400.授業を受ける側は?

400.授業を受ける側は?
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 何十年か振りに歯医者さんに行きました。どこが痛いというわけではなく、口腔衛生のために行ったのです。最近は機械もよくなったので痛くない、という予備知識もあって行ったのですが、やはり多少の不安はあるものです。通常通り、歯石を取り除きましょう、というあたりからスタートしました。

 とてもいい歯医者でしたが、直接処置をしてくれる歯科衛生士(?)の方は無言で処置を進めます。結構時間のかかるものですね。30分以上かかったでしょうか。痛くないとは聞いていたものの、無痛ではありません。多少歯茎に触れるような、神経に障るような痛みは時折あります。

 それでも、処置はたんたんと無言で進められます。

・今日はどこまでやるのだろう?
 下の歯だけ、それとも下の歯の右側だけ?・・・結局、上下左右、全部でした。
・全部で、何分くらいかかるの?
・うまく進んでいるのか?
・通常の人と比べてどうなのか?
・最初は、腕前にも少々不安がなくはありません、・・・内緒ですが。

 いつもは、講師として授業を行っている側ですが、時には何かを受ける側になってみるのも貴重な体験です。

 やはり処置の前に、どのくらい時間がかかるのか、どんなことをするのかの予告が欲しいですね。そうすれば、それなりの心積もりができます。多少の痛みも乗り切れます。

 →→授業では、終了時刻と、その日のプログラムを生徒さんに明示してあげましょう。そうすることによって、生徒さんも「もう少し!」と頑張れたり、「あと少しなら」と集中力を保つことが可能になります。

 処置の途中経過の解説も必要です。「きれいになってきましたよ」「ここは、少し手ごわいですね」「こっちは、きれいですね」・・・とか。そうでないと、処置がうまくいっているのかどうか疑問です。

 →→授業では、「きれいに描けたね」「ここは、もう少し伸ばそうね」とか評価を適切に伝えながら授業を進めましょう。
 次の課題の用意をするときも無言ではなく、「パソコン、次のプログラムを出すね」「10数えて、待ってようね」・・・など、今何をしているのかを簡潔に知らせてあげましょう。生徒さん自身は手を動かしていなくても、気持ちを一にして次の用意を待つことができ
ます。それは、集中時間の短い生徒さんの離籍を防ぐ一助となります。課題と課題の間の
間の持たせ方は、充実した50分の授業を構成する上でとても大切な要素です。

 処置を受ける側になって、生徒さんの気持ちが分かったような気がするところが多々ありました。無言の数十分の間、こんなことを思い巡らせていました。でも、今日の歯医者の処置には、結果的には大満足です。思いのほか、歯がピカピカになりました!さっそく、ほかの人に紹介してあげました。

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399.困ることありません!

399.困ることありません!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 関東地方、今日も寒い一日でした。明日は、雪の予報ですね。

 テレビのある料理番組で、残った食材を利用したおかずを紹介していました。アナウンサーが「お鍋のあとの残った、白菜、水菜、白滝、お餅、鶏肉・・・、って困るんですよね」と発言したら、講師の料理家が「困るなんて、言ってはいけません。そこから、いろいろなアイディアが湧いてくるのです」という内容のことを言っていました。

 さすがですね、特殊教育でも同じことが言えます。「あれができないんです」「これができないんです」と相談されると、「困りましたね・・・」というより、「課題が明確だな」と思います。そして、料理ならレシピに当たる、指導プログラムを発想します。

「こんなものばっかり、好きなんです」とか「これしかやらないんです」という悩みを持ちかけられると、「そう、それが好きなんだ」と指導の糸口を得たような喜びを感じます。好きなことから始めることほど、効果があがるものはありません。生徒さんの好きなものをつかんだら、授業を成立させることは半分以上成功したものと思ってよいでしょう。

 たとえば「ビデオばかり見ていて、本当に困ってしまうのです」と言われる生徒さん、「そうですか、困りましたね」、と言ってしまえばそこまでですが、そんなお話を聞くといろいろと質問が浮かんできます。

