387.形のないものに言葉を
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所
形のないもののひとつに、においがあります。きょう台所で手を洗ったら、いつもと違うハンドソープが置いてあったので、思わずそのにおいに惹かれました。いつもは無臭だったので、いっそうそのにおいに惹かれたのでしょう。
においにスーッと引き込まれるとき、神経はそこに集中されます。いつも使わない脳を使っているようで、脳に良い刺激を与えることができたような満足感も持ちます。
でも、それがどんなにおいなのか、説明しようとしても言葉を持ちません。ただ「いいにおい」と表現できるだけです。生徒さんが何か言おうとして言葉にならなかったり、作文を書こうとしても何て言ったらいいのか言葉が出てこなかったり、・・・そのときの生徒さんは、こんな気持ちなのかもしれません。
・言葉にして自らも確信を得たいのに、それができない。
・言葉にして誰かに伝えたいのにそれができない。
・言葉にして、誰かと共感したいのにそれができない。
ワインのソムリエのような香りのプロは、香りについての固有の言葉を持っているそうです。香りを「ぬれた落ち葉」「秋の森」などに例えるのだそうです。コーヒーの味を評価するカッパーも、酸味を「アプリコット」「ブルーベリー」など多彩に表現するそうです
(読売新聞:2009年12月27日)。
プロは訓練によって、香りや味について通常の人よりもその分野の脳の機能が高く、感覚が多種に分化しているのでしょう、そしてそれに伴う言葉をその数だけ有しているのでしょう。
発達障害の生徒さんたちは、通常持ち合わせている感覚がうまく機能していないことがあります。ですから、当然それに伴う言葉を持ち合わせていない、ということがあります。それは、ちょうど私達がにおいや味に対する多種の感覚と言葉を持ち合わせていないのと重なるところがあります。
ならば折に触れ、ひとつひとつの感覚に意識を向けられるように促し、それに伴う言葉を伝えていきましょう。私達は幼児期に基本的な感覚と言語を獲得していますが、それがまだ十分でないのなら、年齢に関係なく、生活の中の対象への感覚をていねいに育て、言葉を伝えていきましょう。
教室でのテーマごとの学習は、いろいろな対象と向かい合うチャンスです。授業の後に、親御さんとお話をすると、親御さんも納得されてこう話してくださったそうです。今月のテーマ「カレー」の学習の後で、「そういえば、カレーの中に何が入っているなんて話したことないですね。ビーフなのか、ポークなのかか、チキンなのかなんてことは、もちろん。甘いのか、辛いのか、なんていうことも」。
ただ一言で「カレーライス」と言ってしまうだけではなく、カレーの中にもいろいろな味やにおいがありますね。ちょっと気持ちにゆとりを持って、食卓で楽しく味わいながら、そんな感覚や言葉を育てていきましょう。
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造形リトミック研究所
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