305.国語、分かった?!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所
中高生は、数日後に控えている中間テストを前にただ今追い込み中です。その中の国語の単元に、短歌がありました。教科書の後ろの方の付録のような欄には、12首の短歌が載せられていましたが、その単元で取り上げられている短歌は3首。
北原白秋、正岡子規、石川啄木による短歌です。
正岡子規は、病床から見る藤の花房の力強い生命力を写実的に歌っています。私も中学生のころ正岡子規の歌を学びました。今の私ならば、この歌の味わいが分かります。
石川啄木は、全力を尽くして仕事に取りくんだ後の疲労感の何とも言えない心地よさを二句切れ、倒置法、体言止めの技法を用いて詠んでいます。「仕事」を「勉強」に置き換えれば、中学生のKくんにも実感として詩の味わいを捉えることができるでしょうか。
「ぼくなんか朝6時に起きて、勉強がんばってるんだよ。学校でも6時間勉強しっぱなしだし。それでも授業中、寝てないよ」と言っていましたから。・・・「ふ~ん、えらいのねぇ」。
そんな勉強の合間にも、大きな伸びをしてまだ鍛えきっていないような両腕に力瘤を作ってこちらに見せるような、まだあどけないところがあります。
「すごいわねぇ、力瘤!」
「ぼくにはスポーツの夢があるんだよ。マリンスポーツだよ」
「サーフィンとか?!」
「それもあるけど、カヤックだよ」
「そーう、夢が広がるわね」「電車だけじゃないんだ・・・」
「電車もだよ」
「そうよね」・・・こんな雑談も交えながら、また短歌に戻ります。
北原白秋 草わかば色鉛筆の赤き粉のちるがいとしく寝て削るなり
・草わかばの緑色と色鉛筆の粉の赤、その色の対照の美しさ・・・色の対照は分かる、でもその美しさまで分かるでしょうか。
・その美しさが若い心の感傷を誘う・・・さらに難解になる、難解だと感じるのは私だけでしょうか。
・若草の上に寝転んで、赤鉛筆を削る、・・・いったいどんな情景でしょう。
この教科書とは全く関係なく、ひとつの俳句に出会いました。
英一蝶(暁雲) あさがおに からかさ干して いくほどぞ
(陽射しを浴びて、しおれていく朝顔に 傘をさしてあげたいものだ)
・・・なんて素朴で、分かりやすい歌なのでしょう。夏の日中、朝顔への思いがしんしんと伝わってきます。しおれていく朝顔を歌いながら、かえって早朝のみずみずしい朝顔のさまがよみがえってきます。
全員が学ぶ教科書では、まずは、分かりやすい歌を紹介してもらえるとありがたいですね。難解な歌を分かったように論じ、分かって当然のように分からせる。まるで「はだかの王様」のような感を持ちます。
「分かった?!テストに出るからね」「色の対照の美しさ」「若い心の感傷よ」・・・「ちゃんと覚えといてね」なんて、本当に「はだかの王様」。
あさがおに からかさ干して いくほどぞ
すなおに歌って、すなおに分かる、そんなのがいいですね。
分からないものは、分からないと言える、そんなのがいいですね。
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