「どんなビデオが好きなのですか」:好きなものや求めているもの傾向がわかります。年齢も体も大きな男の子が、”ディズニーが好き”というようなこともあります。そんな気持ちを知ってあげることも療育の上では役に立ちます。

「好きなビデオは自分で選ぶのですか」:タイトルの文字を見て選ぶのか、絵を見て選ぶのか、自分なりの区別の手がかりがあるのか、意志を持って自ら積極的に選ぶという能動的行動ができていることがわかります。それだけの意欲とエネルギーがあることも確認できます。

「ビデオの操作はひとりでするのですか」:機械の操作を記憶して適切に行う知的能力と指先の巧緻性が備わっていることがわかります。ここにも「見たい!」という意欲と見るためには「がんばる」だけのエネルギーがあることが確認できます。

「どのくらいの時間見ているのですか」:集中力と持続力を知ることができます。

「どんな時間に見ているのですか」「ビデオ以外の時間は、どんなことをしているのですか」:生活リズムを知ることができます。もし生活リズムが整っていないのであれば、好きなビデオ鑑賞の時間をうまく利用して、生活リズムの立てなおしを図ることもできます。

 このように、一見困ったことからは、いろいろなヒント、問題解決のための糸口を見出すことができます。そう、だから「困るなんて、言ってはいけません」、なのです。

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375.両親、家族の協力

375.両親、家族の協力
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 今年も、生徒さん方からたくさんの年賀状をいただきました。

・生徒さんがシールを貼った年賀状
 親御さんがお子さんの力を上手に生かして、できる形で年賀状に仕上げていらっしゃいます。

・生徒さんが一生懸命に書いた年賀状
 文字の数だけ鉛筆で丸い枠が書かれ、はがき一面に文字が埋められていました。昨年になって、驚くほど文字にまとまりの出てきた生徒さんからです。

・教室で制作した干支の絵をプリントになさった年賀状
 教室で行ったことがご家庭に浸透し、ご家族で生かし楽しんで下さることは理想的です。生徒さん一人ひとりの個性ある布版画の「トラ」がさらに1枚の年賀状にアレンジされて再登場です!

・親御さんからのコメントの添えられた年賀状
 お子さんに対して何を求め何を喜びとしているのか、一言のコメントは親御さんの思いと講師の思いとの確認の場となります。

・ご一家の写真の年賀状
 ご両親、ご兄弟姉妹の笑顔の写真。日常の生活や外出先での様子が伺え、ほほえましくあたたかい気持ちになります。

 お子さんの好きなもの、お子さんにとって良いと思われるあらゆるものを経験させてあげようとしていらっしゃる親御さんの熱意とお子さんへの深い思いがあふれています。夫妻の協力、家族の協力、思いをひとつにしたこの在りようには、感じ入るものがあります。

・親御さんとはまた別に自身で書かれた年賀状
 ご両親からの年賀状とは別にもう1枚、自身で年賀状を下さる生徒さんもいらっしゃいます。自立している自信と頼もしさを感じます。

 すばらしいさまざまな年賀状をありがとうございました。成長を心より喜び望んでいらっしゃる親御さんの期待にしっかりお応えできるように、この年の初めに気持ちを新たにしています。

 

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374.両親のささえ

374.両親のささえ
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 今日は成人の日です。成人式は、親からの自立、つまりこれまでに育まれたものをもって社会人として自立するという意識を形式化して明確にする儀式の日です。

 今、若者が職に就くのが難しい状況ですが、それでもそんな状況を切り拓き、希望を持てる人間に育っててもらっていたら、親御さんはじめ、これまで育まれた人的・物的環境に感謝しましょう。

 きのうテレビで、「もうひとつの箱根駅伝」という番組を途中30分ほど見ました(全部見られなかったのが残念でしたが)。若者の全力での挑戦には感動するものがありますが、その背後には監督やメンバーやこれまでの指導者、そして親御さんの大きな支えがあります。

