまで、描きつづけていきましょう。

 紙の中央がわかるようになってきたら、紙の中央に縦線を描きましょう。そうして、その縦線と紙の端の間に縦線をもう1本描きましょう。反対側にも同じように、さいしょの縦線と紙の端の間に縦線をもう1本描きましょう。

 クレヨンの色を替えて、それら3本の縦線と紙の両端の線の間に、「あいだに たーて」「あいだに たーて」と発声しながら、縦線を描いていきましょう。さらにクレヨンの色を替えて、それらのあいだに細かく、「あいだに たーて」「あいだに たーて」
と発声しながら、縦線を描いていきましょう。きれいな縞模様ができてきますね。これだけでも、りっぱなデザインです。

 同じように、横線でもやってみましょう。

 縦線を描いたり、横線を描いたり、書字へは程遠いとお感じかもしれません。焦る気持もわかりますが、このプロセス大切です。

 紙の上を自由に等分できてこそ、絵や文字のひとり描き(書き)へと成熟していくのです。デザインを楽しむような気楽な気持で、取り組んでいきましょう。

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388.知的障害をもつお子さんの文字学習

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 きのう、このブログを訪れてくださった方の中にこんな関心がおありだったので、お答えしていきたいと思います。書字は、造形リトミックの教室でもっともお役に立てる課題のひとつです。「まだなぐり描きしかできないんです」とおっしゃって体験授業に来られて、その場で「たてせん」が描けるようなケースが少なくありません。

 まず、「なぐり描き」ができていることを評価しましょう。「なぐり描きしか」ではなく、「なぐり描きは、できるんです!」と肯定的に捉えていいのです。「なぐり描き」ができるというのは、

・クレヨンをしっかり持つことができているということです。
・紙に向かう姿勢の保持ができているということです。
・紙の中を自由に見渡すことができているということです(空間の把握)。
・同じく、紙の中を自由に見渡すことができているということです(視線の移動)。
・視線の移動に伴い、手を自由に動かすことができているということです(目と手の協応)。

 なぐり描きをしながら、お子さんはこのような数種類の機能のトレーニングを統合的に積み重ねていっているのです。お子さんが楽しんで自発的に行っているトレーニングですから、そのトレーニング効果は抜群です。なぐり描きを通してこれらの機能が十分に保障されることによって、書字にもスムーズに進んでいくことができます。

 来週は、なぐり描きから進めて書字への導入についてあらためて考えてみたいと思います。

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385.否定語は使わない

385.否定語は使わない

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 電車の中でこんなことがありました。
 発達障害かと見受けられる成人の女性ともう高齢なお母さまの2人連れ。何かお話しているようでしたが、その女性にとって言われたくないことの発言がお母さまにあったようで、女性は少々気勢も荒くなっています。

 娘さんはお母さまに「言わないでよ」、「もう言わないでよ」とくり返し訴えています。お母さまとしては穏やかに話されているのですが、娘さんの違っていることについてはくり返し訂正をしています。訂正されるたびに、娘さんは気を荒げます。

 「ここはまず、”そうだね、そうだね”と聞いておいてあげればいいのですよ」、とお母さまに申し上げようかとも思いましたが、次の駅で降りて行かれました。降り立ったホームでも、まだその話は続いているようでした。

 発達障害の方に限られたことではありませんが、誰しも失敗したこと、負の状況、否定されることは受け容れがたいのです。でも、それが事実であれば受け容れ、越えていかねばなりません。負を受け容れることによって、成長があります。

 しかし、それが出来るのは精神的に確たるものを持ち、知的にも整理して考える力のある場合です。または、精神的にも知的にもよき援助者に恵まれた場合です。

 それが難しい場合、その力の度合によって対応を加減していくことが必要です。たとえ事実であっても、事実をそのまま突きつけただけではかえって事態を悪化させてしまう場合があります。

・たとえ事実であっても、相手が受け容れられる範囲で、受け容れさせることです。場合によっては、事実との相違が多少生じても。
・同じことの表現でも、否定語は避けることです。「~が出来ないから」を「~ができるように」というように。

ex.「この漢字が書けないから、練習しないと困るでしょ」と、「この漢字が書けるように、練習したら大丈夫よ」とでは、どちらが気持ちが軽く、明るく、練習する気持ちになるでしょう。いい気持ちで練習すれば、練習の成果も上がるんです!

・負の状況について、「でもこうすれば大丈夫!」という解決策を同時に提示してあげることです。

 発達障害の方はおうおうにして生真面目です。いい加減ではないので、うまくいかないと困るのです。人一倍、困るのです。「まあ、いいか」で片付けられないところがあります。
そんな気持ちを理解してあげることは、大切です。必要以上に困らせないように、こちらもあわてずに洋々と構えて、肯定語でていねいに対応してあげましょう。「大丈夫」というメッセージを常に発信してあげましょう。
 

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383.国語の読解学習~(3)

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「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 文章読解の学習で、気持ちを問われている問題に答えることが難しいという報告や相談をよく耳にします。

 テキストの書き手や登場人物の気持ちを推測する、また事態や状況から彼らの気持ちを判断する、そこには、文意を理解するという言語理解の問題と、気持ちや他者との共感性が育っているかという情緒の発達の問題の2つが関与しています。

 発達障害をもつ生徒さんの場合、多くはその両方の問題を抱えています。ですから、この両方の問題にひとつずつアプローチしていくことが必要です。

 まず、文意の理解についてはここ2回ほどお話させていただいたように、ひと段落ずつていねいに、読んだり書いたり、聞いたり、見ないで言ってみたり、文を再構成してみたり、とくり返しくり返し文に馴染むような学習を積み重ねていきましょう。

 そして、気持ちの発達を促し、共感性を育むことについては、日々の生活の中でことに触れ折に触れ言語を交えて気持ちや共感性を育てていくことです。

 発達障害をもつお子さんは幼児期に、人との関係性が希薄であったり、言語発達が十分でなかったり、ものや人への関心の幅が狭かったり、またそこに偏りがあったり・・・、といういろいろな理由から、感情が十分に育っていない、それに伴って感情に関する言語が獲得できていない、ということがあります。

 年齢に関係なく、気づいたときから少し意識して感情を育てていってあげることです。お子さんに伝わるように、ていねいに話しかけましょう。ただし、しつこくならないように。

冬の朝・・・
「今日も寒いけど、気持ちがいいわね。ほら、お日さま出てきたわよ」(感覚・気分)
「温かいお味噌汁(スープ)おいしい、あったまるわね。ぽかぽかしてきたわね」(感覚・気分)

テレビのニュースを一緒に見ながら・・・
「すごい雪ね。寒そう、東北の人たちは、雪で大変ね」(共感)
「湖に白鳥が来たんだって、わぁ、たくさん来たのね、白鳥って、きれいねぇ・・・」(感動)

学校の話・・・
「マラソン、がんばったのね。走ったら、暑くなった?最初は寒くて”やだなー”って思うことあるけど、走ったあとは気持ちいいよね!○○くんもがんばった?」(分析・推測)
「今日の給食は?いよかん?そう、すっぱかったの。でも、ちょっとあまかった?あまずっぱーい!!」(味覚:講師の報告より)

夕食(カレーライス)・・・
「○○くんが手伝ってくれたから、助かった。ちょっと辛口でおいしいね。きっと、お父さんが喜ぶね!」(味覚・推測)
「学校でもカレー作ったでしょ。みんなで分担してできた?そう、ひとりだけできなかったら、かわいそうだもんね!」(配慮・推測)

・・・というように、目に見えないものや形になっていないものを表現することを生活の中でお手本として示していってあげましょう。

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