309.会話を楽しむ

309.会話を楽しむ

「知的障害児者、発達障害児者 個性と可能性を伸ばす!」: 造形リトミック教育研究所

 特殊教育において、知的段階は年齢によって区切ることは出来ませんが、講師と生徒さんの人と人としての関わり方、在りようは年齢とともに変化してきます。年齢的に長じてくるにしたがって、講師と生徒というよりも、同じ生活者として、時に日常的な会話を楽しむことが出来ます。

 毎週生徒さんと会うときに、感覚的に把握しておきたいのは、「身体的にも、心理的にも今週も元気に生活しているかな」ということです。挨拶の仕方、表情、視線、学習への取り組み方などから、自ずと把握します。さらに、日常の様子が伝わってくるのは、授業の合間の何気ない会話からです。

 今日は、成人期にある生徒さんと会話のお話です。
 お金の学習で、値段のついた食材のカードを教材にしました。「何百何十何円の品物を買うのには、何百円出せば良いか」という課題です。まず、カードを一つ一つに切ります。それを講師がやり始めると、「やろうか?」と言って、生徒さんが講師の代わりに進んで切り始めました。

「全部やってもらったら悪いから、先生も切るわね」とことばを挟むと、「いいよ、お互いさまだから」とのこと・・・職場でも、こんなことばが行き来しているのかな、と職場の様子や職場での人関係が垣間見られるような気がしました。

 毎週習慣のように「先生、お昼は?」とその日の昼食が何だったかを尋ねてきます。こちらも、同じように生徒さんに尋ねます。
「○○ちゃん、お昼は?」「キャベツとあら挽ウインナのスパゲッティ」・・・しゃれていますね。食を楽しんでいるのがわかります。

 ちょうど教材カードに「ほうれん草」が出てきたので、
「ほうれん草はなにに使う?」とこちらから尋ねると、
「ほうれん草とベーコンのソテエ!」・・・これもしゃれていますね。
 
「油揚げは?」「味噌汁。あっ、納豆入れて。私は、食べないけど。プリン体ですから」・・・油揚げに納豆を入れてあぶるのだそうです(後でお母さま談)。健康に配慮しているのですね。ちなみに、黒酢も飲んでいるとのこと。

「たこは?」「キムチと。お母さんが、お父さんのおつまみに。」
「お父さん、幸せね」「幸せは、ももちゃん(ねこ)。ももちゃんは、マグロがあると幸せ」

「大根は?」「大根おろし。秋刀魚とね。秋刀魚、ダンスの会の○○さんにもらったから」・・・食卓はもちろん、余暇の活動や人間関係まで見えてきます。こちらまで、おいしく、幸せな気持ちになってきます。

 生き生きとした生活あってこその「学習」です。また逆に、毎週の授業が生活を活性化する契機ともなり得るよう、毎回毎回、そんな授業を作り上げて生きたいと思って取り組んでいます。

 
造形リトミック教育研究所
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