 番組は、昨年競技で予期せぬ棄権を経験し今回再挑戦した選手とその両親をクローズアップしていました。競技生活では挫折する時もあります。親と顔を合わすことができないような心理状況の時にも、親は黙って背後から息子を支え本人が乗り越えるのを待ちました。その間の両親からの何通かの短い励ましの手紙の言葉が、息子を支え大きな力となって今回再び競技に臨むことができたのです。

 息子への深く強い愛情もさることながら、父(夫)と母(妻)双方の、思いをひとつにした在りように大きな力を感じました。両親がひとつとなっていること、その在りように子どもは大きな支えを得るのでしょう。

 その在りようは、成人した後も自身が自立した大人として歩んでいく上での理想となる美しい在りようです。そしてそれは、いつまでも大きな支えの力となっていくことでしょう。

 教室の一人ひとり生徒さんの親御さんにも共通のものを感じます。またあした、お伝えしたいと思います。

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365.ある生徒さんの挑戦

365.ある生徒さんの挑戦
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 教室のある親子さんが、漢字テストで100点を取ることに挑戦しようとがんばっておられます。学校で毎週行われる10問の書き取りテストです。きっかけは、
「1度でいいから100点をとらせてやりたい!」という親御さんの気持ちからです。

 やり方によっては、決して無理なことではありません。少し期間を設けて、無理なく進められるような学習計画を立てました。
そのためにも、この冬休みが大切です。もう始められて、数日経ったところです。

 どうでしょうか、親子仲よく順調に進んでいるでしょうか?進んでいるようでしたら、その調子で。まだ始められていない、もしくはうまくいかない日もあるようでしたら、気持ちよくできる日にタイミングを見て再スタートしましょう。

 冬休み中の課題は、
・2月末か3月初めに学習する単元の音読
・その範囲だけの漢字の読み
・基礎線描画
・漢字のトレース

 たくさんあるようですが、目的はひとつです。ですから、形を変えているだけで学習内容はほとんど同じです。担当講師が、親御さんと思いを同じくして無理のない課題を用意しました。

 楽しく進めてくださいね。少し書字が乱雑になったら、
「こんなふうに書くんだよ!」とお手本になる文字を書いて見せてあげてください。そして、もう一度お子さんに書かせて「そう、それでいいんだよ!」と肯定してあげてください。

 もし、肯定できないような書きぶりでしたら、手を添えていっしょに書いてあげましょう。やさしくされたら、お子さんはきっと満足して今度は少し上手に書くでしょう。すぐには完璧ではなくても、
「上手に書こう!」という気持ちにはなっているはずです。

 大晦日、三元日は学習をお休みにしてもいいんですよ。また、4日から始めましょう。そうすれば、3学期へと確実につながっていきます。教室のお休み明けの授業で、学習のペースをもう一度調整しましょう。

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353.体験の力

353.体験の力
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 今日、一週間ほどの職場体験をしてきた生徒さんとの授業がありました。さっそく職業体験についての作文学習を行いました。いつになく要点を絞ってまとめ、感想も交えて書き上げることができました。計算や漢字、記憶には強く、どちらかというと、作文は苦手としている生徒さんです。それだけに、今日の作文の書きぶりからすると、さすがに体験の力は大きいなと感じました。

 この生徒さんとは、これまでも次のようなテーマで作文学習を折に触れて行ってきました。

・遠足
・社会科見学
・物語~教科書~
・本の感想
・社会問題(いじめ、虐待、エコ・・・)

 一番苦手なのは、「物語~教科書~」の感想文です。ひとりで書いたものを見ると数行で終わってしまっています。「遠足」「社会化見学」もまあほどほどに・・・と言った程度の書きぶりです。本の感想では、ある程度自分自身を出して表現できます。自分で選んだ本についての感想ですから、自分との関連が持て、少し書きやすかったのでしょう。

