342.ほめことば

342.ほめことば
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 生徒さんの反応に対して「うーん!」と唸るのもほめことばです。これをほめ言葉として受け取れる生徒さんも、それはそれで成長している証です。これだけで、講師である相手の意図を感じ取り、その意味するところを受けとめることが
出来ているからです。生徒さん自身も自らの学習にそれなりの手ごたえを感じることが出来ているのでしょう。

 そこまでくれば、その生徒さんの中には学習の評価の基準というか、尺度というようなものが形成されていると言えます。他者からの評価を得る前に、自己評価できているのです。手ごたえを感じるとはそういうことです。学習の評価基準が自己の中に形成されている生徒さんは、自分が納得するまで学習を繰り返します。

 たとえば、漢字は覚えられるまでくり返し書きます。納得しないと、絵でも文字でも文でも書き直します。その場で覚えるべき課題では、覚えるまで睨み、覚えたところで自ら「いいよ!」と言って、見ないで復唱したり書き取ったりします。

 この間生徒さんから、こんな質問がありました。北海道美唄市で「プリンセチア」という花が栽培されている新聞記事を取り上げた時のことです。「プリンセチア」というのは、ピンク系の「ポインセチア」です。名前は「プリンセス」の由来するのだそうですが、・・・で話題となったのは、「美唄市の唄という字と歌とはどう違うんですか?」という疑問です。

 この問いに答えるのはそう簡単ではありません。こちらはイメージとしては分かっているものの、生徒さんの理解できる言葉でいかに伝えるか。そこで、辞書を利用しました。パソコンの電子システムソフトで調べることを心得ている生徒さんは、「私がやります!」と自ら喜んで調べます。歌と唄に加え、詩という漢字も出てきました。これら3つを読み比べ、「ふーん」といっしょに感心し納得しました。

 「家に帰ったら、お父さんとお母さんにも教えてあげてね」と促すと、「はーい」といい返事をします。誰かに話すことによって、理解と記憶はさらに確実なものとなります。

 こんなことを言った生徒さんもいました、「上手と言わないで下さい。うまいと言ってください」。「上手」というのは、どこか幼い感じがするのでしょう。こちらも心して「上手」と言わずに、「うまいですね」「よく考えましたね」「うーん!」・・・という具合に別の表現を心がけました。

 年が長ずるに従って体も成長し、学習を積み重ねることによって心も成長します。体と心の成長に見合ったほめことばが求められるのですね。

 ほめるべき時期に十分にまた適切にほめると、学習を楽しみ、学習に対して意欲的になります。そうすると、次第に学習力が育ってきます。自ら疑問を持ったり、驚いたり感心したり、感動したり。自らのうちに学習のきっかけを持ったときほど学習が身につくことはありません。

 他者からほめられるとか、評価されることを超えて、講師が「うん、うん」と、時には「うーん」と相槌を打つ程度で、自ら学習を進め取り組んでいくことが出来るのです。

 造形リトミック教育研究所
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なかのひと

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