338.ソーシャルスキル:借りたら、返す!

338.ソーシャルスキル:借りたら、返す!
「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

「借りたものを返す」ことが苦手な生徒さん。どのようにアプローチしていきましょうか。問題が絞られているので対策は練りやすいと思います。所有の意識もしっかりしているし、借りたものは返さなくてはいけないことも分かっている。分かっているけれど、できない、というケースです。

 ならば、「借りる」という状況をたくさん作って、返す練習をしていきます。親御さんにも協力していただきます。

 まず毎週、授業の度に何かを貸してあげることにしました。たとえば、
・宿題を行うための、太ペンを貸してあげます。
・宿題を行うための、資料を貸してあげます。
・本を貸してあげます。
・雨が降りそうな日に、傘を貸してあげます。
・たくさんのプリントをはさむためにファイルを貸してあげます。
(※何のために何を貸したかを親御さんにもそっとお伝えしておきます)

 第1週目は何かを貸し、翌週返すことができるか様子をみます。返すことができたら、褒めます。そしてまた何かを貸してあげます。もし返すことが出来なかったら、今日返す約束になっていたことを確認します。そして、来週その結果を待ちます。

 第3週目です。返すことが出来たら褒め、返すことができなかったら今度は親御さんに言葉がけをお願いします。
「先生に借りたペンを明日返すんでしょ。鞄に入れましょう」と入れるところまで見届けてもらいます。

「わかってる、後で入れる」という返事でしたら、一度だけ「今、入れましょう」と促してもらい、それでも行わなかったら、ペンを持ってきてその場で入れさせるように手助けをお願いします。

 このとき、親御さんがイライラしないこと、叱らないこと、口うるさく言わないことがとても大切です。「今やれば簡単なんだ」、そして翌日、先生にちゃんと返すことが出来た、良かった、という達成感と満足感へとつながるようにしてあげましょう。

 この場面がとにかく一番大事です。ここで「うるさいなー!」という気持ちにさせてしまうと、親御さんの言うことをますます聞こうとしない態勢に入ってしまいます。講師も、約束のものを返せなくても決して叱りません。小言めいたことも言いません。ただ、約束だったことの確認だけをします。親御さんもここがガマンのしどころです。

 お互いに焦ったりイライラしないためにも、時間にゆとりをもって行わせましょう。ですから、用意は前日に。当日になると、親も子も焦ります。焦っていてはできることも出来なくなります。

 こんなやり取りを何回か様子を見ながら繰り返していきます。この11月の中旬から初め、クリスマスの頃には、少し目途が立つといいなと思っています。ほかにもいろいろと気になるところはあるようですが、ひとつずつ解決していきましょう。

 ひとつ解決するごとに、生活リズムも整い始め、身の回りも整頓されてくることでしょう。親子の関係も流れがよくなることでしょう。すると、忘れ物、提出物の管理、など他の問題も少しずつ良い方向にきっと向かっていきます。

造形リトミック教育研究所
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なかのひと

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