 比較的よく書いているのが「社会問題」についてです。中でも、「虐待」についての作文は表現に拙さはさはあったものの、本人の意見(気持ち)としては、確固たる物をもってそれを表現することが出来ていました。体験的に、意識化がなされていたのでしょう。

 しかし、それらに比べ一段としっかり取り組めたのが、今日の作文です。たとえ数日間でも日々緊張を持って真剣に取り組み、新鮮な体験をしたのでしょう。大人としての仕事の経験をしたことは、きっと確かな手ごたえを感じ、体や気持ちにびんびんと入り込んでくるようなものの連続だったのでしょう。右から左に通過していってしまうような体験や知識の習得とは大きく異なるものだったのでしょう。

 まさに、お店でも銀行でも病院でも図書館でも、いつもは一利用者であるのが、突然店員であったり行員であったり、スタッフであったりと、立場はまったく逆転してしまったのですから、ある種のショックがあったかもしれません。

 今回のことでこちらもまた思いを新たにしました。体験の重要性です。知的操作は得意でも、意味のある言語を理解し駆使することを不得手とする生徒さんには、体や気持ちに訴えかけるような体験が必要だということです。そのような体験によって、なかなか意味を成しえない言語や気持ちに意味が伴われていきます。

 日常的に常にそのような環境を保つことは難しいでしょうが、時にはそんな機会を意図的に設け、数少ないそんな貴重な折を大切にすることはとても意味のあることですね。

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なかのひと

343.捨てちゃった?!

343.捨てちゃった?!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 きょうの授業「お金の管理」から:

 お金の管理の学習のために、レシートの貼り分けを毎日行っている社会人の生徒さんがいます。A4用紙の半分のスペースに1日分のレシートを少しずつずらして貼り重ねていくのです。その欄の下には、その日の合計金額を書き、1日の予算の中に納まっているか、オーバーしてしまったかを自己チェックします。

「予算-使った金額」が、プラスだったらOK。マイナスだったら使いすぎ。マイナスの場合は△をつけて、いくらオーバーしたか金額を明確にします。でも近頃では、前日はオーバーしても翌日は控えめだったので、まあOKという感覚も身についてきたようです。

 1週間に一度教室でレシートチェックをしているので今日もざっとながめてみると、20日に靴を買って、24日にまた同じ店で同じ金額の靴を買っています。職場の友だちにでもプレゼントしたのかとも思いつつ尋ねてみると、「大きさが合わなかったからまた買いました。前のは捨てました!」とのことです。えっ?!捨てちゃったの?!えっ?!

「本当は、23.0だけど、前のは23.5で、5違うから」・・・それはそうだけど。
「で、ゴミ箱に入れちゃったの?もう、ごみやさんに出しちゃったの?」
「それは、会社の○○さんが知っています」

 私もそれなりにも講師ですから、「なんでぇ?」「どうしてぇ?」「ダメでしょう~」「もったいないでしょ!」・・・とは言いません。一歩街に出ると、学習課題は、本当にいろいろありますね。でも困りながらも、どこか笑みがこぼれてしまうのです。もちろん、人事だからではありませんし、ばかにしているのでもありません。何ともほほえましいというか、自分で一生懸命に考えているんだな、と純粋なものも感じます。

 彼は休みの日には、会社で必要なものをよく買っているのです。今回の靴も仕事用の上履きです。会社用のティッシュペーパー、掃除用品、修正液など文房具、職場の方のためにめがね拭き、・・・。休日にも仕事や職場のことを考えているなんて、見上げたものです。

 さて、今回はこの出来事を通して何を学べるでしょうか?
・靴は、店頭で履いてみてから買うということ
・サイズの数字の違いのみに反応しているのか、それともたとえ0.5の違いでも本当に大き過ぎたのか
・靴は中敷や靴下の厚さで多少の大きさの調整はできるということ
・サイズを間違えたのなら、取り替えてもらうこともできるということ
・倹約するという意識をより明確にすること
・もったいないという意識を育てること
・困った時には、誰かに相談するということ

 こう考えてくると、今回の出来事の一番の問題は、「靴のサイズを間違えて買ってしまっても、本人は困っていない」というところにあるのかもしれません。「倹約」「もったいない」という意識を育てることが最優先かもしれませんね。困っていないから誰かに相談することもないし、「もったいない」という意識がないからすぐに捨ててしまうし、「倹約」の意識がないからダブルで買うことにも抵抗がない。

 靴に限らず、お金の管理の学習としては、「倹約」「もったいない」というこの2つの意識を育てることがとても大切なようです。今回のことで、私も認識を新たにしました。それにしてもあの靴、今頃どうなってしまっているのでしょう・・・?みんな帰って誰もいない夜の会社のゴミ箱に、さびしく捨てられている様子が目に浮かんできてしまいます。

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342.ほめことば

342.ほめことば
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 生徒さんの反応に対して「うーん!」と唸るのもほめことばです。これをほめ言葉として受け取れる生徒さんも、それはそれで成長している証です。これだけで、講師である相手の意図を感じ取り、その意味するところを受けとめることが
出来ているからです。生徒さん自身も自らの学習にそれなりの手ごたえを感じることが出来ているのでしょう。

 そこまでくれば、その生徒さんの中には学習の評価の基準というか、尺度というようなものが形成されていると言えます。他者からの評価を得る前に、自己評価できているのです。手ごたえを感じるとはそういうことです。学習の評価基準が自己の中に形成されている生徒さんは、自分が納得するまで学習を繰り返します。

 たとえば、漢字は覚えられるまでくり返し書きます。納得しないと、絵でも文字でも文でも書き直します。その場で覚えるべき課題では、覚えるまで睨み、覚えたところで自ら「いいよ!」と言って、見ないで復唱したり書き取ったりします。

 この間生徒さんから、こんな質問がありました。北海道美唄市で「プリンセチア」という花が栽培されている新聞記事を取り上げた時のことです。「プリンセチア」というのは、ピンク系の「ポインセチア」です。名前は「プリンセス」の由来するのだそうですが、・・・で話題となったのは、「美唄市の唄という字と歌とはどう違うんですか?」という疑問です。

 この問いに答えるのはそう簡単ではありません。こちらはイメージとしては分かっているものの、生徒さんの理解できる言葉でいかに伝えるか。そこで、辞書を利用しました。パソコンの電子システムソフトで調べることを心得ている生徒さんは、「私がやります!」と自ら喜んで調べます。歌と唄に加え、詩という漢字も出てきました。これら3つを読み比べ、「ふーん」といっしょに感心し納得しました。

 「家に帰ったら、お父さんとお母さんにも教えてあげてね」と促すと、「はーい」といい返事をします。誰かに話すことによって、理解と記憶はさらに確実なものとなります。

 こんなことを言った生徒さんもいました、「上手と言わないで下さい。うまいと言ってください」。「上手」というのは、どこか幼い感じがするのでしょう。こちらも心して「上手」と言わずに、「うまいですね」「よく考えましたね」「うーん!」・・・という具合に別の表現を心がけました。

 年が長ずるに従って体も成長し、学習を積み重ねることによって心も成長します。体と心の成長に見合ったほめことばが求められるのですね。

 ほめるべき時期に十分にまた適切にほめると、学習を楽しみ、学習に対して意欲的になります。そうすると、次第に学習力が育ってきます。自ら疑問を持ったり、驚いたり感心したり、感動したり。自らのうちに学習のきっかけを持ったときほど学習が身につくことはありません。

 他者からほめられるとか、評価されることを超えて、講師が「うん、うん」と、時には「うーん」と相槌を打つ程度で、自ら学習を進め取り組んでいくことが出来るのです。

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340.日の出の時刻

340.日の出の時刻
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 「月の形の変化」の学習から、思いがけず「日の出の時刻」の学習へと転じたケース。まずは日の出の時刻を日付ごとにグラフ化していくことにしました。初日は6時3分が日の出、それが日に日に1分ずつ遅くなってきています。11月24日今朝は、6時25分です。

 先週末の授業で、月の半ばまで追えましたので、少しテンポアップして実際の日付にテンポを合わせていければというところです。冬至に、間に合うように。

 冬至は、昼の時間が最も短くなる日で、その日を境にだんだんと昼の時間が長くなっていきます。そして、春分の日あたりに昼と夜の時間がほぼ同じになります。それからは、夏至に向かって昼の時間がますます長くなっていきます。知識としては、聞いたことがあっても、実際にグラフにして1分ずつ変化していくことを手でたどっていくと、講師ですら耳からの知識を体感として実感できるような気がします。天体の動きを身近に感じると同時に、宇宙とのつながりも感じます。

 この生徒さん、昨年行った「冬の気温」「夏の気温」の学習の成果でグラフを書くことは得意です。しかし、たとえば25分は20分と30分の大体真ん中とか、28分は30分寄りということの理解がこれからなので、グラフの罫線は1分ずつとっていきます。

 ですから、6時を0分から59分まで表すには、A4の用紙を3枚縦に貼りあわせなくてはなりません。しかも、日付が30日までですから1ヶ月を表すのに、横にも2枚貼りあわせ、合計6枚の用紙を使って、日の出の時刻の変化を書き表していきます。

 尤も、貼りあわせるのは最後の作業ですから、プロセスでは1枚の用紙ごとに記入していきます。ですから、さほど手間ではありません。最後に貼りあわせるのが、楽しみです。

 同じことを日の入りの時刻でも行う予定です。日の出と日の入りのグラフの形態がつかめたら、今度は1枚のA3の用紙に両方のグラフを書き表して、昼と夜を色分けさせてみたいと思います。「日がどんどん短くなっている」ことを自分のグラフで、確認出来ることを期待しています。

 6枚つづりのグラフが2つとA3の昼・夜グラフが1つ、これらを自分の部屋に貼っていつでも眺められるように。そんな環境を作ってあげられることも楽しみです。

 今の寒い時期、教室の後半の時間帯の生徒さんが変えるときはもうすっかり暗くなっています。でも冬至を過ぎ、新年を迎えると、その時刻はまだ明るいのです。真冬なのに、春に向かい夏に向かっていくことを毎年感じます。冬来たりなば春遠からじ、・・・ですね。

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339.学習のゆくへ

339.学習のゆくへ
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 今日の教室ブログ、バザーでのクッキー販売を前に自分から「お金の学習をお願いします」といってきた生徒さんの記述でした。講師はその月その週の学習プログラムを立てながらも、数年先の必要性や目標にも目を向けています。こうして、舵取りをしながら一人ひとりの学習プログラムに個別に当たっていきます。

 そんな中で時にはこの生徒さんのように、自らリクエストが出たりもします。小さな生徒さんですと、ちょうどいまの時季は道すがら拾ってきた落ち葉やどんぐりがその日の授業の教材になったりもします。大きく舵取りをしながらも、ちょっと一緒に楽しんだり、成果につないでいくことは、講師の力量のなせることです。

 先日も面白いことがありました。十月頃にご紹介した月の満ち欠けの「月齢カレンダー」、この11月1日より生徒さんと行っています。月の形の変化がまるで手に取るように、また月が恰も動いているかのように見えとてもおもしろかったので、
このブログでも取り上げたのですが、ひとりの生徒さんは月の形の変化にはほとんど無関心。もっぱら日の出と日の入りの時刻に注目しています。

 月の絵の下には、日の出・日の入りの時刻と月の出・月の入りの時刻が24時制で記されているのです。何故そこに興味があるのかは分かりませんが、それほどに興味があるのならと、日の出と日の入りを取り上げることとしました。

 これも飛び入りの学習課題です。でもこの予定外の興味をどう学習として展開していくかを考えることは、講師としてとても楽しいことです。この展開は、あしたにつづきます。

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